2015年12月25日金曜日

混同を原因とする抵当権抹消登記の登記義務者



登記研究814号(平成27年12月号)の質疑応答【7972】によりますと,


「抵当権者が抵当不動産の所有権を取得し,所有権の移転の登記後に死亡した場合には,混同による抵当権の抹消の登記の申請における登記義務者は,当該抵当権者の相続人全員である。


なお,質疑応答4617(登記研究252号67頁)の取扱いは,変更されたものと了知願います。」


この質疑応答は,抵当権の事案ですが,抵当権以外の権利の混同抹消にも影響をあたえることになるでしょう。


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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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2015年12月4日金曜日

混同と権利混同(抹消原因)



(1)所有権移転請求権仮登記の抹消及び抵当権の抹消に関する登記研究の質疑応答を読む限り,


「混同」と「権利混同」の用語は,同義語として使用されているようです。


先日,札幌法務局へ所有権移転請求権仮登記の抹消を年月日権利混同で申請したところ,年月日混同で登記されていました。




(2)ところが,不動産登記記録例について(通達)(平成21年2月20日法務省民二第500号) を見ると,


六 抵当権の登記の抹消 3 権利の混同 には,


権利の混同というタイトルにもかかわらず,「原因 平成年月日混同」 と記録されています。


一 所有権に関する仮登記 13 仮登記義務者の一人が仮登記された移転請求権の一部移転を受けた場合の権利混同による登記の目的の変更の登記 には,


タイトルどおり,「原因 平成年月日共有者中乙某持分について権利混同」 と記載されています。


「混同と権利混同」の用語が区別されているようです。




(3)登記研究784号 平成25年6月号 122頁 実務の視点によりますと,


抵当権抹消の登記原因について,


混同を使用する場合と権利混同を使用する場合の各質疑応答が例示されており,質疑応答には用語の統一性がありません。


しかし,その解説文である実務の視点の本文中には,意識的に「混同」という用語のみが使用されています。




(4)登記研究761号(平成23年7月号)の質疑応答の質問者は,所有権移転請求権仮登記の抹消について,「混同」を登記原因とすべきと考えますが,


と質問しており,「権利混同」ではないと考えているようです。


(5)香川保一 元最高裁判所裁判官は,新不動産登記法逐条解説(二) 1032頁<テイハン>において,所有権移転請求権仮登記の仮登記権利者が,不動産の所有権を取得して所有権移転登記を受けた場合は,民法179条の物権混同により,所有権移転登記請求権は消滅すると記載しています。(なお,最判昭和57年3月25日・民集36巻3号446頁に注意
最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54251


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権利混同を原因とする所有権移転請求権仮登記抹消登記の添付書類(登研531号)

《添付書面(登記済証)》《添付書面(印鑑証明書)》《仮登記抹消》

 ○要旨 A所有不動産に対して、Bのために所有権移転請求権仮登記がされた後にBがAを相続した場合の当該仮登記の抹消登記申請は、権利混同を原因としてBの単独申請によることとなるが、登記済証及び印鑑証明書を添付することを要する。

 ▽問 A所有不動産に対して、Bのために所有権移転請求権保全仮登記が設定された後にBがAを相続した場合の当該仮登記の抹消登記申請は、権利混同を原因としてBの単独申請によることとなるが、この場合、登記済証及び印鑑証明書の添付を要するものと考えますが、要しないとする質疑応答〔登研374号83頁(5603)〕もあり、いささか疑義がありますのでお伺いします。

 ◇答 御意見のとおりと考えます。

 
混同を登記原因として所有権移転請求権仮登記の抹消登記を申請する場合における印鑑証明書の添付の要否(登研529号)

《添付書面(印鑑証明書)》《仮登記抹消》

 ○要旨 混同を登記原因とする所有権移転請求権仮登記の抹消登記を申請する場合において、登記権利者と登記義務者が同一人のときでも、登記義務者の印鑑証明書の添付を要する。

 ▽問 所有権移転請求権仮登記を混同を登記原因として抹消登記申請する場合には、登記権利者兼登記義務者たる仮登記名義人の印鑑証明書の添付は必要ないものと考えますが、いかがでしょうか。

 ◇答 必要と考えます。

 

仮登記の抹消と申請人(登研360号)

《仮登記抹消》

 ○要旨 1 A所有の不動産に対し、Bが所有権移転請求権保全の仮登記をした後、BがAを相続した場合の仮登記の抹消原因は「権利混同」であり、Bの単独申請による。

2 A所有の不動産に対し、Bが所有権移転請求権保全の仮登記をした後、Bが他の原因により所有権移転の登記を受けた場合の仮登記の抹消原因は「権利混同」であり、Bの単独申請による。

 ▽問 (1) A所有の不動産に対し、Bが所有権移転請求権保全の仮登記をした後、BがAを相続し当該不動産の相続による所有権移転の登記をした場合の、右の仮登記を抹消する登記原因は「権利混同」となるか。また登記申請はBの単独申請となるか。

(2) A所有の不動産に対し、Bが「売買予約」を原因として所有権移転請求権保全の仮登記をした後、Bが「贈与」を原因として所有権移転の登記を受けた場合の、右の仮登記を抹消する登記原因は「権利混同」となるか。また登記申請は単独となるか。

 ◇答 いずれも御意見のとおりと考えます。なお、登研65号30頁(1247)、同162号48頁(3454)参照。


仮登記名義人が仮登記義務者を相続した場合の仮登記抹消の登記原因の記載(登研65号)

《仮登記抹消》

 ○要旨 甲が乙所有不動産につき、所有権移転請求権保全の仮登記をしたまま死亡した場合において、乙が甲を相続した場合の当該仮登記の抹消の登記原因は、「何年何月何日(被相続人甲死亡の日)権利混同」と記載する。

 ▽問 乙(甲の長男)所有不動産に対し、甲(乙の父)は所有権移転請求権保全の仮登記をなしたるところ、昭和15年死亡し乙はその家督相続をしたが今回その仮登記を抹消せんとするのですがその登記原因の書き方が分りませんので、御教示願います。なお、その根拠となる通牒でもありますなら併せて御示し下さい。

 ◇答 「何年何月何日(被相続人死亡の日)権利混同」と記載すること。なお、これについては、民事局長の通達等はありません。







抵当権が混同によって消滅する場合(登研520号)


《抵当権抹消》
 ○要旨 抵当権者が抵当権の目的である不動産を取得した場合であっても、後順位抵当権が消滅しない限り、抵当権は混同により消滅せず、その後、後順位抵当権が消滅したときに初めて消滅する。
 ▽問 ある不動産につき設定登記を経由した抵当権者が、その後当該不動産の所有権を取得した場合には、後順位に抵当権がある場合でも「年月日混同」を登記原因としてその登記の抹消ができるものと考えますが、いかがでしょうか。
 ◇答 消極に解します。なお、後順位抵当権がその後に消滅した場合には、その時に混同により消滅するものと考えます(民法179条1項ただし書参照)。
 


18

権利混同による抵当権の抹消登記と登記義務者の権利に関する登記済証の要否(登研130号)

《添付書面(登記済証)》《抵当権抹消》


 ○要旨 抵当権者が抵当不動産の所有権を取得し、更に第三者に売買した後右抵当権登記を権利混同を原因として新所有者と共同して抹消する場合、登記義務者の権利に関する登記済証の添付を要する。


 ▽問 抵当権者が売買により抵当不動産の所有権取得の登記をした後、更に売買によりその不動産の所有権を第三者に移転し、その登記をした場合、権利混同を登記原因として現在の所有者と抵当権者との共同申請による抵当権の抹消登記についても、登記義務者の権利に関する登記済証の提出を要すると考えますが、いかがでしょうか。もし要するものとすれば、当該登記済証を滅失した場合は、法44条、細則46条の規定は勿論、細則42条ノ2の規定の適用もありますか。

 
◇答 前段、後段いずれも御意見のとおり。



混同により消滅した抵当権設定登記のある不動産を第三者に移転した場合の抵当権抹消の登記原因(登研20号)


《抵当権抹消》《申請書(記載)》《抹消登記(申請)》


 ○要旨 混同により消滅した抵当権設定の登記のある不動産を第三者に移転した場合の抵当権抹消の登記原因は、混同である。


 ▽問 甲 混同による抵当権の抹消登記の申請をなさずして、当該不動産の所有権を乙に移転した後甲及び乙双方においてこれが抵当権抹消の登記申請をする場合、その登記原因につき混同によるを相当とする旨登研3号20頁(20)で回答せられてありますところ、これに関して左の反対説がありますがいかがでしょうか、御教示下さい。


 反対説 既に第三者たる乙に所有権を移転したるものなれば民法520条本文にいわゆる債権及び債務が同一人に帰したため権利が既に失われたものであって、かつ、新たに所有権を取得した第三者たる乙は抵当権抹消の登記義務を承継していないから同条本文の規定に該当しない。したがって、この場合は、むしろ同条ただし書の規定によるべきものであって、この場合に限り放棄を登記原因とするを相当とする。


 ◇答 登記原因は混同である。

(理由)民法520条は債権の混同の規定であり、本問の場合は物権の混同の規定である同法179条の規定の適用を受けるべきものであって、抵当権者甲がその不動産の所有権を取得した当時同条1項本文の規定により甲の抵当権は既に消滅したものであるから、その抵当権の抹消の登記の登記原因は混同であり、これは甲が乙に所有権を譲渡した後に登記の申請をする場合においても同様である。

なお、右179条1項ただし書の規定は、例えば、抵当権者がその権利の目的である不動産の所有権を取得した場合においてその不動産につき次順位の抵当権があるとき、地上権者がその権利の目的である不動産を取得した場合においてその地上権が抵当権の目的となっているとき等にも先順位の抵当権や地上権を混同により消滅させると、後順位の抵当権者が不当に利益したり、地上権の抵当権者が不当に不利益を受けたりすることとなるので、かかる場合には混同の規定の適用を排除したものであって、本問の場合がこれに該当しないことは勿論である。

 

23

混同により消滅する抵当権(登研15号)

《抵当権抹消》

 ○要旨 抵当権者が所有権者となっても、後順位抵当権が消滅しなければ、抵当権は混同により消滅せず、その後順位抵当権が消滅したときに始めて消滅する。

 ▽問 甲(1番抵当)と乙(2番抵当)のため抵当権設定登記のしてある不動産を、甲が売買によりその所有権を取得したときは、その後乙の抵当権の消滅の時に甲の抵当権は、権利混同によって消滅するか。

 ◇答 御意見のとおり。



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2015年12月1日火曜日

月報司法書士11月号



記事中に,10年以上前の六法を使用しているであろうために,条文の改正を見過ごしている部分を発見しました。


20年以上前の最高裁判決で類推適用が認められていたため,判例六法なら20年以上前のものでも,誤解に気づくことができた事案です。


この条文,なんかおかしいなぁとは思わなかったのか?,というのが本音です。


最新の六法による条文チェックは必須です(自戒をこめて)。


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