本件事案では,最高裁は下記のとおり検索結果の削除を否定しました。
検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する。
また,検索事業者による検索結果の提供は,公衆が,インターネット上に情報を発信したり,インター
ネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり,現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割
を果たしている。
そして,検索事業者による特定の検索結果の提供行為が違法とされ,その削除を余儀なくされるということは,上記方針に沿った一貫性を有する表
現行為の制約であることはもとより,検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約でもあるといえる。
検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに
属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,
当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,
当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,
その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除するこ
とを求めることができるものと解するのが相当である。
抗告人は,児童買春をしたとの被疑事実に基づき,平成26年法律第79
号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関
する法律違反の容疑で平成23年11月に逮捕され,同年12月に同法違反の罪に
より罰金刑に処せられた。
抗告人が上記容疑で逮捕された事実(以下「本件事実」
という。)は逮捕当日に報道され,その内容の全部又は一部がインターネット上の
ウェブサイトの電子掲示板に多数回書き込まれた。
児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は,他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。
また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。
以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越するこ
とが明らかであるとはいえない。
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無罪推定の原則により,「逮捕の報道」がされたからといって,被逮捕者が犯罪をしたことになるわけではない,との背景事情も影響があるような気がします。
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事件名
投稿記事削除仮処分決定認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
裁判要旨
検索事業者に対し,自己のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果から削除することを求めることができる場合
最高裁HP
全文
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