2016年3月29日火曜日

信託財産に係る賃料債権の差押えに関する判例



信託契約の受託者が固定遺産税を滞納したために,


市が,信託財産である土地及びその土地上の受託者の固有財産である建物に係る賃料債権を差し押えたため,差し押さえの適法性が争われました。


旧信託法16条1項の「信託財産ニ付信託前ノ原因ニ因リテ生シタル権利又ハ信託事務ノ処理ニ付生シタル権利ニ基ク場合ヲ除クノ外信託財産ニ対シ強制執行,仮差押若ハ仮処分ヲ為シ又ハ之ヲ競売スルコトヲ得ス」との規定,


国税徴収法63条が,「徴収職員は、債権を差し押えるときは、その全額を差し押えなければならない。」との規定,


などが論点となりましたが,最高裁は賃料債権に対する差押えを適法と認めました。


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 平成28年3月29日 最高裁判所第三小法廷判決       
裁判要旨
 信託契約の受託者が所有する複数の不動産の固定資産税に係る滞納処分としてされた,上記不動産のうちの信託財産である土地とその上にある固有財産である家屋に係る賃料債権に対する差押えが,適法とされた事例
       
全文 最高裁判所HP
全文

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札幌市中央区 
石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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2016年3月25日金曜日

死因贈与契約にする場合(札幌)



当事務所は司法書士ですので,死因贈与契約書の作成及び仮登記の申請書の作成を承っています。


*行政書士は,仮登記の申請書を作成できません。


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(例)夫に先立たれた妻(嫁)が舅・姑と同居していて,舅・姑の介護をする場合,


嫁は相続人ではないので,舅・姑の相続財産を相続することができません。


舅が所有し,嫁が同居している居住用不動産について,


舅が死亡した後,嫁は追い出される可能性があります。


嫁が相続するには,遺言書により遺贈してもらうか,死因贈与契約を締結することになります。


嫁は相続人ではありませんので,


遺贈も死因贈与も,登録免許税は同率です。


遺贈も死因贈与も,不動産取得税は同率です。


遺贈は仮登記ができませんが,死因贈与は仮登記ができます。


遺言書は,いつでも撤回することができるとされていますので,遺贈は内容を変更される不安がつきまといます。


死因贈与も契約であるにもかかわらず,贈与者が一方的に撤回することができるとされていますが,


仮登記をした場合は撤回は制限されるという学説があること,


負担付き死因贈与として場合で,負担を履行していた場合は撤回が制限されるという判例があることから,


遺贈ではなく,死因贈与とすることで,嫁の権利を保護することが可能となります。


したがって,舅の生前に居住用不動産に嫁名義の仮登記をすることで,舅の介護をしても,舅の死亡後に追い出されるかもしれないという,嫁の不安を除去することができます。


嫁が姑の介護することを負担とする,負担付き死因贈与とすることで,舅の死亡後に,反対に姑が追い出されるかもしれない不安を除去することができます。


*上記の説例では,舅を贈与者,嫁を受贈者とし,嫁の舅・姑に対する介護を負担とする死因贈与契約を締結し,居住用不動産に嫁への仮登記をすることが考えられます。











2016年3月24日木曜日

「預金は対象外」判例変更へ=遺産分割審判で大法廷回付-最高裁



大法廷への回付=判例変更とは言えませんが,


銀行実務は,原則として預金債権の遺産分割には相続人全員の同意を求めていますし,


学説には,預金債権(可分債権)は遺産分割の対象に含まれるという有力説がありますし,


法制審議会民法(相続関係)部会においては,可分債権の遺産分割における取扱いが検討課題となっています。


そのため,大法廷判決により判例が変更される可能性は十分あると考えられます。


結論の先取りで,銀行が各相続人の法定相続分での払い戻し請求を拒絶するようになるかもしれません。


時事通信HP
。(2016/03/23-17:27)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2016032300695


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2016年3月23日水曜日

共有名義と固定資産税の支払い義務



地方税法第10条の2により,不動産の共有者は,固定資産税を連帯して納税する義務を負っています。


したがって,市町村は,共有者の1人に対して固定資産税の全額を請求することができます。


相続が発生して,不動産が遺産分割前の共有状態の場合に,


相続人代表者の届出をしたときは,


その代表者宛に,固定資産税の全額の納付書が送付されてきます。


その後,法定相続登記又は遺産分割協議に基づく相続登記を申請した結果,


当該不動産が,不動産登記上の共有名義になったとしても,それぞれの共有者の持分に応じた固定資産税の納付書が送付されることはありません


当該市町村の規則に基づいて,共有者のうち1名に対して固定資産税の全額の納付書が送付されてきます。


送付されてきた共有者は,自己の共有持分に応じた税額のみの支払いを主張することはできません。連帯納付義務により,他の共有者の持分に応じた税額も支払う義務があります。


当然ながら,他の共有者の持分に応じた税額の支払いは立て替え払いになりますので,


他の共有者に対して,その税額の支払いを請求することができます。


法律上は,他の共有者に対しては,固定資産税納税通知書を送付する必要がないとされていますが,


最近は,他の共有者に対しては固定資産税納税通知書のみ(納付書は除外)を送付するとの取り扱いに変更している市町村が増えているようです。




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地方税法
第十条の二  共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
 共有物、共同使用物、共同事業又は共同行為に係る地方団体の徴収金は、特別徴収義務者である共有者、共同使用者、共同事業者又は共同行為者が連帯して納入する義務を負う。


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兵庫県西脇市のホームページから引用


平成27年4月から西脇市の税金の納め方が変わりました


これまで、固定資産を共有されている方への納税通知書は共有者の代表者のみに送付していましたが、平成27年4月から代表者以外の共有者の方々へも「固定資産税・都市計画税納税通知書」を送付しています。(下図参照)
 これは、代表者以外の共有者の方々についても、固定資産の評価額や税額等をご確認いただくためのものです。
※納税通知書は、共有者の方々へ送付しますが、税金を納めていただく「納付書」は、代表者へのみ送付しています。
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2016年3月20日日曜日

非弁行為により行政書士報酬が無効の裁判例




東京地裁平成27年7月30日判決(判例時報2281号)


行政書士が遺産分割に関与した行為が,弁護士法に違反したとして(いわゆる非弁行為),


支払った行政書士報酬の返還請求が認められ,


本来は相続できたはずの金額の減少分についての損害賠償請求も認められたようです。




*行政書士報酬の多寡で,非弁行為かどうかが決まるわけではありませんが,


当該事案では,100万円を超える行政書士報酬を受け取っていたようです。


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2016年3月16日水曜日

相続登記に「他に相続人はいない」旨の証明書は不要

法務省民二第219号平成28年3月11日法務省民事局長通達により,


相続登記の申請において,除籍又は改製原戸籍(以下「除籍等」という。)の一部が滅失等していることにより,その謄本を提供することができないときについて,


平成28年3月11日以降の相続登記の登記申請については,


戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え,


除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く)の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書のみが提供されていれば,相続登記をして差し支えないものとされました。


したがって,従前の登記先例(昭和44年3月3日付け民事甲第373号民事局長回答)は,変更されました。


従前の登記先例の「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付き)の提供を要するとしていた部分は削除され,相続人全員の証明書は提供不要となりました。




この法務省民事局長通達は,下記の奈良地方裁判所判決が影響したような気もします。


奈良地方裁判所の事案は,相続人全員の証明書を裁判外で任意に取得できない場合において,裁判上の手続きによって代替できるための要件はなにかといった問題でした。


近年,全国的に問題となっている空き家・空き地問題を処理するに当たり,


法務局が,「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付き)がなければ,相続登記を受理しないため,


売買等をすることができず,行き詰りの土地・建物も多数あったと思われます。


私見は,本件登記先例の変更は,奈良地方裁判所の判決の影響よりも,空き家・空き地問題を解消するための国政上の理由だと思っています。


相続人不明の空き家・空き地ではなく,現に相続人が管理している建物・土地についても,売買等をすることができないのに,固定資産税・都市計画税を課税され続けるというのも理不尽な話しでした。


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事件番号 平成26(行ウ)18     

事件名  不動産登記申請却下処分取消請求事件      

裁判年月日  平成27年12月15日      

裁判所名・部  奈良地方裁判所  民事部


最高裁判所HP


原告は,別件訴訟の調書判決(判決確定)の正本を提供して相続登記を申請したところ,


被告(処分行政庁=法務局)は,被相続人の19歳からの戸籍謄本しか添付されていなかったため,他に相続人はいない旨の相続人全員の証明書が必要とされるところ,添付がされていないとして,登記申請を却下しました。


奈良地方裁判所は,擬制自白により認定された本件調書判決は,その理由中において相続人が被告らのみである旨の認定がされているものということができるから,相続人全員の証明書に代えて,本件調書判決の正本の写しを登記原因証明情報として取り扱って差し支えないとして,


「登記申請を却下する旨の決定を取り消す。」との判決をしました。



2016年3月15日火曜日

売買契約の手付け解除と不動産業者の媒介報酬



不動産売買契約を手付け解除する場合において,


売買契約の手付け解除条項に,


①買主は,手付け金を放棄して解除することができる。


②売主は,手付け金の倍額を支払って解除することができる。


などの記載がされている場合があります。


しかし,この手付け解除条項は,売主と買主との間の規定です。


別途,不動産業者に対する手付け解除の媒介報酬への影響を考えなければなりません。


国土交通省の媒介契約約款においては,売買契約の手付け解除があった場合の不動産業者の媒介報酬(仲介報酬)についての規定がありません。


媒介契約に手付け解除の場合の規定がなくても,


不動産業者は,当該売買が,


①他人間の商行為の場合は商法550条により,


②商行為ではない非商人間の場合は商法512条により,


媒介契約の相手方である売主及び買主に対して媒介報酬を請求することができます。


売買契約の成立後であれば,決済前であっても,不動産業者は売主と買主の媒介を成立させておあり,報酬請求権が発生しているからです。


つまり,売主と買主は,手付け金の放棄又は倍額の支払いにとどまらず,(媒介契約の内容にもよりますが),媒介報酬を支払わなければならないことにも注意をしなければなりません。

行政庁(国土交通省)は,不動産業者に対して売買契約時に報酬の50%,決済時に報酬の50%を受領するように指導していますので,


この指導に従うとすると,手付け解除の場合は,不動産業者の報酬は50%ということになります。


しかし,あくまで行政庁の指導にすぎませんので,裁判所に持ち込まれた場合は,不動産業者の媒介業務の内容をふまえた上で,裁判官が相当な報酬を決定することになります。


なお,住宅ローン特約を定めた場合,住宅ローンの融資が受けられないときは不動産業者に対する報酬は発生しないと定めるのが原則です。


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国土交通省の専任媒介契約約款


(報酬の請求)
第7条 乙の媒介によって目的物件の売買又は交換の契約が成立したときは、乙は、 甲に対して、報酬を請求することができます。ただし、売買又は交換の契約が停止 条件付契約として成立したときは、乙は、その条件が成就した場合にのみ報酬を請 求することができます。


2 前項の報酬の額は、国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、甲乙協議の上、 定めます。


(報酬の受領の時期)
第8条 乙は、宅地建物取引業法第 37条に定める書面を作成し、これを成立した契約 の当事者に交付した後でなければ、前条第 項の報酬(以下「約定報酬」といいます )を受領することができません。


2 目的物件の売買又は交換の契約が、代金又は交換差金についての融資の不成立を 解除条件として締結された後、融資の不成立が確定した場合、又は融資が不成立の ときは甲が契約を解除できるものとして締結された後、融資の不成立が確定し、こ れを理由として甲が契約を解除した場合は、乙は、甲に、受領した約定報酬の全額 を遅滞なく返還しなければなりません。ただし、これに対しては、利息は付さない こととします。


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2016年3月9日水曜日

マンション所有者の相続人がいない・相続人が不明の場合





マンション所有者の相続人の有無が不明の場合において,


マンション管理組合などの利害関係人からの依頼であれば,


当事務所が,相続人の有無(相続人が存在した場合は,その住所)を調査いたします。


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マンション所有者(区分所有者)の相続人が不存在の場合のマンション所有権(区分所有権)の帰属ですが,


①分離処分が禁止されている場合は,


専有部分及び敷地利用権は,まず特別縁故者への財産分与の対象となります。


つぎに,特別縁故者に分与されない専有部分及び敷地利用権は国庫に帰属することになります。


②分離処分が禁止されていない場合は,


専有部分及び敷地利用権は,まず特別縁故者への財産分与の対象となります。


つぎに,特別縁故者に分与されない専有部分は国庫に帰属し,敷地利用権は民法255条により他のマンション所有者に帰属することになります。その結果,専有部分と敷地利用権の所有者が分離することになります。




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建物の区分所有等に関する法律
民法第二百五十五条 の適用除外)
第二十四条  第二十二条第一項本文の場合には、民法第二百五十五条同法第二百六十四条 において準用する場合を含む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。

第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。

民法
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条  共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

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1人遺産分割協議(遺産分割決定)に関する登記先例

平成28年3月2日付法務省民二第154号は,


大阪法務局民事行政部長の東京高判平成26年9月30日及び東京地判平成26年3月13日判決に言及した上での質問に対する回答ですが,


不動産の所有権登記名義人の甲が死亡し,その妻乙と子丙の2名が法定相続人の場合において,


乙と丙との間で遺産分割協議が成立していない場合の,


乙死亡後に丙(乙の唯一の法定相続人)が作成した遺産分割決定書(遺産処分決定書)は登記原因証明情報としての適格性を欠くが,


乙と丙との間で,丙が甲の不動産を単独で取得する旨の遺産分割協議が成立していた場合は,


乙の死亡後に丙(乙の唯一の法定相続人)が作成した遺産分割協議の証明書(丙の印鑑証明書付き)は登記原因証明情報としての適格性を有しており,


甲名義から直接に丙名義への相続を原因とする所有権移転登記をすることができるとのことです。


なお,本件登記先例には特別受益証明書についての言及はありません。


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