2012年8月25日土曜日

遺言の無効に関する判例

事件番号 昭和61(オ)946 事件名 遺言無効確認等

 裁判年月日 昭和61年11月20日

法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決

 結果 棄却

 民集 第40巻7号1167頁 

 判示事項

 不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例


裁判要旨 

妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の三分の一を包括遺贈した場合であつても、

右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失つた状態のもとで右の関係が約六年間継続したのちに、

不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、

当該遺言において相続人である妻子も遺産の各三分の一を取得するものとされていて、

右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52732&hanreiKbn=02

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2012年8月21日火曜日

(札幌)相続放棄者の相続財産管理責任



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*上手に相続放棄の申述をすることで,相続放棄者の相続財産管理責任を免れることができる場合があります。

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相続を放棄した者は,被相続人の権利義務を承継しませんが,

相続財産の管理責任を負っています。

①相続の放棄前は,

民法918条により,自己の財産におけるのと同一の注意義務をもって,相続財産を管理しなければなりません。

②相続の放棄後は,

民法940条により,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意義務をもって,相続財産を管理しなければなりません。


したがって,相続放棄によって相続人が不存在となる場合は,

相続放棄をした者は,相続財産管理人が選任されて職務を始めることができるまで相続財産の管理義務を負っていることになります。

なお,相続放棄をした者は,利害関係人として相続財産管理人の選任の申立てをすることができると解されています。
したがって,相続放棄をした者が相続財産の管理責任を免れたい場合は,家庭裁判所に対し相続財産管理人の選任の申し立てをする必要があります。
相続財産管理人選任の申し立ての際は,予納金を納める必要があります。予納金の金額は,相続財産の内容によって異なりますが,50万円から100万円ぐらいです。
予納金は,相続財産を売却できた場合には,売却代金から回収できますが,売却できない場合には,予納金を回収することができません。その場合は,相続財産の管理責任を免れるのと引き替えに,事実上,申立人が予納金を負担するという関係になります。

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(相続財産の管理)


民法第九百十八条  相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。


2  家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。

3  第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

(相続の放棄をした者による管理)


民法第九百四十条  相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

2  第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

2012年8月16日木曜日

相続を原因とする仮登記

相続を原因とする仮登記の申請は却下されます。


相続登記は,単独申請であり登記義務者を考慮する余地がなく,

遺産分割協議がすでに成立している場合は,


①遺産分割協議書が存在する場合は,証書真否確認の訴えに基づく,

②遺産分割協議書が存在しない場合は,所有権確認の訴えに基づく,


判決書を相続を証する書面の一部として添付して,相続登記を申請することになります。



<参照>

1:昭和57年2月12日付け民三第1259号民事局第三課長回答

2:登記研究773号137ページ


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2012年8月1日水曜日

危急時遺言が無効になる場合

①老齢で遺言確認制度について不知であったというだけでは,

特別の事情には該当せず,

危急時遺言の日から20日経過後の遺言確認の申立てが却下された事例。

(札幌高決昭55年3月10日家月32・7・48)

*遺言確認の審判を受けていないので,危急時遺言は無効になります。



②危急時遺言に基づき遺言確認の申立てをしたところ,

遺言者と家庭裁判所の調査官が面談し,

その結果,面談時には遺言者が普通の方式による遺言をできるようになっていたとして,

遺言者の6ヵ月以上の生存により,危急時遺言が無効になった事例。

(福岡高判平19年1月26日判タ1242・281)


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遺言書の開封と遺言の有効性

公正証書以外の遺言(自筆証書遺言,秘密証書遺言など)が,

封筒などに入れられていた場合は,

家庭裁判所の検認の際に開封しますので,

勝手に開封してはいけません。

勝手に開封されたため,遺言が無効になるという場合もあります。

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①自筆証書遺言の本文には押印がなかったが,

自筆証書遺言の本文を入れた封筒の封じ目には,押印(いわゆる封印)があったために,

押印の要件が欠けることはなく,本件自筆証書遺言は有効とされた事例。

(最判平6年6月24日家月47・3・60)



②自筆証書遺言の本文には署名押印はなく,

自筆証書遺言の本文を入れた封筒に署名押印はあったが,

検認時において,すでに開封されており,

自筆証書遺言の本文と封筒が一体のものとして作成されたと認めることはできない以上,遺言者の署名押印を欠くとして,本件自筆証書遺言は無効とされた事例

(東京高判平18年10月25日判時1955・41)


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