2013年11月30日土曜日

遺産共有と物権共有が併存している土地の共有関係解消の方法

事件番号
 平成22(受)2355
事件名
 共有物分割等請求事件
裁判年月日
 平成25年11月29日 最高裁判所第二小法廷 判決
判示事項
裁判要旨


 1 共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消のために裁判上採るべき手続は共有物分割訴訟であり,その判決で遺産共有持分を有する者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消は遺産分割による 
 
2 遺産共有持分の価格を賠償させる方法による共有物分割の判決がされた場合には,賠償金の支払を受けた者は,これをその時点で確定的に取得するものではなく,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負う 
 
3 裁判所は,遺産共有持分の価格を賠償させる方法による共有物分割の判決をする場合には,同持分を有する各共有者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定め,持分取得者にその範囲に応じた賠償金の支払を命ずることができる 


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83773&hanreiKbn=02


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2013年11月21日木曜日

不動産の生前贈与による相続紛争の防止

遺言によって,相続紛争を防止する方法もありますが,

被相続人(遺言者)の死亡=相続発生ですので,

死亡後に遺言者の希望が貫徹される保障はありません。


そこで,被相続人の生前に相続紛争を防止する方法があります。

生前に相続時精算課税制度(2500万円まで特別控除)を利用して,

あとを次いで欲しい相続人に対して不動産を贈与します。

相続開始時には,預貯金が主たる遺産として残るようにします。

預貯金は可分債権ですので,

相続人全員で遺産分割協議をしなくても,相続人が単独で銀行に対して法定相続分を請求することができます(遺産分割協議を経由した場合と比較して手続的負担は生じます)。

不動産をもらっていない相続人が遺産分割調停の申立てをしても,

預貯金は可分債権ですので,遺産分割調停・審判の対象になりません。

また,不動産をもらっていない相続人が不動産の贈与に対して特別受益の主張をしても,遺産分割調停・審判の対象となる遺産がなく,持ち戻される財産がないので,無意味な主張になります。

ただし,相続開始時の預貯金が少なく,贈与された不動産により遺留分の侵害が生じている場合は,遺留分減殺請求訴訟のなかで,特別受益を加味した遺留分の計算がおこなわれることになります。

(例)不動産の価格は1200万円,預貯金1200万円,子Aと子Bが相続人の場合。

不動産を子Aに贈与して,相続開始時の預貯金を子Aと子Bが600万円ずつ可分債権として法定相続すると,

全体の遺産は2400万円で,子の遺留分は4分の1=600万円となり,Bの遺留分を侵害していないことになるので,

Aは,Bとの遺産分割協議をすることなく,1200万円の不動産と預貯金600万円を確保することができます。


なお,不動産の贈与に対して不動産取得税や登録免許税が課税されますので,

相続時精算課税制度の利用前に,

贈与税の暦年課税110万円の基礎控除を利用して,受贈者に対して納税資金を贈与しておく方法が考えられます。



*上記の方法は,あくまで単純化した例ですので,必ず専門家に相談して下さい。


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2013年11月8日金曜日

法定相続人よりも内縁の配偶者を優先した最高裁判例(交通事故)


内縁の妻は,内縁の夫の収入によって生計が維持されていたところ,

内縁の夫が交通事故で死亡したため,

国が自賠法七二条一項に基づき,

内縁の妻および法定相続人である上告人(内縁の夫の妹2名)に対して,それぞれ保障金を支払った。

法定相続人である上告人が,内縁の妻は被害者には当たらないとして,国に対して訴訟を提起した。


*内縁の妻は,法律婚の夫と死別後,内縁の夫と結婚式を挙げ,同居していたようです。


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裁判年月日 平成5年04月06日 最高裁判所第三小法廷 判決  民集 第47巻6号4505頁


判示事項

 一 内縁の配偶者と自動車損害賠償保障法七二条一項にいう「被害者」 
 
二 自動車損害賠償保障法七二条一項により死亡者の相続人に損害をてん補すべき場合に既に死亡者の内縁の配偶者が同条項によりてん補を受けた扶養利益の喪失に相当する額を死亡者の逸失利益の額から控除することの要否

裁判要旨

 一 内縁の配偶者は、自動車損害賠償保障法七二条一項にいう「被害者」に当たる。 
 
二 自動車損害賠償保障法七二条一項により死亡者の相続人に損害をてん補すべき場合において、既に死亡者の内縁の配偶者が同条項により扶養利益の喪失に相当する額のてん補を受けているときは、右てん補額は、相続人にてん補すべき死亡者の逸失利益の額からこれを控除すべきである。



最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=53372&hanreiKbn=02


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2013年11月3日日曜日

遺産分割協議書の文言


最近,税理士が著者の2冊の本を読みました。

いずれの本も,民法の部分については,難があると感じました。

両方の本を読んで,共通事項として気になった部分がありました。


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遺産分割協議書の条項として,

「その他被相続人の一切の財産は,相続人○○が相続する。」

または,

「前各号により分割した遺産以外の財産および将来に発見されたる財産は,相続人○○が取得するものとする。

と記載しておけば,

遺産分割協議書に記載されていない財産が発見された場合に,あらためて遺産分割協議をしなくても良いので,お勧めします。

と,書いてありました。

上記のような条項があれば,遺産分割が未分割とはならず,相続税において不利な扱いにならない,と書いてあったような気がします。


しかし,民法上は,重要な財産が遺産分割協議書に明示されていない場合は,遺産分割協議が錯誤により無効となる可能性があります。

そもそも,上記のような条項がある遺産分割協議書を提示されたとしても,取得者以外の相続人は,はんこを押さない可能性が高いと思います。


遺産分割協議書に記載された以外にめぼしい財産がないということが,ほぼ確定している場合や,

夫が死亡して,妻が取得者になる場合であれば,

その他の相続人も納得しやすいかもしれません。


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2013年11月1日金曜日

代償金の支払いに対して,贈与税が課税される場合




被相続人 父

相続人 子A,子B

相続財産 現金        1000万円

死亡保険金(受取人 子A) 4000万円  


子Aは死亡保険金4000万円を受け取り,子Bは現金1000万円を受けとりました。

子Aと子Bが,上記の財産を均等に取得するために,子Aが子Bに対して,代償金として1500万円を支払った場合。

子Aが受けとった死亡保険金4000万円は,民法上の相続財産ではなく,子A固有の財産となります。したがって,子Aと子Bの遺産分割の対象となるのは,現金1000万円のみです。

死亡保険金は遺産分割の対象ではないので,子Aが子Bに対して代償金を支払っているにもかかわず,子Aは代償金に対応する相続財産を子Bからまったく取得していないことになります。

下記の参照文献によると,本問の場合は,代償金1500万円全額を子Aが子Bに贈与したことになり,子Bには贈与税が課税されるとの結論を示していました。


ところで,平成16年10月29日 最高裁判所第二小法廷 決定 民集 第58巻7号1979頁 は,

「被相続人を保険契約者及び被保険者とし,

共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,

民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,

保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,

保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,

同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。」


と判断しています。


つまり,生命保険金が,特段の事情によって特別受益に準じて持戻しの対象となる場合は,

代償金の支払いがあっても,代償金の受取人に贈与税は課税されないと解されます。

本問では,生命保険金の割合が,全財産5000万円のうち4000万円(80%)を占めているので,

諸般の事情にもよりますが,

特別受益に準じて持戻しの対象となる可能性が高く,

私見としては,代償金を受けとった子Bに対して,贈与税が課税されない可能性も充分あると思います。




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『説例解説 遺産分割と相続発生後の対策 五訂版』

(中川 昌泰 監修  遺産分割研究会 編)

<大蔵財務協会>

P390

「6-6 本来の取得財産価額を超える代償金を交付すると相手方にその超過金額に対する贈与税が課される」

を参考にしました。


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