2015年2月27日金曜日

相続放棄の熟慮期間に関する裁判例



東京高等裁判所平成26年3月27日決定判時2229号21頁は,


原審判が,被相続人の死亡を知ってから2年7ヵ月以上経過後の相続放棄の申述を却下しましたが,本決定は,原審判を取り消して受理しました。


月報司法書士459号46頁の冷水登紀代准教授の大阪高等裁判所平成21年1月23日判決(判タ1309号251頁)に対する解説によりますと,


最高裁判所は限定説に立つと解されていますが,高等裁判所の裁判例においては,非限定説に立ち,相続放棄の申述を受理する傾向にあるそうです。


受理する要件として,①と②の両方を満たす必要があるそうです。


①申述人は,不動産などの積極財産の存在を知っていたが,申述人が積極財産を取得しておらず,


かつ,


②申述人は,借金などの消極財産の存在を知らず,積極的な調査および調査の期待可能性を欠くこと。


 


なお,本決定は,申述人が遺産分割証明書に署名押印した行為は,現実に遺産分割協議をしたものではなく,詳細は民事訴訟で判断されるべきであるとして,法定単純承認事由の該当性につき,否定的な判断をしました。


(羽生 香織 月報司法書士516号87頁 参照)


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2015年2月19日木曜日

共同相続した株式の議決権の行使に関する判例

上告人は,特例有限会社で,その発行済株式の総数は3000株であり,


Aが2000株,Cが1000株を所有していたが,


Aが死亡し,2000株について,法定相続分である2分の1の割合で,Bと被上告人が共同相続した(準共有となった。遺産分割は未了。)。


被上告人は上告人の臨時株主総会の前において,臨時株主総会における準共有株式の議決権の行使を拒否していた。


上告人の臨時株主総会において,Cが議決権を行使し,Bが準共有株式2000株の全部について議決権を行使した。


準共有者からの会社法106条本文の指定及び通知が欠けていたが,上告人はBの議決権の行使について,会社法106条ただし書の同意をした。


被上告人は,上告人に対して,決議の方法等に法令違反があるとして,臨時株主総会の決議取消しの訴えを提起した。


最高裁は,


①共有株式の議決権行使は,特段の事情がない限り,管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決すると判断し,


②共有株式の議決権行使について,共有者の持分の価格に従った過半数の決議がなければ,株式会社が会社法106条ただし書の同意をしても適法ではないと判断し,


本件事案では,Bが2000株ついて過半数に満たない2分の1しか準共有持分を有していなかったことから,Bの2000株の議決権行使が不適法となり,決議の方法が法令に違反するとして,臨時株主総会の決議を取り消した原審の判断を是認しました。


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事件番号
 平成25(受)650
事件名
 株主総会決議取消請求事件
裁判年月日
 平成27年2月19日    
法廷名
 最高裁判所第一小法廷           
裁判種別
 判決
結果
 棄却
判例集等巻・号・頁
原審裁判所名
 東京高等裁判所
原審事件番号
 平成24(ネ)5048
原審裁判年月日
 平成24年11月28日
判示事項
裁判要旨
 1 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま権利が行使された場合における同条ただし書の株式会社の同意の効果
2 共有に属する株式についての議決権の行使の決定方法
参照法条
全文
全文 (最高裁HP)