相続登記の申請において,除籍又は改製原戸籍(以下「除籍等」という。)の一部が滅失等していることにより,その謄本を提供することができないときについて,
平成28年3月11日以降の相続登記の登記申請については,
戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え,
除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く)の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書のみが提供されていれば,相続登記をして差し支えないものとされました。
したがって,従前の登記先例(昭和44年3月3日付け民事甲第373号民事局長回答)は,変更されました。
従前の登記先例の「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付き)の提供を要するとしていた部分は削除され,相続人全員の証明書は提供不要となりました。
この法務省民事局長通達は,下記の奈良地方裁判所判決が影響したような気もします。
奈良地方裁判所の事案は,相続人全員の証明書を裁判外で任意に取得できない場合において,裁判上の手続きによって代替できるための要件はなにかといった問題でした。
近年,全国的に問題となっている空き家・空き地問題を処理するに当たり,
法務局が,「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付き)がなければ,相続登記を受理しないため,
売買等をすることができず,行き詰りの土地・建物も多数あったと思われます。
私見は,本件登記先例の変更は,奈良地方裁判所の判決の影響よりも,空き家・空き地問題を解消するための国政上の理由だと思っています。
相続人不明の空き家・空き地ではなく,現に相続人が管理している建物・土地についても,売買等をすることができないのに,固定資産税・都市計画税を課税され続けるというのも理不尽な話しでした。
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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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事件番号 平成26(行ウ)18
事件名 不動産登記申請却下処分取消請求事件
裁判年月日 平成27年12月15日
原告は,別件訴訟の調書判決(判決確定)の正本を提供して相続登記を申請したところ,
被告(処分行政庁=法務局)は,被相続人の19歳からの戸籍謄本しか添付されていなかったため,他に相続人はいない旨の相続人全員の証明書が必要とされるところ,添付がされていないとして,登記申請を却下しました。
奈良地方裁判所は,擬制自白により認定された本件調書判決は,その理由中において相続人が被告らのみである旨の認定がされているものということができるから,相続人全員の証明書に代えて,本件調書判決の正本の写しを登記原因証明情報として取り扱って差し支えないとして,
「登記申請を却下する旨の決定を取り消す。」との判決をしました。