2018年3月30日金曜日

平成30年3月16日付け法務省民二第136号法務省民事局民事第二課長通知



「異順位の共同相続人の間で相続分の譲渡がされた後に遺産分割協議が行われた場合における所有権の移転の登記の可否について」

 甲不動産の所有権の登記名義人Aが死亡し,



その相続人B,C及びDによる遺産分割協議が未了のまま,更にDが死亡し,


その相続人がE及びFであった場合において,


B及びCがE及びFに対してそれぞれの相続分を譲渡した上で,


EF間において遺産分割協議をし,Eが単独で甲不動産を取得することとしたとして,


Eから登記原因を証する情報として,当該相続分の譲渡に係る相続分譲渡証明書及び当該遺産分割協議に係る遺産分割協議書を提供して,


「平成何年何月何日(Aの死亡の日)D相続,平成何年何月何日(Dの死亡の日)相続」を登記原因として,甲不動産についてAからEへの所有権の移転の登記の申請があったときは,


遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力が生じ(民法第909条),中間における相続が単独相続であったことになるから,当該申請に基づく登記をすることができる


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平成4年先例との相違点のひとつとして,平成30年先例はE・Fの遺産分割協議がありましたが,


平成4年先例はE・F(EもFも相続分の譲受人)の遺産分割協議がないことがあげられます。


平成4年先例は,昭和59年先例(同順位の相続人の1人に相続分の譲渡があった場合で,他の相続人と遺産分割協議がないときにおいて,協議のない持分割合による相続登記を認めた事案)に基づき照会された事案ですが,


平成4年先例は,中間の相続登記を省略できないとの判断をしました。


昭和59年先例に対しては,遺産分割協議がされていない点についての指摘があります(藤原勇喜 新訂相続・遺贈の登記  平成18年 テイハン 480頁以下参照)。


平成30年先例には,平成4年先例を変更したのと明示がありませんので,遺産分割協議が無い事案では,なお平成4年先例に基づいて処理される可能性が高いでしょう。


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 昭和59年10月15日 民三5196
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相続分譲渡による相続登記の取扱い
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〔要旨〕 被相続人「A」の共同相続人「B・C・D・E・F」(法定相続分各5分の1)のうち、「C・D・E」がその相続分を「B」に譲渡した場合には、被相続人名義の不動産につき、「B持分5分の4」、「F持分5分の1」とする相続の登記の申請をすることができる。


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 平成4年3月18日 民三1404
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数次相続人間における相続分譲渡と所有権移転の登記の方法
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〔要旨〕 被相続人甲が死亡し、乙・丙及び戊(丁の代襲相続人)が相続した甲名義の不動産につき、相続登記未了のうちに乙の死亡によりA・B・Cが、丙の死亡によりX(Dの代襲相続人)が相続し、さらにその後、戊・A及びXが各自の相続分をそれぞれBに2分の1、Cに2分の1ずつ譲渡した場合において、B及びC名義への所有権移転登記をするには、①相続を原因とする乙・丙及び戊名義への所有権移転の登記、②乙持分について相続を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記(Aの印鑑証明書付相続分譲渡証書添付)、③丙持分について相続を原因とするX名義への持分全部移転の登記、④戊及びX持分について相続分の売買又は相続分の贈与等を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記を順次申請するのが相当である。


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