2012年5月30日水曜日

相続登記が却下された事例

「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書が,

一部しか提出されていないという事実関係の下で,

登記申請が却下され,

却下した処分行政庁の処分が適法とされた下級審判例。


名古屋地方裁判所 平成22年1月21日民事第9部判決 請求棄却(確定)

平成21年(行ウ)第32号 登記申請却下決定取消請求事件

登記情報607号100頁


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2012年5月16日水曜日

小規模宅地等の特例と被相続人の生活の本拠

小規模宅地等の特例の対象となる

「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」の判定は,

被相続人等が,

宅地上の建物に生活の本拠を置いていたかどうかによって判定されます。

したがって,

仮住まいを目的とする居住,

一時的な目的による居住,

小規模宅地等の特例を受けるためのみを目的とする居住,

主として趣味や保養を目的とする居住,
 というような場合については,

その宅地上の建物に生活の本拠を置いていたとは判定されません。

(1)被相続人が入院したことにより建物が空き家になっていた場合

①被相続人が退院したとすれば,いつでも生活できるように建物の維持管理(日常生活ができる状態であること=家財道具がそのままで,電話,電気,ガス,水道の契約を継続しているなど)が行われ,

かつ,

②被相続人の入院後,あらたに建物を他の者の居住の用その他の用に供していないのであれば,

被相続人が退院することなく,死亡した場合でも,

空き家となっていた期間の長短を問わず,

その空き家に被相続人が生活の本拠を置いていたと判定されます。


(2)被相続人が老人ホームに入所したことにより建物が空き家になった場合

①被相続人の身体または精神上の理由により介護を受ける必要があるため,老人ホームに入所し,

かつ,

②被相続人が退院後,いつでも生活できるように建物の維持管理(日常生活ができる状態であること=家財道具がそのままで,電話,電気,ガス,水道の契約を継続しているなど)が行われ,


かつ,
 ③被相続人の入院後,あらたに建物を他の者の居住の用その他の用に供していない,

④被相続人または親族が,老人ホームの所有権または終身利用権を取得したものでないのであれば,

被相続人が老人ホームを退所することなく,死亡した場合でも,


その空き家に被相続人が生活の本拠を置いていたと判定されます。



*なお,被相続人が有料老人ホームの終身利用権を取得したことその他の事情を総合考慮して,

生活の本拠が,空き家ではなく有料老人ホームにあるとして,

小規模宅地等の特例の適用が認められなかった裁決(平成20年10月2日裁決事例集NO.76 450頁)があります。


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平成25年6月3日(月)追記

相続税法の改正により,老人ホームの入所の場合の小規模宅地の特例の取扱いが変わる予定です。

①平成26年1月1日以降の相続又は遺贈に係る相続税については,

下記の要件も満たすことで,老人ホームに入所(終身利用権を取得)していても,小規模宅地の特例を受けることができるようになります。


1.被相続人が介護が必要なため入所したものであること。

2.当該家屋(老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋)が貸付け等の用途に供されていないこと。

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小規模宅地等の特例と贈与

小規模宅地等の特例が適用される財産は,

個人が相続または遺贈により取得した財産に限ります。

したがって,被相続人から贈与により取得した財産については,

小規模宅地等の特例が適用されません。

(1)相続開始前3年以内に被相続人から宅地の贈与を受けた場合でも,

小規模宅地等の特例は適用されません。

(2)相続時精算課税制度を利用した贈与についても,

小規模宅地等の特例は適用されません。


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2012年5月15日火曜日

居住用不動産の売却

居住用不動産(居住している家屋または,居住している家屋とともにその敷地)


を売却する場合で,

居住用不動産の譲渡所得の特別控除の要件を満たしていれば,

譲渡益のうち3000万円が控除されます。

したがって,売却価額が3000万円以下であれば,

譲渡所得による所得税は課税されないことになります。



特別控除の要件は,ほかにもありますが,

少なくとも居住用不動産を売却するときに,

売却者が,原則として居住用不動産の所有者かつ居住している人でなければなりません。

つまり,居住用不動産に相続が発生し,

相続人が居住用不動産を売却したが,

相続人自身がこの居住用不動産に居住していない場合には,

この特別控除は適用されません。


(1)売却者A(居住していた人)は売買契約を締結したが,

所有権移転登記および代金決済前に死亡した場合。

売買契約の締結により,売買契約の効力は生じているので,

相続人Bが売買の手続を完了させ,死亡した売却者Aの譲渡所得として申告すれば,

この特別控除は適用されます。

(2)居住用不動産を所有し,かつ,居住していたAが死亡し,

社宅に住んでいる相続人Bが居住用不動産を相続し,

Bは居住用不動産に居住することなく,売却した場合。

たとえ,AがBの扶養親族だったとしても,

Bは,現在社宅に住んでおり,所有者として居住用不動産に居住したことがないので,

この特別控除は適用されません。

(3)夫Aは居住用不動産甲を所有し,妻Bとともに居住していたが,

居住用不動産甲の買換えを前提に,先に居住用不動産乙を買い,妻Bとともに転居した。

居住用不動産甲を売却する前に,夫Aが死亡したため,

妻Bが居住用不動産甲と乙を相続し,居住用不動産甲を売却した場合。

妻Bは,かつて居住用不動産甲に住んでいたが,そのときは所有者ではなく,

現在は居住用不動産乙に居住しているから,

この特別控除は適用されません。

なお,夫Aが,居住用不動産甲から乙に転居し,「・・・これらの家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間・・・」に,

妻Bが相続した居住用不動産甲を売却したとしても,

この特別控除は適用されません。

「」の規定が適用されるのは,売却者が夫A自身の場合に限るからです。


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2012年5月4日金曜日

葬儀費用(葬式費用)の負担者の考え方



葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し,そのうち埋葬等の行為に要する費用は祭祀主催者が負担するものとされた事例


事件番号 平成23(ネ)968 事件名 貸金返還等請求控訴事件

裁判年月日 平成24年03月29日

 名古屋高等裁判所  民事第3部

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82234&hanreiKbn=04




【事案の概要】

Eが死亡した。相続人は子Aと子Cの2名。

EとA,Cは20年以上疎遠であったため,Eの兄弟であるBが葬祭・火葬・納骨などを行った。

Bが葬儀の喪主を務めた。

Bが,葬儀費用(葬祭費用,火葬費用,納骨代,お布施など)を立て替えたとして,

相続人A,Cを訴えた。

原審の名古屋地方裁判所が,Bの請求を棄却したので,Bが控訴。

(なお,Bが立て替えた①Eのアパートの賃貸借契約の解約に基づく原状回復費用,②Eの公共料金については,原審の名古屋地方裁判所が請求を認容しています。)




【名古屋高等裁判所の判断】

(1)葬儀費用とは,

①死者の追悼儀式に要する費用

および

②死者の埋葬等の行為に要する費用((死体検案,死亡届,死体の運搬,火葬に要する費用)

のこと。


(2)葬儀費用の負担については,

亡くなった者が,あらかじめ自分の葬儀の契約を締結しておらず,

かつ,

相続人や関係者との間で葬儀費用の負担について合意がない場合は,

①死者の追悼儀式に要する費用は,追悼儀式を主宰した者が負担する。

②死者の埋葬等の行為に要する費用は,祭祀承継者が負担する。



*追悼儀式を主宰した者とは,自己の責任と計算で,儀式を準備,手配,挙行した者のこと。

*祭祀主宰者とは,民法897条に定める者のこと。




(3)本件において,

①死者の追悼儀式に要する費用の負担者:

亡くなったEが,あらかじめ自分の葬儀の契約を締結しておらず,


かつ,

相続人A,Cや関係者との間で葬儀費用の負担について合意がないので,

追悼儀式を主宰したBが負担する。

(裁判の結果は,Bの請求は棄却)


②死者の埋葬等の行為に要する費用の負担者:

祭祀承継者につき,Eが指定しておらず,

かつ,

慣習上明白であるとは判断できないので,

家庭裁判所において,祭祀主宰者が定められる必要がある。

本件では,家庭裁判所において祭祀主宰者が定められていないので,

結局,死者の埋葬等の行為に要する費用を負担するべき者は定まらない(=負担者が不明の状態になっている)。

(裁判の結果は,Bの請求は棄却)


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葬儀費用(葬式費用)は葬儀主宰者が負担するとした下級審判例

◇ メール相談を承ります:相談料5250円(前払い):3回まで回答いたします。相談内容を下記のメールアドレスまで送信ください。 soudann@ishihara-shihou-gyosei.com 

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葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し,そのうち埋葬等の行為に要する費用は祭祀主催者が負担するものとされた事例



事件番号 平成23(ネ)968 事件名 貸金返還等請求控訴事件

 裁判年月日 平成24年03月29日

 名古屋高等裁判所  民事第3部

結果 棄却

判示事項の要旨 

葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し,そのうち埋葬等の行為に要する費用は祭祀主催者が負担するものとされた事例



最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82234&hanreiKbn=04

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