2012年6月29日金曜日

生命保険に関する判例20

 裁判年月日 平成24年03月16日  最高裁判所第二小法廷  判決

結果  破棄差戻し

 判示事項 

保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに生命保険契約が失効する旨を定める約款の条項の,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性



裁判要旨 

生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,

(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の間にも保険料支払債務の不履行が解消されない場合に,初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり,

(2)上記約款に,払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは,自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項が置かれており,

(3)保険会社が,保険契約の締結当時,上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているときは,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらない。


(反対意見がある。)

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82127&hanreiKbn=02

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2012年6月28日木曜日

遺産分割調停の対象となる相続財産

①遺産分割調停の対象となる財産は,以下のとおりです。

(1)不動産(農地も含む)

(2)有体動産

(3)現金

(4)不動産の賃借権

(5)ゴルフ会員権(会則等により,相続が認められている場合)

(6)株式



②遺産分割調停の対象とならない財産は,以下のとおりです。

(A)預貯金などの金銭債権(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)

(B)金銭債務(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。ただし,債権者には法定相続分と異なる分割内容を対抗することができません。)


(C)生命保険金(ただし,保険金受取人が被相続人の場合は遺産分割の対象になります。)

(D)死亡退職金・遺族給付金

(E)相続開始後に遺産から生じた果実(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)

(F)使用借権(借主が死亡すると,使用借権は消滅するから)

(G)不動産売却代金等の代償財産(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)

(H)営業権(老舗またはのれん)

(I)遺産の管理費用

(J)遺留分減殺請求権による取戻財産

(K)祭祀財産

(L)遺体・遺骨

(M)葬儀費用(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)


*遺産分割調停では,相続人全員の合意があれば,柔軟な内容の遺産分割をすることができますが,

遺産分割審判の場合は裁判所が一方的に決定するので,

一概には言えませんが,

遺産分割調停が成立するように妥協した方が良い場合があります。

(例)遺産分割審判により,不動産について法定相続分で共有することになった場合,

共有状態を解消するには,

あらためて共有者全員(相続人全員)の共有物分割協議などが必要になってしまい,

財産を分けるという問題が解決しないからです。

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2012年6月27日水曜日

相続時精算課税制度の適用と贈与税の還付

(1)相続時精算課税制度の適用を受ける推定相続人につき,

納付済みの贈与税額が相続税額を超過する場合,超過部分は還付されます。


(2)相続時精算課税制度の適用を受けない推定相続人につき,

相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた場合,

贈与の価額を相続財産に加算して相続税が計算され,

納付済みの贈与税額は控除して不足分を納付することになります。

しかし,仮に贈与税額が相続税額を超過しても超過部分は還付されません。


相続開始前3年以内の贈与財産加算制度は,

贈与税と相続税が重複して課税されることに対する負担の調整制度であって,

納付した贈与税額を相続開始時において精算するという制度ではないからです

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法定相続分による相続登記と遺産分割による相続登記


(1)相続が発生した場合,

不動産について,遺産分割協議が成立していなくても,

相続人(相続人であれば誰でも可能)が申請人となり,

法定相続分による相続登記が可能です。

この登記は,暫定的な登記ですので,

その後,相続人全員で遺産分割協議をして,

相続財産を個別具体的に分割します。

遺産分割協議したことを登記簿に反映させるため,

あらためて遺産分割による相続登記をします。


(*法定相続分による相続登記を経由せず,

直接,遺産分割による相続登記をすることも可能です。

実務上は,こちらの方がほとんどです。)



(2)遺産分割による相続登記をする際に,

単独登記(所有者が一人)ではなく,

共有登記(所有者が複数)にする場合,

その後,共有状態を解消するには,

共有物分割協議が必要になります。

共有物分割による登記をする場合は,

不動産取得税および(相続登記よりも高い)登録免許税が課税されますし,

代償分割の場合は,譲渡所得税の問題が生じます。

よって,遺産分割協議の際は,

できるだけ単独登記になるように調整して,共有登記は避けるにしましょう。

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2012年6月20日水曜日

相続人廃除に関する下級審判例

東京高決平成23年5月9日家月63巻11号60頁

事案の概要

被相続人A,Aの養子Y(Aの妹Bの子),遺言執行者X

Aの遺言に基づき遺言執行者Xが,養子Yに対し,推定相続人廃除の申立てをしました。

東京高等裁判所は,

①YがAの療養看護を怠ったこと,

②AのBに対するマンションの明渡し訴訟に関して,

YはAに対し,訴訟を取り下げるよう迫ったこと,

③AのYに対する離縁訴訟に関して,

Yが訴訟の遅延行為をしたこと,

(Aは,離縁訴訟中に死亡したため,離縁訴訟は終結しました。)


などを総合的に考慮して,

Yの行為は,著しい非行に該当するとして,

Yを推定相続人から廃除するとの原審審判を支持し,

Yの抗告を棄却しました。



*推定相続人が養子の場合は,

実子に比較して廃除が認められやすいようです。


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2012年6月12日火曜日

(札幌)再転相続人が相続放棄したときの第1相続の相続権の行方


札幌,岩見沢,室蘭,小樽,滝川,浦河,岩内,夕張,静内の各家庭裁判所の相続放棄の申述書の作成


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甲が死亡(第1相続)し,


その相続人乙が熟慮期間内に相続の承認も放棄もしないまま死亡(第2相続)し,

その相続人丙らが第1相続と第2相続を両方を相続することを,

再転相続といいます。


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①第2相続について第1相続よりも先に相続放棄をした場合,

再転相続人丙は,乙の有する第1相続の相続権を相続しません。

その結果,乙の有する第1相続の相続権は,丙以外の乙の相続人が相続することになります。

乙の相続人全員が相続放棄をした場合は,

乙の有する第1相続の相続権について,乙の相続人不存在として手続を進めることになります。

重要なことは,乙の相続人全員が相続放棄をしたからといって,

乙の有している第1相続の相続権が遡って消滅することはないということです。

つまり,乙は甲の相続人ですので,

乙の相続人全員が相続放棄しても,乙が甲の相続人でなかったことにはなりません。

その結果,乙の有する第1相続の相続権は,乙が保持し続けることになります。


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(1)被相続人はA,相続人はAの兄弟姉妹Bおよび兄弟姉妹C。


Aの兄弟姉妹Cは熟慮期間内に死亡(第2相続)し,Cの子Dが再転相続人の事例


再転相続人Dが,第2相続ついて第1相続よりも先に放棄すると,

Dは,もはやCの有する第1相続の相続権を相続できません。

そうすると,次順位相続人であるCの兄弟姉妹Bが,兄弟姉妹としてCの有する第1相続の相続権を相続することになり,

結果として,BがAの相続財産を全部相続することができます。


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(2)被相続人はA,相続人はAの兄弟姉妹BとAの兄弟姉妹Cの子D

Aの兄弟姉妹CはAより先に死亡していたため,Cの子Dが代襲相続したが,

子Dは熟慮期間内に死亡し(第2相続),Dの子Eが再転相続人の事例


再転相続人Eが,第2相続について第1相続よりも先に放棄すると,

 Eは,もはやDの有する第1相続の相続権を相続できません。

 そして,死亡したDが第1相続の相続権を有し続けていることになります。

 Dの相続人全員が放棄すると,Dの相続人は不存在ということになります。

(1)の事例では,BはCの兄弟姉妹であったので,Cの相続人になることができました。

(2)の事例では,BはDの兄弟姉妹ではないので相続人になることができず,Dの有する第1相続の相続権については,相続人不存在として手続を進めることになります。



*参考:『登記研究771号175頁 カウンター相談233』




再転相続と相続放棄


相続放棄の申述書の作成
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(1)甲が死亡(第1相続)し,

その相続人乙が熟慮期間内に相続の承認も放棄もしないまま死亡(第2相続)し,

その相続人丙が第1相続と第2相続の両方を相続することを,

再転相続といいます。


(2)甲および乙の相続人丙(再転相続人)は,

甲(第1相続)および乙(第2相続)の相続について,

原則として,格別に相続の承認または放棄を選択をすることができます。


(3)ただし,相続放棄をするときは,

次のパターンによって法的結論が異なるので注意が必要です。

1:再転相続人丙が,第1相続を先に承認または放棄した場合

 再転相続人丙は,その後,第2相続のついて,

 承認または放棄をすることができます。

2:再転相続人丙が,第2相続を先に放棄した場合

 再転相続人丙は,その後,第1相続について,

 承認または放棄のいずれもすることができません。

 丙は,第2相続を承認して初めて,乙の有する甲の相続権を承継(相続)するからです。

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