2012年12月18日火曜日

相続人への特定遺贈は,農地法の許可が不要。


平成24年12月14日,

農地法施行規則第15条第5号に,

「相続人に対する特定遺贈」が加えられたので,

相続人に対する農地の特定遺贈につき,

農地法の許可が不要になりました。


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2012年11月3日土曜日

保険契約の復活と自殺免責に関する下級審判例

東京高裁平成24年7月11日判決(金融・商事判例1399号8頁)

原告(被控訴人)は,死亡保険金請求権の譲受人
被告(控訴人)は,保険会社


本件保険契約には,

失効条項(保険料の払い込みがなければ,履行の催告なしに保険契約が失効する条項)があり,

いったんは,亡被保険者が保険料の支払いを怠ったので,本件失効条項により本件保険契約が失効しました。

その後,保険契約の復活条項により,本件保険契約は復活しましたが,

亡被保険者は,復活後2年以内に自殺しました。

保険会社は,自殺免責条項(責任開始期の属する日から2年以内の自殺は免責する条項)により,死亡保険金を支払いませんでした。

そこで,死亡保険金請求権を譲り受けた原告が,本件失効条項は消費者契約法10条に違反するとして,死亡保険金の支払いを求めて保険会社を提訴しました。

原審は,本件失効条項を消費者契約法10条により無効としましたが,

東京高裁は,原判決を取り消して,原告の請求を棄却しました。


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2012年11月2日金曜日

隠された脱税資金を追え!~国税査察官の仕事Ⅱ~(相続税の脱税事案です)

隠された脱税資金を追え!~国税査察官の仕事Ⅱ~(再生時間20分52秒

(*相続税の脱税事案です)

国税庁HP
http://www.nta.go.jp/webtaxtv/index.html


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2012年10月31日水曜日

相続人の中に養子がいるときの相続税

国税庁タックスアンサーから引用

No.4170 相続人の中に養子がいるとき

1 相続税の計算をする場合、次の4項目については、法定相続人の数を基に行います。


(1)  相続税の基礎控除額

(2)  生命保険金の非課税限度額

(3)  死亡退職金の非課税限度額

(4)  相続税の総額の計算

2 これらの計算をするときの法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、一定数に制限されています。

  この法定相続人の数に含める養子の数の制限について説明します。

(1)  被相続人に実の子供がいる場合

  一人までです。

(2)  被相続人に実の子供がいない場合

  二人までです。

  ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記(1)又は(2)の養子の数に含めることはできません。

3 なお、次のいずれに当てはまる人は、実の子供として取り扱われますので、すべて法定相続人の数に含まれます。

(1)  被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人

(2)  被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人

(3)  被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人

(4)  被相続人の実の子供、養子又は直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子供などに代わって相続人となった直系卑属。なお、直系卑属とは子供や孫のことです。

←(4)は代襲相続人などのことです。

(相法12、15、16、63、相令3の2、相基通15-2、63-1、63-2)


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2012年10月16日火曜日

相続時精算課税制度と不動産の贈与

Aが所有し,現在居住している不動産について,

相続時精算課税制度を利用して,

その不動産に同居している子Bに対し,

将来の相続紛争を心配して,その不動産を贈与した場合。

^^^^^^^^^^^^^^

確かに,Aの相続が発生したとき,

別居している子C,子Dとの関係で,

通常は,不動産の名義人である子Bがその不動産において有利な立場に立つことができます。(遺留分減殺請求をされる等の可能性はありますが。)

ところが,Aの相続発生前に,

その子Bが何かの原因で多額の借金を抱えた場合,

借金の担保としてその不動産が競売にかけられる可能性や

子Bがその不動産を売却する可能性があります。

その場合,Aは,その不動産から退去しなければならないことになります。

とくに,子Bが自営業をしている場合は,贈与時点では景気が良くても,

Aの相続発生前に,経営が悪化して,その不動産を失う可能性は十分にあります。

将来の相続紛争の防止よりも,Aが終の棲家を確保したい場合は,

居住しているその不動産を子Bに贈与してはいけません。


*親子が同居している不動産は,子に贈与するのは避けた方が無難です。

贈与する場合は,全部ではなく,持分の2分の1までにしましょう。


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相続時精算課税制度と税務署の人の雑感

先日,某所で税務署の人が相談者に相続時精算課税制度を勧めてました。

相談内容は,「相談者が子どもに2500万円以下の不動産を贈与したい。」というものでした。

贈与税・相続税のみの点でいうと,相続時精算課税制度を利用する価値はあるようと思えました。

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しかし,相続時精算課税制度の短所および贈与の短所である以下のことはまったく説明していませんでした。

①贈与の登録免許税は評価額の1000分の20であること(相続は1000分の4なので,5倍になる。)

②贈与は不動産取得税が課税されること(相続は無税),

③相続時精算課税制度の申出は撤回できないこと

④暦年110万円の贈与税の基礎控除が利用できないこと


*役人は,その説明によって自分の給料が増えるわけではないから

基本的に相談者から質問されたことにしか回答しません。

あとから相談者が損害を被ったとクレームをつけても,

証拠がないといわれたり(水掛け論),

そこまで説明する責任はなかったということで,

役人は免責されているのが,現状だと思います。


変なところで,お金をケチって損をしないように高額案件は,

専門家に依頼すべきだと思います。

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まぁ,贈与の登記自体は難しくないので,そのまま税務署の人の話しに飛びついて,

法務局の無料相談(法務局の人は,わざわざ贈与の登録免許税は相続の5倍である旨は説明しません。)で贈与の登記申請書を作成して,

贈与を原因として不動産の名義変更をしてしまえば,

相談者自身が,経済的に損をしたことに気づくことはないので,

それはそれで,幸せのような気もしますが・・・



*贈与したことにより,将来の相続紛争の防止に役立ったと考えれば,

あえて贈与を選択することも間違えではありません。

(費用対効果で考えると,相続紛争で裁判になった場合,上記の税金よりも高い弁護士費用になることが多いでしょうし,解決まで時間がかかるからです。)

まぁ,贈与したからといって,絶対に相続紛争を防止できるわけでもないので難しいところではありますが・・・

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2012年9月25日火曜日

祭祀財産は差押禁止動産


下記の動産は,差押禁止動産ですので,強制執行の対象外になります。

①仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

=仏像,位牌,神体,神具,仏具,仏壇,経典,墓石,書像,写真像等の礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物


 ②債務者に必要な系譜

=親族,恩人等の債務者と特殊な関係にある者の系譜 


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(差押禁止動産)


第百三十一条  次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

(略)

八  仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

九  債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類

(略)

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2012年9月15日土曜日

登記申請に関する調書判決と相続を証する書面の添付

登記研究774号136頁  カウンター相談236 参照


本件口頭弁論調書(判決)の正本を提供して,原告Xが不動産登記法第63条第1項の規定により確定判決による登記の申請をするには,

別途,被告Y以外に亡Aの相続人がいないことを証する情報として,戸籍謄本等を提供する必要があるとした事例。


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2012年9月3日月曜日

売買契約中に売主が死亡した場合の相続税の課税財産

土地等の売買契約中に売主に相続が開始した場合における相続税の課税財産は、相続開始後に相続人が当該売買契約を解除した場合であっても、売買残代金請求権とするのが相当であるとした事例


相続税の納税義務は、相続による財産を取得した時、すなわち、相続開始の時に成立するものと解される。

そして、相続により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とすることとされており、相続により取得した財産の価額は、原則として、当該財産の取得の時における時価によることとされていることから、相続開始後の当該財産に生じた事情は、制度の上の措置がなされている場合など、これを考慮すべき特段の事情と認められない限り考慮されないこととなる。

また、相続開始時に売買契約が締結されている土地等について、相続税の課税対象となる財産を判定するに当たっては、相続開始の時において、売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認められるか否かの観点から判定するのが相当と解される。

そうすると、このようにして判定した相続税の課税対象となる財産について、相続開始後に何らかの事情が生じたとしても、相続開始の時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情でない限り、その事情は考慮されるものではないと解される。

 本件売買契約の各当事者は、本件売買契約の実現に向け、本件売買契約書に定められた各条項を誠実に履行し、本件相続の開始時において、本件各土地建物の引渡予定日及び売買残代金の決済予定日の決定していたことが認められる。

このように、本件相続の開始時において、本件売買契約が履行されることが確実であると認められるような状況下にあっては、本件各土地建物の所有権が本件被相続人に残っているとしても、もはやその実質は本件売買契約に係る売買残代金請求権を確保するための機能を有するにすぎないものといえ、請求人らが相続した本件各土地建物は、独立して相続税の課税財産を構成しないというべきである。

そして、請求人らが本件相続の開始後に行った本件売買契約の解除は、本件被相続人から本件売買契約に係る契約上の地位を承継した請求人らの意思によるものであり、当該解除をもって、相続開始時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情ということはできないから、本件相続の開始時において、売買残代金請求権は確定的に本件被相続人に帰属していると認めるのが相当である。

 そうすると、本件相続に係る相続税の課税財産とすべき財産は、本件売買契約に係る売買残代金請求権である。

平成21年9月16日裁決
裁決事例集 No.78 - 419頁

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2012年8月25日土曜日

遺言の無効に関する判例

事件番号 昭和61(オ)946 事件名 遺言無効確認等

 裁判年月日 昭和61年11月20日

法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決

 結果 棄却

 民集 第40巻7号1167頁 

 判示事項

 不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例


裁判要旨 

妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の三分の一を包括遺贈した場合であつても、

右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失つた状態のもとで右の関係が約六年間継続したのちに、

不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、

当該遺言において相続人である妻子も遺産の各三分の一を取得するものとされていて、

右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52732&hanreiKbn=02

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2012年8月21日火曜日

(札幌)相続放棄者の相続財産管理責任



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*上手に相続放棄の申述をすることで,相続放棄者の相続財産管理責任を免れることができる場合があります。

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相続を放棄した者は,被相続人の権利義務を承継しませんが,

相続財産の管理責任を負っています。

①相続の放棄前は,

民法918条により,自己の財産におけるのと同一の注意義務をもって,相続財産を管理しなければなりません。

②相続の放棄後は,

民法940条により,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意義務をもって,相続財産を管理しなければなりません。


したがって,相続放棄によって相続人が不存在となる場合は,

相続放棄をした者は,相続財産管理人が選任されて職務を始めることができるまで相続財産の管理義務を負っていることになります。

なお,相続放棄をした者は,利害関係人として相続財産管理人の選任の申立てをすることができると解されています。
したがって,相続放棄をした者が相続財産の管理責任を免れたい場合は,家庭裁判所に対し相続財産管理人の選任の申し立てをする必要があります。
相続財産管理人選任の申し立ての際は,予納金を納める必要があります。予納金の金額は,相続財産の内容によって異なりますが,50万円から100万円ぐらいです。
予納金は,相続財産を売却できた場合には,売却代金から回収できますが,売却できない場合には,予納金を回収することができません。その場合は,相続財産の管理責任を免れるのと引き替えに,事実上,申立人が予納金を負担するという関係になります。

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(相続財産の管理)


民法第九百十八条  相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。


2  家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。

3  第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

(相続の放棄をした者による管理)


民法第九百四十条  相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

2  第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

2012年8月16日木曜日

相続を原因とする仮登記

相続を原因とする仮登記の申請は却下されます。


相続登記は,単独申請であり登記義務者を考慮する余地がなく,

遺産分割協議がすでに成立している場合は,


①遺産分割協議書が存在する場合は,証書真否確認の訴えに基づく,

②遺産分割協議書が存在しない場合は,所有権確認の訴えに基づく,


判決書を相続を証する書面の一部として添付して,相続登記を申請することになります。



<参照>

1:昭和57年2月12日付け民三第1259号民事局第三課長回答

2:登記研究773号137ページ


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2012年8月1日水曜日

危急時遺言が無効になる場合

①老齢で遺言確認制度について不知であったというだけでは,

特別の事情には該当せず,

危急時遺言の日から20日経過後の遺言確認の申立てが却下された事例。

(札幌高決昭55年3月10日家月32・7・48)

*遺言確認の審判を受けていないので,危急時遺言は無効になります。



②危急時遺言に基づき遺言確認の申立てをしたところ,

遺言者と家庭裁判所の調査官が面談し,

その結果,面談時には遺言者が普通の方式による遺言をできるようになっていたとして,

遺言者の6ヵ月以上の生存により,危急時遺言が無効になった事例。

(福岡高判平19年1月26日判タ1242・281)


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遺言書の開封と遺言の有効性

公正証書以外の遺言(自筆証書遺言,秘密証書遺言など)が,

封筒などに入れられていた場合は,

家庭裁判所の検認の際に開封しますので,

勝手に開封してはいけません。

勝手に開封されたため,遺言が無効になるという場合もあります。

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①自筆証書遺言の本文には押印がなかったが,

自筆証書遺言の本文を入れた封筒の封じ目には,押印(いわゆる封印)があったために,

押印の要件が欠けることはなく,本件自筆証書遺言は有効とされた事例。

(最判平6年6月24日家月47・3・60)



②自筆証書遺言の本文には署名押印はなく,

自筆証書遺言の本文を入れた封筒に署名押印はあったが,

検認時において,すでに開封されており,

自筆証書遺言の本文と封筒が一体のものとして作成されたと認めることはできない以上,遺言者の署名押印を欠くとして,本件自筆証書遺言は無効とされた事例

(東京高判平18年10月25日判時1955・41)


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2012年7月31日火曜日

債権者が相続放棄に納得できない場合(札幌) 

当事務所(司法書士・行政書士・社会保険労務士)では,債務者の相続人の相続放棄に納得できない債権者のご相談・ご依頼を受け付けています。


140万円以内の金額の場合は,司法書士が訴訟代理人になることができます。


家賃滞納をしていた賃借人が死亡し,相続人が相続放棄をしたが,納得できない。滞納家賃や原状回復費用を支払ってほしい。


お金を貸していた知人が死亡したが,相続人が相続放棄をした。なんとか相続人から借金を返済して欲しい。


債務者の相続人は,相続放棄をしたにもかかわらず,死亡した債務者が名義の建物に居住し続けている,死亡した債務者名義の自動車にそのまま乗っているので,納得できない。


借金が返済できない場合は,家を売って返済すると言っていたのに,債務者の死亡直前に債務者から相続人に名義を変えている。納得できない。財産の隠匿だ。


相続放棄をした相続人が,債務者の死亡後に自分の名義に土地・建物の名義を変えているようだ。財産の隠匿だ。


札幌市中央区 
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民法939条により,相続の放棄をした者は,

初めから相続人にならなかったものとみなされるので,

被相続人の債務(借金など)を承継しないことになります。



ところで,一般の方には理解しがたいと思いますが,家庭裁判所による相続放棄の受理審判がなされても,
債権者の債権の請求を無効にする効力が生じるわけではありません。


なぜなら,家庭裁判所は,相続放棄が無効となる理由(法定単純承認の事由)を厳格に審査しないからです。
実際,家庭裁判所は被相続人の死亡から3ヵ月以内に相続放棄の申述があった場合には,ほぼ無条件で受理の審判(相続放棄を受け付けましたという判断)を出しています。
また,仮に,相続放棄の受理審判後に,相続放棄をした相続人が債務者の相続財産を自分の名義に変えたり,売却したりしても,家庭裁判所が調査をして相続放棄の無効を認定するというようなことはありません。



そのため,債権者が積極的に相続放棄の無効を主張していく必要があります。
法律上,債権者は,(相続放棄をした)相続人に対して当該債権に基づく民事訴訟を提起して,相続放棄の無効(法定単純承認の事由など)を主張することができることになっています。


当該訴訟で,相続人が相続放棄の受理審判があったこと主張しても,債権者が法定単純承認の事由があったことの立証に成功すれば,相続放棄は無効ということになります。


相続放棄をした相続人が,相続放棄の受理審判により,被相続人の債務は相続しないことが確定したと勘違いし,当該民事訴訟の提起を無視した場合は,擬制自白によって債権者が勝訴します。


相続放棄をした相続人が,当該訴訟の判決正本を受け取った翌日から2週間以内に控訴しない場合は,判決が確定します。


当該勝訴判決が確定した場合は,
債権者は,相続放棄は無効であり被相続人の債務(借金など)を相続したとして,相続人に対して強制執行をすることができます。


相続放棄をした相続人が,当該勝訴判決に対して,再審の訴えを提起することは無理だと思います(民事訴訟法第338条第1項ただし書き)。


強制執行に対する不服申し立ての方法として,請求異議訴訟があります。
限定承認と相続放棄は手続きが異なるので,何ともいえませんが(限定承認の手続きは2ヵ月をくだらない官報公告と知れたる債権者には催告をする必要がありますが,相続放棄の手続きは債権者に対して官報公告や催告は不要です),


限定承認に関する大判昭15年2月3日:債権者が債務者たる相続人から限定承認の事実を通知され,これを了知しながら無留保の請求をなし,債務者も当該事実を主張しなかったため,無留保判決がなされた場合,当該判決を執行することは不法であり請求異議の原因となる,という大審院判例があります。


当該大審院判例を敷衍すると,
相続放棄をした相続人が,あらかじめ訴訟提起をした債権者に対して,相続放棄をした旨を通知していた場合は,
相続放棄をした相続人が,債権者の訴訟提起を無視したため,債権者勝訴判決が確定し,強制執行を受けた場合は,請求異議訴訟を提起できる可能性があります。


ただし,たとえ請求異議訴訟が可能であっても,債権者が法定単純承認事由の立証に成功した場合は,やはり,相続放棄は無効になるので,強制執行は適法ということになります。




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以下は,破産管財人が相続放棄の無効を認定した事例

(登記情報609号47ページ)

1:破産申立ての予定者は,被相続人の不動産を共同相続していたが,

他の共同相続人が単独相続する内容の遺産分割協議が成立していたので,

破産申立ての予定者が相続した財産はないものとして破産を申し立てた。


2:ところが,破産裁判所から不動産の名義が被相続人の名義のままであり,

遺産分割は登記が対抗要件なので,破産申立人は不動産に対し共有持分を有していると指摘された。

3:そこで,破産申立人は相続開始から約8年間経過していたが,

破産裁判所から指摘された時点から熟慮期間が進行するとして相続放棄を申述したところ,受理審判がなされた。

4:ところが,選任された破産管財人は,相続放棄を無効と認定した。


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遺言能力が疑われる遺言への対応策

推定相続人の一部などが,

遺言者の判断能力(遺言能力)の減退に乗じて,

自己に有利な内容の遺言書を作成させることがあります。

そのような場合は,

遺言者に対する成年後見の申立てによって,

対応することが考えられます。


①遺言能力を判定する証拠になる。

遺言書の作成後,成年後見の開始の審判がなされた場合は,

通常は,その時点における成年被後見人(=遺言者)の判断能力には,問題があることになります。

遺言書の作成時期が,成年後見開始の審判に接着していた場合は,

その遺言書作成当時の遺言者の判断能力に疑問を呈する証拠となりえます。


②遺言の作成を制限することができる。

成年後見開始の審判後に作成された遺言ですが,

民法973条により,成年被後見人の遺言については原則無効です。

ただし,成年被後見人が,遺言能力を回復した場合は遺言書を作成することができます。

なお,この場合,医師二人以上の立会いが必要とされ,かつ,医師も遺言書に署名押印をする必要があるので,

推定相続人の都合のいいように,遺言書を作成することはできません。

つまり,成年後見開始の審判後に,

はじめて遺言書を作成したり,遺言書を書き直したりするということは,

非常に難しくなるということです。

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2012年7月22日日曜日

葬式費用と預貯金口座の凍結

◇ メール相談を承ります:相談料5250円(前払い):3回まで回答いたします。相談内容を下記のメールアドレスまで送信ください。 soudann@ishihara-shihou-gyosei.com 

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金融機関は,被相続人の死亡を確認できた場合は,

相続人等の払い戻しを防止するため預貯金口座を凍結します。

その後の預貯金口座の払い戻しには,

被相続人の除籍謄本,相続人全員を証明する戸籍謄本,相続人全員の印鑑証明書,相続人全員の実印押印の請求書などが必要になります。

(ただし,被相続人の葬式費用相当額については,金融機関によって取扱いが異なりますが,一部相続人からの払い戻し請求に応じているようです。)


よって,あらかじめ被相続人の葬式費用を準備するため,

相続人に対し,生前に金銭を贈与しておく方法が効果的です。

贈与税の基礎控除は,ひとり110万円なので,

相続人各自に100万円ぐらいを葬式費用の前渡しとして贈与します。

できれば,相続人全員に対し,相続人全員の前で,贈与するのがよいと思います。

ただし,現金手渡しではなく,相続人の口座に振り込む方が,金銭の授受が明らかになるので,良いと思います。

なお,可能であれば,贈与契約書を作成する方が無難です。

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2012年7月10日火曜日

遺言と戸籍謄本

遺言(できれば、公正証書遺言)が、あれば、


原則論として、相続関係書類(除籍・改製原戸籍・戸籍謄本,印鑑証明書など)を必要最小限にすることができます。


遺言がない場合で,

兄弟姉妹が相続人になる場合は,

被相続人および相続人である兄弟姉妹の戸籍は,当然として,

被相続人の直系卑属および直系尊属の戸籍も集めなければならず,

けっこうな時間と費用がかかることになります。


相続人である兄弟姉妹も,高齢者になっていることが多く,

すでにお亡くなりになっている場合,

戸籍を集めている最中に亡くなる場合や認知症を発症する場合もあります。


したがって,兄弟姉妹が相続人になるような場合は,

相続関係書類の収集が大変ですので,

専門家に依頼することをお勧めします。

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2012年6月29日金曜日

生命保険に関する判例20

 裁判年月日 平成24年03月16日  最高裁判所第二小法廷  判決

結果  破棄差戻し

 判示事項 

保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに生命保険契約が失効する旨を定める約款の条項の,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性



裁判要旨 

生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,

(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の間にも保険料支払債務の不履行が解消されない場合に,初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり,

(2)上記約款に,払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは,自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項が置かれており,

(3)保険会社が,保険契約の締結当時,上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているときは,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらない。


(反対意見がある。)

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82127&hanreiKbn=02

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2012年6月28日木曜日

遺産分割調停の対象となる相続財産

①遺産分割調停の対象となる財産は,以下のとおりです。

(1)不動産(農地も含む)

(2)有体動産

(3)現金

(4)不動産の賃借権

(5)ゴルフ会員権(会則等により,相続が認められている場合)

(6)株式



②遺産分割調停の対象とならない財産は,以下のとおりです。

(A)預貯金などの金銭債権(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)

(B)金銭債務(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。ただし,債権者には法定相続分と異なる分割内容を対抗することができません。)


(C)生命保険金(ただし,保険金受取人が被相続人の場合は遺産分割の対象になります。)

(D)死亡退職金・遺族給付金

(E)相続開始後に遺産から生じた果実(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)

(F)使用借権(借主が死亡すると,使用借権は消滅するから)

(G)不動産売却代金等の代償財産(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)

(H)営業権(老舗またはのれん)

(I)遺産の管理費用

(J)遺留分減殺請求権による取戻財産

(K)祭祀財産

(L)遺体・遺骨

(M)葬儀費用(相続人全員の合意がある場合は遺産分割の対象に含むことができます。)


*遺産分割調停では,相続人全員の合意があれば,柔軟な内容の遺産分割をすることができますが,

遺産分割審判の場合は裁判所が一方的に決定するので,

一概には言えませんが,

遺産分割調停が成立するように妥協した方が良い場合があります。

(例)遺産分割審判により,不動産について法定相続分で共有することになった場合,

共有状態を解消するには,

あらためて共有者全員(相続人全員)の共有物分割協議などが必要になってしまい,

財産を分けるという問題が解決しないからです。

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2012年6月27日水曜日

相続時精算課税制度の適用と贈与税の還付

(1)相続時精算課税制度の適用を受ける推定相続人につき,

納付済みの贈与税額が相続税額を超過する場合,超過部分は還付されます。


(2)相続時精算課税制度の適用を受けない推定相続人につき,

相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた場合,

贈与の価額を相続財産に加算して相続税が計算され,

納付済みの贈与税額は控除して不足分を納付することになります。

しかし,仮に贈与税額が相続税額を超過しても超過部分は還付されません。


相続開始前3年以内の贈与財産加算制度は,

贈与税と相続税が重複して課税されることに対する負担の調整制度であって,

納付した贈与税額を相続開始時において精算するという制度ではないからです

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法定相続分による相続登記と遺産分割による相続登記


(1)相続が発生した場合,

不動産について,遺産分割協議が成立していなくても,

相続人(相続人であれば誰でも可能)が申請人となり,

法定相続分による相続登記が可能です。

この登記は,暫定的な登記ですので,

その後,相続人全員で遺産分割協議をして,

相続財産を個別具体的に分割します。

遺産分割協議したことを登記簿に反映させるため,

あらためて遺産分割による相続登記をします。


(*法定相続分による相続登記を経由せず,

直接,遺産分割による相続登記をすることも可能です。

実務上は,こちらの方がほとんどです。)



(2)遺産分割による相続登記をする際に,

単独登記(所有者が一人)ではなく,

共有登記(所有者が複数)にする場合,

その後,共有状態を解消するには,

共有物分割協議が必要になります。

共有物分割による登記をする場合は,

不動産取得税および(相続登記よりも高い)登録免許税が課税されますし,

代償分割の場合は,譲渡所得税の問題が生じます。

よって,遺産分割協議の際は,

できるだけ単独登記になるように調整して,共有登記は避けるにしましょう。

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2012年6月20日水曜日

相続人廃除に関する下級審判例

東京高決平成23年5月9日家月63巻11号60頁

事案の概要

被相続人A,Aの養子Y(Aの妹Bの子),遺言執行者X

Aの遺言に基づき遺言執行者Xが,養子Yに対し,推定相続人廃除の申立てをしました。

東京高等裁判所は,

①YがAの療養看護を怠ったこと,

②AのBに対するマンションの明渡し訴訟に関して,

YはAに対し,訴訟を取り下げるよう迫ったこと,

③AのYに対する離縁訴訟に関して,

Yが訴訟の遅延行為をしたこと,

(Aは,離縁訴訟中に死亡したため,離縁訴訟は終結しました。)


などを総合的に考慮して,

Yの行為は,著しい非行に該当するとして,

Yを推定相続人から廃除するとの原審審判を支持し,

Yの抗告を棄却しました。



*推定相続人が養子の場合は,

実子に比較して廃除が認められやすいようです。


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2012年6月12日火曜日

(札幌)再転相続人が相続放棄したときの第1相続の相続権の行方


札幌,岩見沢,室蘭,小樽,滝川,浦河,岩内,夕張,静内の各家庭裁判所の相続放棄の申述書の作成


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甲が死亡(第1相続)し,


その相続人乙が熟慮期間内に相続の承認も放棄もしないまま死亡(第2相続)し,

その相続人丙らが第1相続と第2相続を両方を相続することを,

再転相続といいます。


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①第2相続について第1相続よりも先に相続放棄をした場合,

再転相続人丙は,乙の有する第1相続の相続権を相続しません。

その結果,乙の有する第1相続の相続権は,丙以外の乙の相続人が相続することになります。

乙の相続人全員が相続放棄をした場合は,

乙の有する第1相続の相続権について,乙の相続人不存在として手続を進めることになります。

重要なことは,乙の相続人全員が相続放棄をしたからといって,

乙の有している第1相続の相続権が遡って消滅することはないということです。

つまり,乙は甲の相続人ですので,

乙の相続人全員が相続放棄しても,乙が甲の相続人でなかったことにはなりません。

その結果,乙の有する第1相続の相続権は,乙が保持し続けることになります。


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(1)被相続人はA,相続人はAの兄弟姉妹Bおよび兄弟姉妹C。


Aの兄弟姉妹Cは熟慮期間内に死亡(第2相続)し,Cの子Dが再転相続人の事例


再転相続人Dが,第2相続ついて第1相続よりも先に放棄すると,

Dは,もはやCの有する第1相続の相続権を相続できません。

そうすると,次順位相続人であるCの兄弟姉妹Bが,兄弟姉妹としてCの有する第1相続の相続権を相続することになり,

結果として,BがAの相続財産を全部相続することができます。


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(2)被相続人はA,相続人はAの兄弟姉妹BとAの兄弟姉妹Cの子D

Aの兄弟姉妹CはAより先に死亡していたため,Cの子Dが代襲相続したが,

子Dは熟慮期間内に死亡し(第2相続),Dの子Eが再転相続人の事例


再転相続人Eが,第2相続について第1相続よりも先に放棄すると,

 Eは,もはやDの有する第1相続の相続権を相続できません。

 そして,死亡したDが第1相続の相続権を有し続けていることになります。

 Dの相続人全員が放棄すると,Dの相続人は不存在ということになります。

(1)の事例では,BはCの兄弟姉妹であったので,Cの相続人になることができました。

(2)の事例では,BはDの兄弟姉妹ではないので相続人になることができず,Dの有する第1相続の相続権については,相続人不存在として手続を進めることになります。



*参考:『登記研究771号175頁 カウンター相談233』




再転相続と相続放棄


相続放棄の申述書の作成
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(1)甲が死亡(第1相続)し,

その相続人乙が熟慮期間内に相続の承認も放棄もしないまま死亡(第2相続)し,

その相続人丙が第1相続と第2相続の両方を相続することを,

再転相続といいます。


(2)甲および乙の相続人丙(再転相続人)は,

甲(第1相続)および乙(第2相続)の相続について,

原則として,格別に相続の承認または放棄を選択をすることができます。


(3)ただし,相続放棄をするときは,

次のパターンによって法的結論が異なるので注意が必要です。

1:再転相続人丙が,第1相続を先に承認または放棄した場合

 再転相続人丙は,その後,第2相続のついて,

 承認または放棄をすることができます。

2:再転相続人丙が,第2相続を先に放棄した場合

 再転相続人丙は,その後,第1相続について,

 承認または放棄のいずれもすることができません。

 丙は,第2相続を承認して初めて,乙の有する甲の相続権を承継(相続)するからです。

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2012年5月30日水曜日

相続登記が却下された事例

「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書が,

一部しか提出されていないという事実関係の下で,

登記申請が却下され,

却下した処分行政庁の処分が適法とされた下級審判例。


名古屋地方裁判所 平成22年1月21日民事第9部判決 請求棄却(確定)

平成21年(行ウ)第32号 登記申請却下決定取消請求事件

登記情報607号100頁


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2012年5月16日水曜日

小規模宅地等の特例と被相続人の生活の本拠

小規模宅地等の特例の対象となる

「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」の判定は,

被相続人等が,

宅地上の建物に生活の本拠を置いていたかどうかによって判定されます。

したがって,

仮住まいを目的とする居住,

一時的な目的による居住,

小規模宅地等の特例を受けるためのみを目的とする居住,

主として趣味や保養を目的とする居住,
 というような場合については,

その宅地上の建物に生活の本拠を置いていたとは判定されません。

(1)被相続人が入院したことにより建物が空き家になっていた場合

①被相続人が退院したとすれば,いつでも生活できるように建物の維持管理(日常生活ができる状態であること=家財道具がそのままで,電話,電気,ガス,水道の契約を継続しているなど)が行われ,

かつ,

②被相続人の入院後,あらたに建物を他の者の居住の用その他の用に供していないのであれば,

被相続人が退院することなく,死亡した場合でも,

空き家となっていた期間の長短を問わず,

その空き家に被相続人が生活の本拠を置いていたと判定されます。


(2)被相続人が老人ホームに入所したことにより建物が空き家になった場合

①被相続人の身体または精神上の理由により介護を受ける必要があるため,老人ホームに入所し,

かつ,

②被相続人が退院後,いつでも生活できるように建物の維持管理(日常生活ができる状態であること=家財道具がそのままで,電話,電気,ガス,水道の契約を継続しているなど)が行われ,


かつ,
 ③被相続人の入院後,あらたに建物を他の者の居住の用その他の用に供していない,

④被相続人または親族が,老人ホームの所有権または終身利用権を取得したものでないのであれば,

被相続人が老人ホームを退所することなく,死亡した場合でも,


その空き家に被相続人が生活の本拠を置いていたと判定されます。



*なお,被相続人が有料老人ホームの終身利用権を取得したことその他の事情を総合考慮して,

生活の本拠が,空き家ではなく有料老人ホームにあるとして,

小規模宅地等の特例の適用が認められなかった裁決(平成20年10月2日裁決事例集NO.76 450頁)があります。


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平成25年6月3日(月)追記

相続税法の改正により,老人ホームの入所の場合の小規模宅地の特例の取扱いが変わる予定です。

①平成26年1月1日以降の相続又は遺贈に係る相続税については,

下記の要件も満たすことで,老人ホームに入所(終身利用権を取得)していても,小規模宅地の特例を受けることができるようになります。


1.被相続人が介護が必要なため入所したものであること。

2.当該家屋(老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋)が貸付け等の用途に供されていないこと。

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小規模宅地等の特例と贈与

小規模宅地等の特例が適用される財産は,

個人が相続または遺贈により取得した財産に限ります。

したがって,被相続人から贈与により取得した財産については,

小規模宅地等の特例が適用されません。

(1)相続開始前3年以内に被相続人から宅地の贈与を受けた場合でも,

小規模宅地等の特例は適用されません。

(2)相続時精算課税制度を利用した贈与についても,

小規模宅地等の特例は適用されません。


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2012年5月15日火曜日

居住用不動産の売却

居住用不動産(居住している家屋または,居住している家屋とともにその敷地)


を売却する場合で,

居住用不動産の譲渡所得の特別控除の要件を満たしていれば,

譲渡益のうち3000万円が控除されます。

したがって,売却価額が3000万円以下であれば,

譲渡所得による所得税は課税されないことになります。



特別控除の要件は,ほかにもありますが,

少なくとも居住用不動産を売却するときに,

売却者が,原則として居住用不動産の所有者かつ居住している人でなければなりません。

つまり,居住用不動産に相続が発生し,

相続人が居住用不動産を売却したが,

相続人自身がこの居住用不動産に居住していない場合には,

この特別控除は適用されません。


(1)売却者A(居住していた人)は売買契約を締結したが,

所有権移転登記および代金決済前に死亡した場合。

売買契約の締結により,売買契約の効力は生じているので,

相続人Bが売買の手続を完了させ,死亡した売却者Aの譲渡所得として申告すれば,

この特別控除は適用されます。

(2)居住用不動産を所有し,かつ,居住していたAが死亡し,

社宅に住んでいる相続人Bが居住用不動産を相続し,

Bは居住用不動産に居住することなく,売却した場合。

たとえ,AがBの扶養親族だったとしても,

Bは,現在社宅に住んでおり,所有者として居住用不動産に居住したことがないので,

この特別控除は適用されません。

(3)夫Aは居住用不動産甲を所有し,妻Bとともに居住していたが,

居住用不動産甲の買換えを前提に,先に居住用不動産乙を買い,妻Bとともに転居した。

居住用不動産甲を売却する前に,夫Aが死亡したため,

妻Bが居住用不動産甲と乙を相続し,居住用不動産甲を売却した場合。

妻Bは,かつて居住用不動産甲に住んでいたが,そのときは所有者ではなく,

現在は居住用不動産乙に居住しているから,

この特別控除は適用されません。

なお,夫Aが,居住用不動産甲から乙に転居し,「・・・これらの家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間・・・」に,

妻Bが相続した居住用不動産甲を売却したとしても,

この特別控除は適用されません。

「」の規定が適用されるのは,売却者が夫A自身の場合に限るからです。


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2012年5月4日金曜日

葬儀費用(葬式費用)の負担者の考え方



葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し,そのうち埋葬等の行為に要する費用は祭祀主催者が負担するものとされた事例


事件番号 平成23(ネ)968 事件名 貸金返還等請求控訴事件

裁判年月日 平成24年03月29日

 名古屋高等裁判所  民事第3部

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82234&hanreiKbn=04




【事案の概要】

Eが死亡した。相続人は子Aと子Cの2名。

EとA,Cは20年以上疎遠であったため,Eの兄弟であるBが葬祭・火葬・納骨などを行った。

Bが葬儀の喪主を務めた。

Bが,葬儀費用(葬祭費用,火葬費用,納骨代,お布施など)を立て替えたとして,

相続人A,Cを訴えた。

原審の名古屋地方裁判所が,Bの請求を棄却したので,Bが控訴。

(なお,Bが立て替えた①Eのアパートの賃貸借契約の解約に基づく原状回復費用,②Eの公共料金については,原審の名古屋地方裁判所が請求を認容しています。)




【名古屋高等裁判所の判断】

(1)葬儀費用とは,

①死者の追悼儀式に要する費用

および

②死者の埋葬等の行為に要する費用((死体検案,死亡届,死体の運搬,火葬に要する費用)

のこと。


(2)葬儀費用の負担については,

亡くなった者が,あらかじめ自分の葬儀の契約を締結しておらず,

かつ,

相続人や関係者との間で葬儀費用の負担について合意がない場合は,

①死者の追悼儀式に要する費用は,追悼儀式を主宰した者が負担する。

②死者の埋葬等の行為に要する費用は,祭祀承継者が負担する。



*追悼儀式を主宰した者とは,自己の責任と計算で,儀式を準備,手配,挙行した者のこと。

*祭祀主宰者とは,民法897条に定める者のこと。




(3)本件において,

①死者の追悼儀式に要する費用の負担者:

亡くなったEが,あらかじめ自分の葬儀の契約を締結しておらず,


かつ,

相続人A,Cや関係者との間で葬儀費用の負担について合意がないので,

追悼儀式を主宰したBが負担する。

(裁判の結果は,Bの請求は棄却)


②死者の埋葬等の行為に要する費用の負担者:

祭祀承継者につき,Eが指定しておらず,

かつ,

慣習上明白であるとは判断できないので,

家庭裁判所において,祭祀主宰者が定められる必要がある。

本件では,家庭裁判所において祭祀主宰者が定められていないので,

結局,死者の埋葬等の行為に要する費用を負担するべき者は定まらない(=負担者が不明の状態になっている)。

(裁判の結果は,Bの請求は棄却)


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葬儀費用(葬式費用)は葬儀主宰者が負担するとした下級審判例

◇ メール相談を承ります:相談料5250円(前払い):3回まで回答いたします。相談内容を下記のメールアドレスまで送信ください。 soudann@ishihara-shihou-gyosei.com 

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葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し,そのうち埋葬等の行為に要する費用は祭祀主催者が負担するものとされた事例



事件番号 平成23(ネ)968 事件名 貸金返還等請求控訴事件

 裁判年月日 平成24年03月29日

 名古屋高等裁判所  民事第3部

結果 棄却

判示事項の要旨 

葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し,そのうち埋葬等の行為に要する費用は祭祀主催者が負担するものとされた事例



最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82234&hanreiKbn=04

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2012年3月25日日曜日

在日韓国人の相続


(1)在日韓国人の不動産の相続の名義変更(相続登記)について

*登録免許税や郵便代などの実費は,別途必要になります。



不動産の相続の名義変更(登記申請書および遺産分割協議書の作成)の報酬は,6万円(消費税抜き)です。

*上記報酬は,親が居住していた不動産を子が相続する場合を想定しています。事件の難易度や不動産が日本各地にある場合などは,報酬は増額になります。

戸籍謄本の取得や翻訳の依頼がある場合は,別途報酬が必要になります。



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(2)韓国の戸籍謄本の取得と翻訳について

*郵便代や大使館の戸籍謄本発行費などの実費は,別途必要になります。



①大韓民国の身分登録簿の戸籍謄本・除籍謄本,家族関係登録簿の証明書(いわゆる韓国の戸籍謄本)の取得報酬は,

1通につき,2000円(消費税抜き)です。


大韓民国の身分登録簿の戸籍謄本・除籍謄本,家族関係登録簿の証明書(いわゆる韓国の戸籍謄本)の日本語への翻訳報酬は,

1ページごと(1通ではありません。)につき,1000円(消費税抜き)です。

*上記の翻訳報酬は,電算化(=コンピュータ化)されている場合に限ります。通常は,電算化(=コンピュータ化)されています。
←手書きの場合は除外するという趣旨です。
 手書きの場合は,1ページごと(1通ではありません。)につき,2000円(消費税抜き)です。

*身分登録簿の戸籍謄本・除籍謄本の場合,1通は,通常は複数ページとなります。家族関係登録簿の証明書の場合,1通は,通常は1ページとなっています。

*よって,家族関係登録簿の証明書の場合は,通常は1通あたり,1ページとなり,翻訳報酬は1000円です。

しかし,身分登録簿の戸籍謄本・除籍謄本の場合は,1通であっても,複数ページからなっており,翻訳報酬はページ数×1000円(手書きの場合2000円)となります。



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平成26年某月某日

祖父(名義人),祖母,父,おばの4人が死亡した韓国人の相続登記について,補正もなく無事完了しました。

代襲相続と兄弟姉妹の相続が含まれており,かつ,相続人に帰化者がいたため,慎重に戸籍の調査をしました。


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在日韓国人が死亡した場合に適用される法律は,

大韓民国民法です。

大韓民国民法の相続の規定が適用されます(大韓民国国際私法第49条第1項)。


(1)ただし,在日韓国人は遺言によって,

「相続」の準拠法として,

日本民法を選択することができます(大韓民国国際私法第49条第2項第1号)。


(2)日本民法を選択すると,

①配偶者の遺留分が,大韓民国民法の遺留分よりも多くなること(ただし,相続人となる子が2人以上の場合に限る。)

②大韓民国民法によると,

遺言による相続分の指定ができないとの解釈による不都合を回避することができます。


(3)大韓民国国際私法第49条第2項第1号により,

遺言で,「相続」の準拠法として日本民法を選択すると,

在日韓国人が所有する財産につき,不動産に限らず,債権および動産などすべての財産の相続に日本民法が適用されます。

その場合の相続手続ですが,

大韓民国国際私法第49条第2項第1号ただし書きにより,

遺言書のほか,

遺言書作成当時から死亡時まで遺言者の常居所が日本に継続していたことを証する書面(外国人登録証明書など)が必要になります。


(4)なお,大韓民国国際私法第49条第2項第2号により,

遺言で,不動産の相続に限り,適用される法律を「不動産の所在地法」との指定ができます。

上記遺言をした場合は,在日韓国人が日本に所有する不動産の相続には,

日本民法が適用されることになります。

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大韓民国 国際私法


2001.4.7法律第6465号


第49条(相続)①相続は、死亡当時被相続人の本国法による。


②被相続人が遺言に適用される方式により、明示的に次の各号の法律のいずれかを指定するときは、相続は、第1項の規定にかかわらず、その法による。

 1.指定当時の被相続人の常居所がある国家の法。ただし、その指定は、被相続人が死亡時までその国家に常居所を維持した場合に限り、その効力がある。

 2.不動産に関する相続に対しては、その不動産の所在地法


第50条(遺言)①遺言は、遺言当時の遺言者の本国法による。

②遺言の変更又は撤回は、その当時の遺言者の本国法による。

③遺言の方式は、次の各号のいずれかの法による。

 1.遺言者が遺言当時又は死亡当時に国籍を有する国家の法

 2.遺言者の遺言当時又は死亡当時の常居所地方裁判所

 3.遺言当時の行為地法

 4.不動産に関する遺言の方式に対しては、その不動産の所在地法


ーーーーーーーーー

法の適用に関する通則法


(平成十八年六月二十一日法律第七十八号)


(相続)


第三十六条  相続は、被相続人の本国法による。



(遺言)

第三十七条  遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

2  遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

ーーーーーーーーーーーー

遺言の方式の準拠法に関する法律


(昭和三十九年六月十日法律第百号)


(準拠法)


第二条  遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。

一  行為地法

二  遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法

三  遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法

四  遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法

五  不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法


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2012年3月24日土曜日

預貯金の遺産分割を求める訴訟


(例)相続財産は預金が100万円,相続人は子A,子Bで,

相続人Aが預貯金通帳を所持しているため,

相続人Bの遺産分割の請求に応じない場合。

相続人Bは,相続人Aに対し,

自己の法定相続分(50万円)の支払いを求める訴えをすることはできません

なぜなら,法定相続分の支払いを求める相手方は,

預金をしている銀行だからです。


判例(最判昭29・4・8民集8巻4号819頁)によると,

預貯金が相続財産の場合は,


相続開始と同時に当然に共同相続人の法定相続分に応じて,
分割帰属します。

したがって,相続人Aが通帳を保管していても,

預貯金50万円の権利については,すでに相続人Bに帰属しているので,

相続人Bは,銀行に50万円の支払いを請求します。


*ただし,銀行実務は相続財産の支払いにつき,

原則として相続人全員の同意書を要求するため,

相続人Bの支払請求に対し,簡単には応じてくれないようです。


*相続人の間で,遺産分割に争いがあるときは,

放置しないで,家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てるのがベストです。



*なお,相続人Aが預貯金の使い込みをしていた場合は,

その使い込んだ金額部分については,

相続人Bが,相続人Aに対し,

不当利得に基づく返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求として,

訴えることができます。



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墓地の名義変更の登記

墓地の名義変更の登記(所有権移転登記)は,

当該墓地が,祭祀財産か相続財産かによって,

登記原因および申請方法が異なります。


①祭祀財産に該当する場合は,

「民法897条の規定による承継」を登記原因として,

共同相続人全員が登記義務者となり,

承継者が登記権利者となって,

共同申請で登記をします。


②相続財産の場合は,

通常の相続登記と同様に,

「相続」を登記原因として,

相続人の単独申請で登記をします。



*なお,地目が墓地になっていても,

登記官には当該墓地が,祭祀財産か相続財産かは不明ですので,

登記官は登記原因証明情報に基づいて判断します。


*地目が墓地の場合,登録免許税は,非課税です。

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登録免許税法

第5条 次に掲げる登記等(第4号又は第5号に掲げる登記又は登録にあつては、当該登記等がこれらの号に掲げる登記又は登録に該当するものであることを証する財務省令で定める書類を添付して受けるものに限る。)については、登録免許税を課さない。
 
10.墳墓地に関する登記


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2012年2月12日日曜日

遺族年金9

(平成18年8月31日社会保険審査会裁決)


夫が生活保護を受給するため偽装離婚した妻に対し,


離婚後も実質的な夫婦共同生活が依然として継続していたとしても,


内縁の妻として遺族厚生年金を請求することは認められないとした原処分を妥当とした裁決。




生活保護制度と厚生年金保険制度はいずれも社会保障制度であり,


相矛盾した主張をすることは,法秩序に著しい混乱を招くことを原因としているようです。




なお,判例(最判昭57年3月26日判時1041号66頁)には,


生活保護の受給を継続するための方便としてなされた離婚届は無効ではないとした事案があります。




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2012年1月30日月曜日

遺留分減殺請求と相続分の指定,特別受益の持戻免除の意思表示に関する判例

事件番号 平成23(許)25

事件名 遺産分割審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件

裁判年月日 平成24年01月26日 最高裁判所第一小法廷  決定  

破棄差戻し

  裁判要旨 

1 遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には,遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される



2 特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合,当該贈与に係る財産の価額は,遺留分を侵害する限度で,遺留分権利者の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除される

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81945&hanreiKbn=02

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2012年1月28日土曜日

嫡出子と同じ割合による遺留分減殺請求権に基づく請求を認めた下級審判例

事件番号 平成23(ネ)866

事件名 遺留分減殺請求控訴事件

裁判年月日 平成23年12月21日

 裁判所名・部 名古屋高等裁判所  

民事第3部 

判示事項の要旨  

父である被相続人の非嫡出子として出生した控訴人が,

遺産のすべてを控訴人出生後に婚姻した妻に遺贈したことについて,

遺留分減殺請求をし,その遺留分について非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1と定める民法900条4号ただし書及びこれを準用する同法1044条は憲法14条1項に違反して無効であるから,嫡出子と同じ割合の遺留分を有すると主張して,

上記妻の相続人である被控訴人らに対し,遺留分減殺請求権に基づく土地所有権の一部移転登記手続等を求めた訴訟において,

被相続人が1度も婚姻したことがない状態でその非嫡出子として出生した子について,

被相続人がその後婚姻した者との間に出生した嫡出子との関係で民法900条4号ただし書を準用する民法1044条を適用することは,その限度で憲法14条1項に違反して無効であるとして,

嫡出子と同じ割合による遺留分減殺請求権に基づく請求を認めた事案



最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81940&hanreiKbn=04
 
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2012年1月27日金曜日

相続人が電鉄会社を訴えたら,反訴されて,本訴棄却,反訴が一部認容された事例

事件番号 平成22(ワ)6406

 事件名 損害賠償請求事件

裁判年月日 平成24年01月11日 大阪地方裁判所  第15民事部

 判示事項の要旨 

花粉症の薬と飲酒の影響でプラットホームから転落して線路上に仰臥していた会社員が,電車に轢かれて死亡した事故につき,電鉄会社のホーム柵設置等の義務違反を否定し,電鉄会社の損害賠償責任を否定した事例(本訴)



上記事故につき,会社員の過失の程度が大きくなかったことや,電鉄会社が乗客のプラットホームからの転落防止につき万全の回避措置をとっていたわけではないことを考慮して民法722条2項を類推適用し,会社員の相続人が電鉄会社に対して賠償すべき損害の額を減額した事例(反訴)


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「一般に,ホーム上の高度の危険性に関しては,鉄道事業者が事故防止のために人的体制及び物的設備を整えるべき注意義務を負っている一方,利用客も自ら危険から身を守るよう心掛けることを求められており,鉄道事業の公共性の観点からも,鉄道事業者と利用客の双方が,事故防止に向けて対策を講じ,また注意して行動することにより,協力してホームにおける安全維持が実現されている状況にあるものといえる。」

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