本最高裁判決は,「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない 」と判断しました。
判決理由において,「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものにほかならず」との記載がありますが,そのとおりだと思います。
最判昭和23年12月23日(民集2巻14号493頁)が,「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は、効力を生じない。」と判断しており,
本件事案のような「相続税の節税の動機」が,「単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないとき」にあたるのかあたらないのかが争点でしたが,本判決は「あたらない」と判断しました。
相続税の節税目的の養子縁組は,多数あると思われますので,社会的見地から縁組有効と判断された可能性もあります。
なお,産経新聞の報道によりますと,
「1、2審判決によると、福島県の男性は24年5月、長男の息子を養子としたが、その後、長男との関係が悪化。男性は10月に離縁届を提出した。長男側は離縁が無効であることを確認する訴訟を起こし、確定。男性の死後、娘2人が養子が無効であることの確認を求めていた。」
とのことですので,養親が勝手に離縁届出を提出したことに対する,離縁無効の判決が確定していたとの前提事実があったようです。
産経新聞HP
http://www.sankei.com/affairs/news/170131/afr1701310019-n1.html
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事件名 養子縁組無効確認請求事件
裁判年月日 平成29年1月31日
法廷名 最高裁判所第三小法廷 判決
結果 破棄自判
判例集等巻・号・頁
判示事項
裁判要旨
専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない
最高裁HP
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