2016年6月24日金曜日

固定資産税の消滅時効

(1)固定資産税は,法定納期限の翌日から起算して,5年間行使しないことによって,時効によって消滅します。


(2)私法上の債権の場合は,消滅時効を主張するには時効の援用が必要とされていますが,


公法上の債権(租税債権及び公課債権の徴収権)の場合は,


債務者(租税・公課滞納者)による時効の援用は不要であり,


時効期間の経過という客観的な条件を満たせば,


当然に債権が時効によって消滅することになります。


これを公法上の債権の時効の絶対的効力(地方税法18条2項,国税通則法72条2項,地方自治法236条2項,会計法31条1項)といいます。


(3)したがって,法定納期限の翌日から起算して5年経過以後に


債務者が誓約書を記載するなどして債務を承認したとしても,


消滅時効にかかる部分に対しては無効ですので,


債務者は時効消滅を主張することができます。


当然ながら,消滅時効期間の経過前の債務の承認は,有効ですので,消滅時効は中断することになります。


(4)公法上の債権の時効の絶対的効力を知らない弁護士が2名はいるようです。


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地方税法(昭和二十五年七月三十一日法律第二百二十六号)


第五条  市町村税は、普通税及び目的税とする。
  市町村は、普通税として、次に掲げるものを課するものとする。ただし、徴収に要すべき経費が徴収すべき税額に比して多額であると認められるものその他特別の事情があるものについては、この限りでない。
  市町村民税
  固定資産税
  軽自動車税
  市町村たばこ税
  鉱産税
  特別土地保有税

第十八条  地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利(以下この款において「地方税の徴収権」という。)は、法定納期限(次の各号に掲げる地方団体の徴収金については、それぞれ当該各号に定める日)の翌日から起算して五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。
  第十七条の五第二項又は前条第一項第一号、第二号若しくは第四号若しくは同条第三項の規定の適用がある地方税若しくは加算金又は当該地方税に係る延滞金 第十七条の五第二項の更正若しくは決定があつた日又は前条第一項第一号の裁決等があつた日、同項第二号の決定、裁決若しくは判決があつた日若しくは同項第四号の更正若しくは決定があつた日若しくは同条第三項各号に定める日
  督促手数料又は滞納処分費 その地方税の徴収権を行使することができる日
  前項の場合には、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。
  地方税の徴収権の時効については、この款に別段の定があるものを除き、民法 の規定を準用する。

2016年6月21日火曜日

夫より先に妻が死亡した場合の老齢厚生年金

当事務所では,特別支給の老齢厚生年金・老齢基礎年金・老齢厚生年金の


①年金相談
②年金請求書(年金申請書)の作成
を承っています。



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TEL:011-532-5970

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*下記事案に該当しない例外もありますので注意してください。




<夫より先に妻が死亡した場合>


①夫に配偶者加給年金が支給されていた場合は,妻(配偶者)の死亡により,配偶者加給年金は消滅しますので,その分だけ夫の年金金額が減少します。


②妻の死亡時に夫が55歳以上の場合において,夫が60歳になったら,夫は遺族厚生年金を受給できるときがあります。


なお,夫が遺族基礎年金を受給できる場合は,夫が(55歳以上)60歳未満でも,遺族厚生年金を受給できるときがあります。


③妻の死亡時に夫が55歳以上の場合において,夫が60歳になったら,夫は遺族厚生年金を受給できるときがあります。


夫の前年の収入が年額850万円以上かつ前年の所得が年額655万5000円以上の場合は,生計維持関係が否定されますので,遺族厚生年金は受給できません。


しかし,定年退職などの事情により,おおむね5年以内に夫の収入が年額850万円未満または所得が年額655万5000円未満になる場合は,生計維持関係が肯定されます。


なお,夫の生計維持関係が否定されても,(子どもがおらず),次順位である妻の父母が妻と同居しており(または,別居しているが妻は妻の父母に生活費を援助しており),妻の父母が収入・所得の要件を満たしているのであれば,妻の父母が遺族厚生年金を受給することができます。


④妻の死亡時に夫が55歳以上の場合において,夫が60歳になったら,夫は遺族厚生年金を受給できるときがあります。


夫の特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が,生年月日に応じて60歳から64歳まで段階的に引き上げられるようになったため,夫は遺族厚生年金の受給を選択するという方法も考慮する必要があります。


従前であれば,夫は60歳なった時点において,夫の特別支給の老齢厚生年金を受給でき,かつ,老齢厚生年金の方が遺族厚生年金よりも通常は高額となるため,夫が遺族厚生年金を選択することはほとんどありませんでした。


しかし,特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げにより,60歳から夫の特別支給の老齢厚生年金が支給される年齢までの間は,遺族厚生年金を受給することとなります。


65歳前の退職による雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)を受給している場合,特別支給の老齢厚生年金は支給停止となりますが,遺族厚生年金は支給が停止されませんので,選択申出書を提出することにより,基本手当の受給期間中は,遺族厚生年金を選択する方が利益になるでしょう。  


⑤妻の死亡時に夫が55歳以上の場合において,夫が60歳になったら,夫は遺族厚生年金を受給できるときがあります。


夫は特別支給の老齢厚生年金が支給されるが,60歳以後も厚生年金の被保険者として在職している場合は,在職老齢年金制度により,年金の全部又は一部が支給停止になるときがあるため,遺族厚生年金を受給した方が利益になることがあります。



障害者特例の請求書



当事務所では,障害者特例の厚生年金の請求の
①相談
②請求書の作成
を承っています。

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特別支給の老齢厚生年金受給権者障害者特例請求書
電子政府の総合窓口(e-Gov)
http://shinsei.e-gov.go.jp/search/servlet/Procedure?CLASSNAME=GTAMSTDETAIL&id=4950000005745


なぜ,日本年金機構のHPには障害者特例が記載されていないのか?


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<障害者特例の受給要件>


下記の要件をすべて満たす必要があります。

1:①昭和36年4月1日以前に生まれた男性で,
  ②昭和41年4月1日以前に生まれた女性で,
下記の年齢に達したこと。


            昭28年4月1日までに生まれた男性→60歳
昭28年4月2日~昭30年4月1日までに生まれた男性→61歳
昭30年4月2日~昭32年4月1日までに生まれた男性→62歳
昭32年4月2日~昭34年4月1日までに生まれた男性→63歳
昭34年4月2日~昭36年4月1日までに生まれた男性→64歳


            昭33年4月1日までに生まれた女性→60歳
昭33年4月2日~昭35年4月1日までに生まれた女性→61歳
昭35年4月2日~昭37年4月1日までに生まれた女性→62歳
昭37年4月2日~昭39年4月1日までに生まれた女性→63歳
昭39年4月2日~昭41年4月1日までに生まれた女性→64歳


2:過去に12カ月以上厚生年金に加入していること
3:厚生年金の被保険者ではないこと
4:特別支給の老齢厚生年金の受給権者であること
5:障害等級の3級以上に該当すること
6:障害者特例の請求をすること


現に障害年金を受給していなくても,障害者特例の請求時において,障害の程度が障害等級3級以上に該当するのであれば,障害者特例により特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。配偶者加給年金も受給することができます。


原則として年金の支給は,障害者特例の請求をした翌月分からとなります(遡及しない)ので,注意が必要です。


すでに障害年金を受けている方が請求した場合は,特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得したときに遡及して,障害者特例による年金の支給を受けることができます(ただし,平成26年4月より前には遡及しません。)。


(例1)
初診日において国民年金に加入していたところ,障害等級が3級と認定されたため,障害基礎年金は支給されなかった。その後も症状は回復せず,3級の障害が残っている場合。


(例2)
保険料の納付要件を満たしていなかったため,障害基礎年金は支給されなかった。その後も症状は回復せず,2級の障害が残っている場合。


(例3)
初診日が不明であったため,障害基礎年金は支給されなかった。その後も症状は回復せず,2級の障害が残っている場合。







2016年6月17日金曜日

国民年金保険料の免除に関する裁決



平成24年社会保険審査会裁決


国民年金保険料の免除の関係法令上,世帯主の意義を定めた規定は存在しないことから,


原処分をした日本年金機構(保険者)が,住民基本台帳上の世帯主をもってこれを認定することは


一応相当なものと考えられるとしながらも,


住民基本台帳法上の世帯主や世帯員が,必ずしも生活実態を忠実に反映していない場合もあることは公知の事実ともいえるのであり,


また,保険料免除の取扱いにおいては,世帯主とは,「主として世帯の生計を維持している者であって,国民年金の保険料の連帯納付義務を負う者として社会通念上妥当と認められる者」をいうが,具体的な認定に当たっては,国民健康保険における世帯主の認定に準ずるものであるが,特に名目上の世帯主にとらわれることのないよう留意すること(昭和35年6月13日年発第200号厚生省年金局長通知)とされているのである。


本件記録によると,住民票上の世帯主との記載だけから,再審査請求人の父を世帯主とみることは相当ではなく,


再審査請求人の父は,指定居宅介護支援事業所で生活しており,再審査請求人とは別居しているのであるから,


実質的に別世帯と認められる。


原処分をした日本年金機構は,再審査請求人は前年度に離職しているので,再審査請求人の父の所得のみが基準となると判断した結果,再審査請求人の父の所得が基準を上回っていたため,
再審査請求人の免除申請を却下したが,


社会保険審査会は,上記のとおり,再審査請求人と再審査請求人の父とは,別世帯と認められるとして,所得要件を満たすものと判断し,


原処分を取り消して,再審査請求人の国民年金保険料の免除申請を認めました。




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遺族厚生年金の裁決(生活保護受給者)

夫が死亡したため,妻が遺族厚生年金を請求しましたが,裁決で棄却されました。


妻は,夫の暴力などを理由として別居していました。


夫も妻も生活保護を受給していました。


夫は生活保護を受給していたため,( ア) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われておらず,


妻は,夫の暴力に生命の危険を感じて別居していたため,( イ) 定期的に音信、訪問が行われておらず,


夫の死亡当時,生計維持関係がなかったとして,請求は認められませんでした。


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平成23年(厚)第594号 平成24年6月29日裁決


主文
本件再審査請求を棄却する。



理由
第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人( 以下「請求人」という。)
の再審査請求の趣旨は、厚生年金保険法に
よる遺族厚生年金の支給を求めるというこ
とである。



厚生労働省HP
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未支給年金に関する判例

未支給年金の支給

最判平7年11月7日民集49巻9号2829頁の説示するところによると,未支給年金は相続とは別の国年法または厚年法の未支給年金の規定に基づいて,死亡した受給権者が有していた請求権を承継的に取得することになります。

国年法19条および厚年法37条は,年金給付の受給権者が裁定を受けた後に死亡した場合のみならず,裁定を受けずに死亡した場合についても,死亡した受給権者の一定範囲の遺族が自己の名で未支給の年金について請求することを認めています。


裁定を受けずに死亡した場合は,

長年月が経過すると,年金請求の添付書類の収集が困難になり事実上請求不能になることがありますし,

裁定を受けずに死亡した場合も,裁定を受けた後に死亡した場合も,

支分権の消滅時効は5年ですので,死亡から5年を経過した場合は,

時効の中断がある場合,年金時効特例法の対象となる場合,保険者に信義則違反がある場合を除いて,

消滅時効により,未支給年金の請求は認められないことになるでしょう。 



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国民年金保険料の免除の判断要素である世帯について

保険料免除の判断要素としての「世帯」について,国年法では要件の規定がありません。

実務としては,住民基本台帳(住民票)上の記載に基づいて処理することになっているようです。

住民基本台帳上の世帯主や世帯員の記載は,生活実態と齟齬をしていることがあり,異なる生活実態であることが証明されれば,それに基づいた処理をすべきと考えられます。

なお,世帯主に関する昭和35年6月13日年発第200号厚生省年金局長通知は,

「主として世帯の生計を維持している者であって,国民年金の保険料の連帯納付義務を負う者として社会通念上妥当と認められる者」をとしています。

免除申請者が,世帯主の加入する健康保険の被扶養者になっている場合はどうでしょうか?その場合は,同一世帯であるとの評価を受ける可能性が高いと思います。

国民年金や介護保険と異なり,国民健康保険における保険料(税)納付義務者は世帯主です。(世帯主自身が国民健康保険の被保険者でない場合でも、世帯員に国民健康保険の被保険者がいるときは、世帯主が保険料(税)の納付義務を負うことになります。)

つまり、個々の被保険者は,保険料(税)納付義務者ではないことになります。また、加入や脱退等の届出義務者も世帯主が行います。したがって、保険料(税)の通知や被保険者証などは世帯主宛てに送付されることになっています。
 
 
国民年金保険料の免除に関する裁決例

裁決例では,税務申告上の扶養親族との関係で言及されたものがあるようですが,健康保険や国民健康保険との関係について特別の言及はされていないようです。 



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未支給年金に関する裁決

未支給年金の順位に関する裁決

平成17年12月22日裁決 裁決集921頁 容認

旧厚年法の老齢年金と旧国年法に通算老齢年金の受給権者のAが平成15年死亡した。Aの子である請求人が未支給年金を請求したところ,保険者はAの妻(利害関係人)が先順位者であるとして,不支給処分にした。

昭和54年頃からBの宗教活動などにより夫婦仲は冷却していた。平成14年からBと別居して請求人と同居するようになった。AとBはお墓を巡って争いがあった。別居後もAがBに対する公共料金を支払っていた。BがAの見舞いに来たことがあった。本件状況の下では,Aの死亡当時のBとAの生計同一を否定したうえで,請求人とAの生計同一を肯定した。


未支給年金と失踪宣告に関する裁決

平成20年7月31日裁決 平成19年(厚)564号

(旧厚年法上の)遺族年金については,死亡配偶者が失踪宣告を受けていた場合,生計同一要件などは,同人が行方不明となった当時で判断するとの明文の規定があるが(旧厚年法59条1項柱書本文),未支給の保険給付については,このような明文の規定がない。

遺族年金の場合は,遺族自らの権利として受給権を得るのに対し,老齢年金等の未支給保険給付は,当該老齢年金の受給権者が得た一身専属生を有する受給権でまだその給付が行われていないものについて,遺族がその名で請求することを特に認めているという権利の構造上の相違によるものと考えられ,遺族年金に関する前記規定の類推適用は,基本的に考えられない。

老齢年金等の受給権者に失踪宣告がされた場合,死亡とみなされる日(原則として行方不明から7年経過した日)当時現に生計同一関係があるはずもないので,常に未支給の老齢年金等を受けることができなくなるとの批判が生じることが考えられる。

しかし,老齢年金をもっぱら実際は当該遺族の生計費を賄うためのものとして受給することが老齢年金制度の趣旨にもとることは明らかであり,上記批判は認められない。
 


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所在不明の年金受給者に係る届出制度の問題点

(1)平成26年4月1日から,所在不明の年金受給者に係る届出制度が創設されます。


 改正後は、年金受給者の所在が1カ月以上確認できない場合、

受給者の世帯員は所在不明である旨の届出を行わなければなりません。

届出後、年金事務所において事実確認を行い、所在が確認できない場合は年金の支給が一時差し止められます。

この制度により,年金の不正受給による詐欺罪成立のハードルは低くなるのでしょう,たぶん。




(2)仮に,夫がサラリーマンで,妻が専業主婦だった場合。

夫の老齢年金を毎月の生活費としていたところ,認知症の夫が,行方不明となりました。

年金事務所が夫の老齢年金の支給を差し止めた結果,妻の毎月の生活費が不足することになってしまいました。

生存か死体かを問わず,すぐに夫が発見された場合は良いのですが,何ヵ月(何ヵ年)も発見されなかったら,どうでしょう。

その間,年金は差止められます。

そんなに長く行方不明なら,死亡の蓋然性が高いといえそうですが,

夫の死体が出てこない限り,夫の死亡ということにはならないので,妻は遺族年金を受給できません。

もちろん,銀行預金を相続を原因として払い戻すことはできませんし,夫名義の不動産を売却することもできません。

(方法としては,夫の不在者財産管理人を選任してもらって,妻が婚姻費用の分担の請求をしたり,離婚訴訟をして財産分与の請求をしたりすることになるのでしょうか?)



(3)失踪宣告により死亡とみなされるには,行方不明になってから7年間待つ必要があります。

平成22年2月26日裁決(平成21年(厚)第5号によると,

一時差し止めの場合は,年金の受給権(支分権)の時効は進行し,5年以上経過分は時効により消滅していることになるようです。(条文を読む限り,支給停止と一時差止めは法的効果が違うようです。)

よって,行方不明になって7年の経過を待って失踪宣告を受けた場合,支給を受けることができるのは,最大でも5年分の年金ということになりそうです。
 

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離婚に関する裁決例


ひとたび離婚すれば,その後も継続して同居していても,引き続く事実婚状態とは扱われず,


年金記録や年金給付としては,離婚時を境にいったん切れることになります。


なぜなら,各種法律には,離婚した場合は失権するなどの規定があるからです。


偽装離婚は,社会的にはされる行為ではありません。ただし,偽装離婚を正当化する客観的な理由があれば,救済されるケースがあるようです。

加給年金については,その性質上もあり,すぐに再婚した場合は救済される可能性が高いようです。


熟年離婚では,離婚後であっても,元配偶者が遺族年金を受給できるケースがあるようです。その場合は,当然ですが,内縁(事実婚)+生計維持関係の要件を満たす必要があります。死亡配偶者にほかにも内縁の配偶者がいた場合は,競合関係に立つことになります。


遺族年金に関して,配偶者の遺言書の記載内容により,遺族年金の受給要件である生計維持関係などの認定判断に影響を与える場合があるようです。


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(1)年金分割に関する裁決例


平成22年5月31日裁決(平成21年(厚)281号) 棄却

請求人と利害関係人Aが,昭和54年に婚姻,平成17年に協議離婚,その3日後に再度婚姻,平成21年に再度離婚した。
請求人は,当初の婚姻からの期間を対象期間とする標準報酬の改定を求めた。

自らの意思で離婚に合意しており,平成17年の離婚がなかったものとして扱うことはできない。
当初の離婚が成立した日は平成19年4月1日以後ではないから,当初の婚姻からの期間を対象期間とすることはできない。




平成23年3月31日裁決(平成22年(厚)343号) 棄却

請求人と利害関係人は昭和58年に婚姻,平成19年6月に離婚,引き続き事実上の夫婦関係を継続し,平成19年7月に再度婚姻,平成21年11月に再度離婚した。
請求人は,改定の対象期間を当初の婚姻からにすべきであると不服を申し立てている。

自らの意思で離婚に合意しており,平成19年6月の離婚をなかったものとすることはできない。平成19年6月の離婚から2年を経過しており,最初の婚姻から平成19年6月までの婚姻期間を改定の対象とすることはできない。


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(2)遺族年金に関する裁決例



平成18年8月31日裁決 裁決集(被用者保険関係)1031頁 棄却

請求人は,平成13年亡夫Aと協議離婚した。この離婚は,Aに生活保護を受けさせるためのものであり,別居したが,Aと婚姻関係と同様の事情にあったと主張して,遺族厚生年金の裁定を請求している。

離婚及び別居によりAに対する夫婦としての生活保持義務を免れ,Aに生活保護を受給させた者に対し,Aが死亡するや,一転してAとの夫婦関係の継続を主張することを許すことは,保険給付に関する法秩序に著しい混乱を招くものであるから,このような主張を認めることはできない。


平成15年5月30日裁決 裁決集502頁 容認

請求人と夫Aは,昭和28年に婚姻した。Aは代表取締役であったが会社が倒産し,金融業者からの過酷な追及が請求人に及ぶのをおそれて,平成13年離婚した。離婚から1週間後にAは自殺した。

48年間の円満な婚姻期間,金融業者からの追及という緊急避難としての離婚と別居したこと,離婚の後も毎日電話で連絡を取っていたことなど,実体上の夫婦関係は離婚の前後を通じて何ら変化していない。Aの死亡当時,請求人は,Aの事実上の配偶者であって,生計を維持した者と認められる。


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(3)加給年金に関する裁決例



平成12年8月31日裁決 裁決集170頁 容認


請求人は,妻の実家の祭祀を承継するために協議離婚の届出をしたうえ,翌日改めて妻の姓を称する婚姻の届出をした。


本件離婚の前後を通じて請求人夫婦30年に及ぶ正常な婚姻関係に実体にいささかの変化もないことから,実質的に婚姻関係は継続しているものとして取り扱うのが相当である。



平成14年8月30日裁決 裁決集209頁 容認


請求人は,勤務先の会社が倒産し,会社の連帯保証人であったため,高利の金融業者を含む債権者から厳しい追及を受けることになった。妻の身に危険が及ぶのを恐れ,平成10年に協議離婚の届出をし,妻の住民票の住所も移転したが,実際は,夫婦として同居生活を続けており,請求人の自己破産を経て,平成11年に再度婚姻の届出をした。


軽率ではあったとしても反社会性は少ないとして,本件は配偶者が離婚したときには該当しないものとして取り扱うのが相当である。



平成15年9月30日裁決 裁決集251頁 棄却


請求人とその妻であったAは,平成13年に離婚届をし,これと前後して住民票上の住所を異にするようになっている。


離婚の届出にもかかわらず事実上の婚姻関係は継続していると主張する者は,これを立証する責任を負うところ,請求人はこれを果たしていないから,請求人が離婚したものと認めて加給年金額の加算を打ち切った原処分は妥当である。



平成20年3月31日裁決 平成19年(厚)414号 容認


請求人と妻Aは,平成19年調停離婚した。請求人夫婦の子Bが中学生の頃から不登校となり,AとBは請求人と別居したが,Bが騒音を発するなどして近隣からの苦情が絶えず,そのためAは精神状態に異常を来すようになった。Aが請求人に離婚を迫ったので,請求人は離婚調停に応じた。

離婚から1ヵ月後,Aは平静を取り戻したので再度婚姻の届出をした。

本件離婚は,一種の緊急避難として取り扱うのが相当であり,これを理由に加給年金の支給をしないこととした原処分は相当ではない。


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年金の事務処理誤りに関する裁判例の傾向

(1)請求棄却のおおまかな傾向

社会保険事務所(年金事務所)の義務違反があったとの原告の主張は,「証拠がない」として,一蹴されているようです。


<請求棄却の理由>


①社会保険事務所(年金事務所)の対応に誤りはない

②社会保険事務所(年金事務所)に説明不足はない

③原告主張の説明誤りという事実は認められない

④原告に損害はない

⑤被告適格がない(社会保険庁や日本年金機構ではなくて,原告に対して誤った説明をした社会保険事務所(年金事務所)そのものや担当者個人を被告として訴えたようです。)


*国家賠償請求事件では,3年の時効期間の経過により,時効消滅しているので請求棄却というものもあります。




(2)請求認容の理由

①直接の証拠がある

②間接の証拠から周辺事情を総合判断などしているようです。

(社会保険事務所(年金事務所)で手続をしたが,その当時,得をするAを選択すべきところ,損なBを選択している場合など)


(3)行政処分と国家賠償請求

行政処分には該当しない,いわゆる行政サービスといわれるものに対しては,取消訴訟をしても却下されるので,国家賠償請求として訴訟提起がされているようです。
 
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