2016年6月3日金曜日

自筆証書遺言の押印に関する判例




最高裁判所は,自筆証書遺言の遺言者が書いた花押を,民法968条1項の押印とは認めませんでした。

その結果,当該自筆証書遺言は,無効ということになりました。

ただし,予備的請求である死因贈与契約の成立について,審理判断するために,福岡高等裁判所に差し戻しました。

「押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあい まって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,

重要な文書については作成者 が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が 国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるとこ ろ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民 集43巻2号45頁参照)」

との判決理由の部分は,契約法の分野にも妥当する慣行ないし法意識と解されます。



なお,印章に代えて,拇印その他の指頭に墨・朱肉等を付けてする押印は,民法968条1項の押印と認められます(最一小判平成元年2月16日民集43巻2号45頁)。

現在,民法の相続法分野の改正では,自筆証書遺言の要件緩和が議論されていますが,当該最高裁判決は,影響をあたえるのでしょうか?


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事件番号 平成27(受)118     

事件名  遺言書真正確認等,求償金等請求事件 
     

裁判年月日  平成28年6月3日  最高裁判所第二小法廷判決     


結果  破棄差戻     

原審裁判所名
 福岡高等裁判所  那覇支部

原審事件番号
 平成26(ネ)62

原審裁判年月日
 平成26年10月23日

判示事項

裁判要旨
 いわゆる花押を書くことは,民法968条1項の押印の要件を満たさない
     

参照法条

全文(最高裁判所HP)
全文

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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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