2015年8月30日日曜日

遺産分割権(請求権)と相続回復請求権




(1)相続人の遺産分割権(遺産分割の請求権)が消滅時効にかかることはありません。


物権的請求権は消滅時効にかからないからです(判例,通説)。


(2)相続人の遺産分割権(遺産分割の請求権)に対して,原則として,他の相続人が相続回復請求権の消滅時効を援用することはできません。


通常,相続人は他の共同相続人の存在を知っているでしょうし,知らなくても,被相続人の戸籍謄本を調査すれば他の相続人の存在を知ることができるので,最大判昭和53年12月20日民集32巻9号1674頁の善意かつ合理的事由の要件を満たさないからです。


(3)相続人の遺産分割権(遺産分割の請求権)に対して,他の共同相続人が所有権の時効取得を援用できるかどうかは論争があります。


通説は,時効取得の援用を認めるようです。


判例は,大判昭和7年2月9日民集11巻192頁が,「家督相続人が相続回復請求権を行使できる間は,表見相続人は相続財産を時効取得しない。」として否定していますが,


大判昭和13年4月12日民集17巻675頁が,「表見相続人の特定承継人は前主の占有期間に自己の占有期間を合算して取得時効を援用し得る。」と判断したことから,上記昭和7年判決は実質的に変更されたとの指摘もあるようです。




*他の相続人が,時効取得をするには,所有の意思に基づく占有を開始することが必要です(民法162条)。


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2015年8月17日月曜日

遺産分割協議後の相続分の譲渡



質疑応答(登記研究570号173頁)


「被相続人甲名義の土地について,A・B・Cの共有とする遺産分割の調停調書及びA・BがCに相続分を譲渡した旨の証明書を添付して,Cが単独でするC名義の相続登記の申請は認められない。」


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登記研究平成27年7月号(809号)の実務の視点(131頁)が上記の質疑応答について,


「・・・先に共同相続人間で遺産分割の協議(又は調停)がされ,相続財産が共同相続人全員の共有とされた後に相続分の譲渡がされた場合には,中間省略の登記は認められず,まず,相続による共同相続人全員の共有名義とする所有権移転の登記を経由した上で,相続分の譲渡による持分全部の移転登記を申請しなければならない。」,


と解説しています。


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しかしながら,遺産分割協議後の共有の性質は,いわゆる物権共有となりますので,もはや相続分の譲渡はできません。遺産分割協議後の共有状態の解消は共有物分割協議となりますし,権利の譲渡の方法は共有持分の譲渡(または共有持分の放棄)となります。


したがって,この解説は誤りです。


正しくは,「(相続分の譲渡ではなく)共有物分割協議をして,まず,相続による共同相続人全員の共有名義とする所有権移転の登記を経由した上で,共有持分の譲渡による持分全部の移転登記を申請しなければならない。」となります。


なお,どの専門書においても,相続分の譲渡は,遺産分割「前」に限ると記載されています。


追記(平成28年4月5日)
登記研究817号(平成28年3月号)の実務の視点(131頁)には,


「相続分の譲渡ができるのは,遺産分割の前に限られると解される。」,と記載されています。


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2015年8月15日土曜日

相続放棄無効の登記原因証明情報



登記研究平成27年7月号(809号)の実務の視点(109頁)


登記研究580号の登記簿(123頁)


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2015年8月14日金曜日

敷地の権利(利用権)を確保する方法(札幌)



当事務所では,敷地の権利(利用権)を確保する方法について,


契約書,名義変更(登記申請)の書類,遺言書を作成いたします。


相続争いを防ぐには,やはり先手を打つ必要があります。


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親が所有する土地上に,子が居住用の建物を建築する場合があります。


親の死亡後に,親が所有していた土地(敷地)をめぐり,遺産分割協議で他の相続人と揉めることが増えています。


親の死亡後は,敷地の所有権は,法定相続分に応じて,相続人全員で共同所有(共有)することになります。敷地上の建物所有者が,敷地所有権を独占的に相続できるといったような法律はありません。


子が敷地の権利(利用権)を確保する方法としては,


①贈与してもらう方法があります。土地の評価額に比例して各種税金が高くなるので注意が必要ですが,500万円以下の土地であれば,贈与を考えてみましょう。要点は,贈与の口約束だけでは終わらせずに,名義変更を完了してしまうことです。親が生きているうちに,子への名義変更ができるので安心です。ただし,相続させる遺言と比較して税金が高くなるのが短所です。


*他の相続人からの,親の権利証,印鑑証明書,実印を勝手に持ち出して,親の知らないうちに名義変更したというクレームを排除するため,贈与の名義変更は司法書士に依頼しましょう。


②遺言書を作成してもらう方法があります。親が子に対して,敷地を相続させる遺言を作成すれば,親の死亡時に子へ敷地が相続されることになります。ただし,当該遺言が後の遺言により撤回される可能性がありますので,贈与に比べて権利確保の確実性が劣ります。


③死因贈与してもらう方法があります。親と子が,死亡によって効力が生じる贈与契約(死因贈与契約)を締結することで,敷地について,子への仮の名義変更(仮登記)をすることができます。相続させる遺言では仮登記ができません。相続させる遺言と比較して登録免許税が高いこと,不動産取得税が課税されるのが短所です。


④敷地の利用権の契約をしてもらう方法があります,親と子が敷地の利用権の契約(地上権設定契約か賃貸借契約か使用貸借契約)を締結すれば,親の死亡後も契約は継続しますので,子は敷地の利用権を確保できます。ただし,他の共同相続人の多数決により契約が解除される場合がありえます。


①②③④いずれも方法も,長所と短所がありますし,契約書や遺言書の内容を適切に記載する必要があります。必ず,専門家に相談してください。

他に相続人はいない旨の証明書を取得できない場合



登記研究平成27年7月号(809号)の実務の視点(105頁以下)に,


「他に相続人はいない旨」の相続人全員の証明書を取得できない場合についての記載があります。


結論としては,他に相続人はいない旨の証明書を添付することなく,相続登記をすることは,相当困難なようです。


相続人全員が参加しない遺産分割協議は無効ですから,登記官が慎重になるのは無理もないでしょう。


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2015年8月13日木曜日

代襲相続と相続放棄



被代襲者の死亡時の相続について,


相続放棄をしている者であっても,


代襲相続人となることができます。


代襲相続の要件は,被代襲者が被相続人の直系卑属であること,代襲相続人が被代襲者の直系卑属(ただし,被代襲者が兄弟姉妹の場合は甥姪に限る。)であること,被相続人の死亡時に代襲相続人が存在していること(ただし,胎児も含む。)です。


つまり,被相続人の「直系卑属の相続人」であったことは,代襲相続の要件とはされていないからです。


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第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

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