(1)共有=共同所有にいたる原因は様々ですが,その原因のひとつとして,
被相続人が単独所有していた不動産について,共同相続を原因として共同相続人で共有することになる場合があります。
共同相続による共有の場合であっても,判例(最判昭30年5月31日民集9巻6号793頁)は,民法249条以下の物権共有とその性質を異にするものではないと判断していますが,
遺産分割協議(遺産分割調停・審判)の成立前には,共有物分割請求ができないなどの異なる部分もあります。
(2)共有物の利用方法については,共有持分数に応じて,
①保存行為(各共有者が単独でおこなえる)
②管理行為(共有持分の過半数を有する者でおこなえる)
③変更・処分行為(共有者全員の同意でおこなえる)
の3種類があります。
(3)共有不動産の賃貸借契約の「解除(解約)」については,
判例(最判昭29年3月12日民集8巻3号696頁,最判昭39年2月25日民集18巻2号329頁)は,管理行為にあたると判断しています。
したがって,賃貸借契約の解除は,共有持分の過半数を有する者によって行うことができます。
(4)共有不動産の賃貸借契約の「締結」については,判例はないようですが,裁判例によると,
①短期賃貸借(民法602条)の場合は,管理行為に該当する。
②602条の期間を超える場合は,処分行為に該当する。
③短期賃貸借の場合であっても,借地借家法が適用される場合は,処分行為に該当する。
と解されているようです(論点体系 判例民法<第2版>2物権 第一法規 参照)。
(5)なお,使用貸借契約の締結は,管理行為に該当する考え方と処分行為に該当する考え方(無償で貸借すると,各共有者は賃料収入が得られず損をするから)に分かれているようです。
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民法
(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)