2014年9月24日水曜日

相続登記が却下された事例2(遺産分割決定書)



被相続人Aが死亡し,その妻Bとその子Cが相続人となったが,



遺産分割協議未了の間に,Bが死亡し,CがBの唯一の相続人であった事例で,



CがAの遺産全部をAから直接相続した内容の遺産処分決定書(遺産分割決定書)を添付して



A名義からC名義への相続登記を申請したところ,

法務局は,相続人が1名の場合は,遺産分割協議をすることは不可能であり,登記原因証明情報の提供がないものとして却下し,

裁判所も却下処分を適法とした事例。


私見としては,遺産処分決定書の法的構成の工夫次第ではないかと思いましたが,判決文を読む限り,実体法上の構成はなかなか難しいようです。


登記研究758号及び同759号には,遺産処分決定書(遺産分割決定書)に対する言及がなかったので,遺産処分決定書を添付すれば大丈夫だろうと思っていましたが,そんなに単純な問題ではなかったようです。






最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=84478








事件番号
 平成25(行ウ)372
事件名
 処分取消等請求事件
裁判年月日
 平成26年3月13日
裁判所名
 東京地方裁判所
分野
 行政
判示事項
 被相続人甲の遺産について遺産分割未了のまま他の相続人が死亡したから当該遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してされた当該遺産に属する不動産に係る相続を原因とする所有権移転登記申請に対し,登記官が登記原因証明情報の提供がないとしてした却下決定が,適法とされた事例
裁判要旨
 被相続人甲の相続人が乙及び丙の2人であり,被相続人甲の死亡に伴う第1次相続について遺産分割未了のまま乙が死亡し,乙の死亡に伴う第2次相続における相続人が丙のみである場合において,丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してした当該遺産に属する不動産に係る第1次相続を原因とする所有権移転登記申請については,被相続人甲の遺産は,第1次相続の開始時において,丙及び乙に遺産共有の状態で帰属し,その後,第2次相続の開始時において,その全てが丙に帰属したというべきであり,上記遺産分割決定書によって丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続したことを形式的に審査し得るものではないから,登記官が登記原因証明情報の提供がないとして不動産登記法25条9号に基づき上記申請を却下した決定は,適法である。