2010年10月31日日曜日

遺留分減殺請求7

遺留分権利者は,


遺留分減殺請求の対象となる贈与または遺贈に対する,


具体的な選択権を有しないと解されています。


選択権を有するとすると,


遺留分権利者が,嫌がらせで,受贈者または受遺者の必要な相続財産を


選択する恐れがあるからです。


下級裁判所の実務,学説の多数説は,


遺留分権利者の選択権を否定しているようです。


(例)


相続財産が,土地1000万円,建物500万円,預金500万円の場合で,


遺言者が,相続人である子ABのうち,Aに全部遺贈した場合。


Bの遺留分は,2分の1×2分の1=4分の1=500万円


Bは,遺留分減殺請求権の対象物を,具体的に特定して,


例えば,遺留分は500万円だから,建物の所有権100%を取得したと,


主張することはできません。



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2010年10月30日土曜日

遺留分減殺請求6

遺留分減殺請求権は,形成権と解されています。


遺留分に反する遺言は,遺留分に該当する部分について,


当然に無効とされるわけではなく,


遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使して,


初めて,効力が生じます。


なお,遺留分減殺請求権の行使は,裁判上の行使に限られず,


裁判外において,受贈者または受遺者に対し意思表示をすれば足ります。


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昭和41年07月14日最高裁判所第一小法廷判決民集 第20巻6号1183頁

判示事項
遺留分権利者の減殺請求権の性質。



裁判要旨
遺留分権利者の減殺請求権は形成権であると解すべきである。





最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=53955&hanreiKbn=01




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2010年10月29日金曜日

遺留分減殺請求5

遺留分減殺請求の対象となる被相続人の贈与は,


民法第千三十条により,


①相続開始前の一年間にしたものに限る贈与,


②1年より前の贈与でも,当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなした贈与


とされています。


しかし,贈与の相手方が,相続人の場合で,



その贈与が,民法903条1項の特別受益に該当する場合,


遺留分は最低の取り分とされているので,


1年より前の贈与であっても,


当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなした贈与という条件を無視します。


つまり,贈与の相手方が,相続人の場合で,


その贈与が,特別受益に該当する場合は,


何年前(何十年前)の贈与であっても,


原則として,遺留分減殺請求の対象の贈与として加えるということです。


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平成10年03月24日最高裁判所第三小法廷判決民集 第52巻2号433頁

判示事項
民法九〇三条一項の定める相続人に対する贈与と遺留分減殺の対象


裁判要旨
民法九〇三条一項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、同法一〇三〇条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となる。


最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52811&hanreiKbn=01


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2010年10月28日木曜日

遺留分減殺請求4

遺留分減殺請求権は,



遺留分権利者のみが行使できます(行使上の一身専属権)。



したがって,遺留分権利者の債権者などの第三者は,



遺留分権利者に代わって,遺留分減殺請求権を行使できません。



ただし,遺留分権利者が遺留分減殺請求権を第三者に譲渡するなど,



権利行使の確定的意思を有することを外部に表明した場合は,



例外的に,その第三者も遺留分減殺請求権を行使できます。



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平成13年11月22日最高裁判所第一小法廷判決民集 第55巻6号1033頁
判示事項
遺留分減殺請求権を債権者代位の目的とすることの可否
裁判要旨
遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,これを第三者に譲渡するなど,権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き,債権者代位の目的とすることができない。



最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52231&hanreiKbn=01


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2010年10月27日水曜日

遺留分減殺請求3

遺留分を有する相続人は,



配偶者,直系卑属(子ども,孫),直系尊属(父母,祖父母)です。



配偶者の遺留分は,法定相続分の2分の1です。



直系卑属の遺留分は,法定相続分の2分の1です。



直系尊属の遺留分は,



 ①直系尊属のみが相続人になる場合は,法定相続分の3分の1です。



 ②直系尊属と配偶者が相続人になる場合は,法定相続分の2分の1です。





*遺留分を有するのは,相続人ですので,



直系尊属が相続人にならない場合(例:直系卑属がいる)は,



直系尊属に遺留分はありません。





*兄弟姉妹は,相続人であっても,遺留分はありません。



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2010年10月26日火曜日

死後離縁2

死後離縁は,家庭裁判所の許可を得たうえで,

市町村役場に届け出ることによって,効力が生じます。

死後離縁の許可の申立人は,生存している養子または養親に限られます。

申立て先の家庭裁判所は,申立人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所は,死後離縁の申立てがあれば,

原則として,許可をしているようです。

ただし,養子が,養親の死亡により相続財産を相続したが,

養親の親族の扶養を免れようとする場合,

死亡した養子に,養子縁組後に出生した未成熟の子どもがいて,

その子の福祉に考慮する必要がある場合などは,

具体的な事情を考慮して,許可の判断をしています。

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2010年10月24日日曜日

投資信託の相続

投資信託の受益権を共同相続した相続人の一部が,

投資信託の受益権は,金銭債権であり,可分債権だから,

相続開始と同時に,法律上当然に,

各共同相続人が,相続分に応じて分割して取得するとして,

証券会社にその支払いを求めた事案です。



福岡高等裁判所 平成22年2月17日判決(確定)によりますと,

①投資信託の受益権は,性質上不可分債権であること

②投資信託の解約請求や買戻請求は,投資信託の受益権の処分=共有物の変更に該当すること

③投資信託の約款に,単独での投資信託の解約請求や買戻請求を認める規定がないこと


以上から,

投資信託を相続した共同相続人の一部からの投資信託を解約し,

相続分に応じた解約金の支払いを認めませんでした。

つまり,本判決によると,投資信託については,共同相続人全員が同意しないと,

投資信託を解約し,解約金を請求できないということです。

*多くの証券会社は,上記判決のとおり,共同相続人全員の同意を必要としているようです。

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2010年10月22日金曜日

認知,婚姻,離婚,養子縁組,離縁の不受理の申出

本人に無断で

認知,婚姻,離婚,養子縁組,離縁の届け出が

なされる可能性がある場合,

あらかじめ,本籍地の市区町村長に対し,

不受理の申出をすることができます。

申出自体は,本籍地以外の市区町村に対しても,おこなうことができます。

ただし,原則として,市区町村の窓口に本人が出頭しなければなりません。

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2010年10月12日火曜日

死亡保険金と特別受益2

死亡保険金は,原則として,特別受益の対象にならないと判断した最高裁判例です。

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事件名
遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
裁判年月日 平成16年10月29日 最高裁判所第二小法廷 決定

裁判要旨

被相続人を保険契約者及び被保険者とし,

共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,

民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,

保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,

保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。

最高裁判所HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52421&hanreiKbn=01

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生命保険金と特別受益

生命保険金は,相続財産に含まれません。

生命保険契約に基づいて,受取人として指定された人が,

生命保険契約の効果として当然に生命保険金請求権を取得するからです。

死亡した保険契約者または被保険者から

相続により承継取得するわけではないからです。

その結果,原則として死亡保険金は,民法903条の特別受益にも該当しません。

つまり,死亡保険金の受取人である相続人は,

相続財産に対して,法定相続分から死亡保険金を控除することなく,

法定相続分の100%をもらうことができます。

(例)

相続財産3000万円の預貯金,生命保険金1000万円,相続人は子ABCの3人,

Aが生命保険金の受取人。

この場合,Aは,預貯金の3分の1である1000万円と生命保険金1000万円の合計2000万円を取得できます。

*ただし,死亡保険金の受取人である相続人と他の共同相続人との間に生じる不公平が

民法903条の趣旨に照らして到底是認できないほどに著しいものである

評価すべき特段の事情が存する場合には,

同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象になことがあります。
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内縁関係の死亡保険金



当事務所(司法書士・行政書士・社会保険労務士)では,
内縁の配偶者死亡による遺族年金の請求,未支給年金の請求,生命保険金請求の手続きの書類作成を承っています。


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たとえば,内縁の夫の死亡保険金の受取人が,内縁の妻の場合。



内縁の妻が,保険会社に死亡保険金を請求する際,死亡診断書が必要になります。


しかし,死亡した内縁の夫の相続人が同意しないため,医師が死亡診断書を発行してくれないことがあります。



このような場合,内縁の妻は,市役所に死亡届書の記載事項証明書の発行を請求できます。ただし,市役所は簡単には応じてくれないようです。

遺族年金5

1 死亡した内縁の夫が,老齢厚生年金を受給していた場合,


 原則として,内縁の妻には,遺族厚生年金が支給されます。


 *内縁の夫に,別居している戸籍上の妻がいる場合は,


 戸籍上の妻に支給される場合もあります。




2 遺族厚生年金を請求する場合,医師の死亡診断書が必要になります。


 内縁の妻が,医師に死亡診断書の発行を請求した場合でも,


 医師は,内縁の夫の相続人の同意がなければ死亡診断書を発行してくれません。


 内縁の妻と内縁の夫の相続人との関係が悪い場合,


 内縁の夫の相続人は,死亡診断書の発行に同意しないことがあります。








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2010年10月10日日曜日

遺族年金2

遺族年金(遺族基礎年金,遺族厚生年金)は,受給要件が複雑です。

とくに,再婚の場合は複雑になります。

(例)A(会社員,Bの夫),B(Aの妻,Cの母),C(Aの連れ子)が,同居していた場合で,

Aが死亡した。

妻Bに遺族基礎年金及び遺族厚生年金が支給される可能性があります。

妻Bは,亡Aの連れ子Cと生計を同じくする限り,

妻Bに対し,遺族基礎年金および遺族厚生年金が支給される可能性があります。

もし,亡Aの連れ子Cを,亡Aの前妻Dが引き取った場合,

①妻Bの遺族基礎年金の受給権は失権し,妻Bに遺族基礎年金は支給されません。

②妻Bの遺族厚生年金は,

連れ子Cが18歳の3月31日を経過するまでは,遺族厚生年金は支給停止。

→連れ子Cに対し,18歳の3月31日まで遺族厚生年金を支給します。

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2010年10月7日木曜日

遺族年金4

遺族年金(遺族基礎年金,遺族厚生年金)は,受給要件が複雑です。


とくに,再婚の場合は複雑になります。


(例)


A(会社員,Bの夫),B(Aの妻)が,同居していた場合で,


Aが死亡した。

ただし,Aには離婚した前妻C,Cが引き取った子Dがいる。

この場合,

①妻Bは遺族基礎年金の受給権は取得しないので,遺族基礎年金はもらえない。

②妻Bは遺族厚生年金の受給権は取得するが,

子Dが18歳の3月31日を経過するまでは,遺族厚生年金は支給停止。

→子Dに対し,Aが仕送りをしており,AとDとの間に生計維持関係が認められると,Dに対し18歳の3月31日まで遺族厚生年金を支給します。


③子Dは遺族基礎年金をもらう権利を取得するが,

亡Aと離婚した母Cと同居しているので,遺族基礎年金は支給停止。


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遺族年金1

遺族年金は,ある人が死亡した場合に遺族に支給される年金です。

ただし,保険料納付要件や年齢要件などの要件を満たす必要があります。

1:死亡したのが自営業者の場合は,

遺族基礎年金が支給される可能性があります。

2:死亡したのが会社員の場合は,

遺族基礎年金および遺族厚生年金が支給される可能性があります。


*会社員の場合,遺族基礎年金のみならず,遺族厚生年金も支給されますので,

遺族に対する保障は手厚いことになります。


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遺族年金3

遺族年金(遺族基礎年金,遺族厚生年金)は,受給要件が複雑です。


とくに,再婚の場合は複雑になります。


(例)


A(会社員,Bの夫),B(Aの妻,Cの母),C(Bの連れ子)が,同居していた場合で,


Aが死亡した。



1:AとCが養子縁組をしていた場合は,


妻Bに遺族基礎年金及び遺族厚生年金が支給される可能性があります。


2:養子縁組をしていない場合,


 ⅰだれも遺族基礎年金をもらえません。


 ただし,妻Bは寡婦年金または死亡一時金が支給される可能性があります。


 ⅱ遺族厚生年金が,妻Bに支給される可能性があります。



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