2017年12月31日日曜日

空き家(400万円以下)の業者の報酬は18万円と消費税まで


四百万円以下の金額の宅地又は建物をいう。以下「空家等」という。) 売買又は交換の媒介であって、


通常の売買又は交換の媒介と比較して現地調査等の費用を要するものについては、


宅地建物取引業者は報酬(現地調査等の費用も含む)として


十八万円の一・〇八倍(消費税8%を含む)まで請求できることになった。




改正された国土交通省告示は,平成三十年一月一日から施行される。


売買代金の額が低廉であればあるほど,宅地建物取引業者の報酬についても低廉になるため,


宅地建物取引業者は空き家及びその敷地の売買の媒介に消極的になっていたため,告示が改正された。


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宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
( 昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号)
最終改正平成二十九年十二月八日国土交通省告示第千百五十五号



第七空家等の売買又は交換の媒介における特例

低廉な空家等( 売買に係る代金の額( 当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。) 又は交換に係る宅地若しくは建物の価額( 当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、


当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。) が


四百万円以下の金額の宅地又は建物をいう。以下「空家等」という。) の売買又は交換の媒介であって、


通常の売買又は交換の媒介と比較して現地調査等の費用を要するものについては、


宅地建物取引業者が空家等の売買又は交換の媒介に関して依頼者( 空家等の売主又は交換を行う者である依頼者に限る。) から受けることのできる報酬の額( 当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、


第二の規定にかかわらず、第二の計算方法により算出した金額と当該現地調査等に要する費用に相当する額を合計した金額以内とする。


この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は十八万円の一・〇八倍に相当する金額を超えてはならない。




附則( 平成二十九年十二月八日国土交通省告示第千百五十五号)


この告示は、平成三十年一月一日から施行する。


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2017年12月24日日曜日

平成30 年度税制改正の大綱の相続登記(閣議決定)



平成29年12月27日追記


次のとおり,法務大臣が「二次相続まで発生している土地について,その一次相続についての相続登記の登録免許税は免税するというものです。」と述べていますので,


やはり,相続登記が免税となるのは,死亡した者が登記名義人となる場合でなければならないようです。


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平成29年12月22日(金)

法務大臣閣議後記者会見の概要

税制改正大綱に関する質疑について

【記者】
 「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設」について,概要と大臣の御所感についてお聞かせください。

【大臣】
 今回の税制改正の大綱に盛り込まれた免税措置ですが,2つの観点から平成32年度までの期間で適用されるものとして創設される見込みです。一つ目は,既に相続登記が放置されているおそれのある土地への対応の観点から,例えば,二次相続まで発生している土地について,その一次相続についての相続登記の登録免許税は免税するというものです。二つ目は,今後相続登記が放置されるおそれのある土地への対応の観点から,一定の資産価値が低い土地についての相続登記の登録免許税は免税するというものです。相続登記について税制上の措置が盛り込まれたということは,政府の中でも相続登記の促進は極めて重要な施策であるという位置付けがなされたものと受け止めており,国会での審議を経たあかつきには,この免税措置の周知・広報に努め,相続人に免税措置を積極的に活用していただき,相続登記の促進について,より一層拍車をかけてまいりたいと思っています。

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平成30 年度税制改正の大綱が平成29年12月22日に閣議決定されました。(まだ法律改正はされていませんので注意)


土地の相続による所有権の移転の登記に関するものは,以下のとおりです。


(1)によりますと,死亡した者を登記名義人とするためとなっていますので,


(例)被相続人Aで,Aの相続人Bが単独相続し,その後,Bが死亡し,Bの相続人甲・乙が共同相続した場合(数次相続の場合),


被相続人Aから直接甲・乙に相続による所有権移転登記をするとき(死亡した者を登記名義人とすることはせずに省略する:中間省略)は,免税とならず,登録免許税は課税されると思われます。


なお,まず①被相続人Aから相続人Bの相続による所有権移転登記をし,次に②被相続人Bから相続人甲・乙の相続による所有権移転登記をするという,ふたつの登記申請をした場合ですが,


①は免税ですが,②は課税されますので,結局,中間省略の相続による所有権移転登記と登録免許税の合計金額は同じになります。


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4 土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設

(1)相続により土地の所有権を取得した者が当該土地の所有権の移転登記を受けないで死亡し、その者の相続人等が平成30 年4月1日から平成33 年3月31日までの間に、その死亡した者を登記名義人とするために受ける当該移転登記に対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。

(2)個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(仮称)の施行の日から平成33 年3月31 日までの間に、市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため相続登記の促進を図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地について相続による所有権の移転登記を受ける場合において、当該移転登記の時における当該土地の価額が10 万円以下であるときは、当該移転登記に対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。


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2017年12月19日火曜日

判決による所有権移転登記と住所変更登記




当事務所では,判決による所有権移転登記,判決による所有権移転登記の抹消登記,判決による抵当権・根抵当権の抹消登記,判決による所有権移転仮登記・所有権移転請求権仮登記の抹消登記などの業務を承っております。


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(1)
 登記実務は,「判決による所有権移転の登記を申請する場合において、申請書に添付された判決正本に登記義務者である被告の住所として、登記簿上の住所と現住所が併記されているときであっても、その前提として登記名義人の住所・氏名変更の登記を省略することはできない(質疑応答登研429号,登研611号)。」との取り扱いをしている。


 

 過去の登記実務では,登研429号より前の登研427号が所有権登記名義人の住所・氏名変更の登記は省略できるとしていたため,混乱があったようであるが,現在の登記実務では,省略できないことで確定している。

 

 登記研究764号(平成23年):実務の視点(34)には,

 「訴訟提起時において,登記義務者である被告の現在の住所と登記記録上の住所が付合しない場合に,実務上,訴状及び判決正本にこれらを併記する方法が用いられることが多い。

 そこで,当初は,当該判決正本に登記義務者である被告の現在の住所と登記記録上の住所が併記されている場合,所有権の移転登記の申請書には登記義務者の登記記録上の住所を記載すればよく,所有権の移転登記の前提としての当該登記義務者の住所の変更登記をする必要はないとされていた(質疑応答登研427号(一))。

 すなわち判決正本に登記名義人の現在の住所と登記記録上の住所が併記され,所有権の移転登記の申請書に登記記録上の住所が記載されていることによって,申請情報の内容である登記義務者の住所が登記原因を証する情報及び登記記録と合致していることから法25条7号若しくは同条8号の規定に抵触しないとしても,現在の住所と登記記録上の住所が異なっていること以上,前記昭和43年民事局長回答の取り扱いによるべきであり,所有権の移転登記の前提としての登記名義人の住所変更の登記を省略することはできないと考えられる(質疑応答登研429号)。

 したがって,質疑応答登研427号(一)は,質疑応答登研429号によって,変更されたものと考えられる。」,

 「判決正本に現在の住所と登記記録上の住所が併記されている場合に,所有権の移転登記をする前提として登記義務者の住所変更の登記を省略することはできないとする取扱いについては,質疑応答登研429号が出されて以降も度々同様の質疑が繰り返されているが,結論は,一貫して,住所変更の登記を省略することはできないとするものである。」

と記載されている。

  

(2)

 つぎに,判決正本が登記名義人の住所・氏名変更の登記の添付情報である変更証明情報(登記原因証明情報)に該当するかどうかが問題となる。以下のとおり,登記実務は,判決正本は変更証明情報(登記原因証明情報)には該当しないとの取り扱いをしている。

 

 変更証明情報(登記原因証明情報)とは,不動産登記令別表23項(登記名義人の氏名等変更の登記又は更正の登記)の添付情報の「当該登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更又は錯誤若しくは遺漏があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」のことをいう。

 

 不動産登記令の立案担当者であった河合芳光(法務省民事局付)の「逐条不動産登記令」(きんざい,平成17年)によると,不動産登記令別表23項の添付情報は,

 「別表の1の項添付情報欄の解説参照」と記載され,

 「具体的には,「市町村長が職務上作成する情報には,氏名の変更等に関する戸籍謄本や住所の変更等に関する住民票の写し又は住民票記載事項証明書が該当する。「登記官」が職務上作成する情報には,法人の名称又は住所の変更等に関する登記事項証明書が該当する。市町村長,登記官以外の「その他の公務員」が職務上作成する情報には,登記を必要としない法人について所管官庁の長が作成する証明情報,外国に居住する日本人である表題部所有者又は所有権の登記名義人の住所等が変更した場合における日本国領事が作成した証明情報が該当する。また,「(公務員が職務上作成した情報)に代わるべき情報」には,外国に居住する外国人である表題部所有者の氏名等が変更した場合における外国官署が作成した証明情報等が含まれる。」と記載されている。

 

 判決正本は変更証明情報(登記原因証明情報)として例示されておらず,よって,判決正本は変更証明情報(登記原因証明情報)には該当しないと解される。

 

 そもそも不動産登記令において,職務上の作成者として市町村長・登記官の他に裁判官は例示されていないのであるから,変更証明情報(登記原因証明情報)として判決正本を含むと解することは困難だと思われる。 

 

(3)

 ところで,登記先例(昭和三十七年七月二十八日付け民事甲二一一六号民事局長通達)は,「判決により所有権移転登記を申請する場合においても、申請人たる登記権利者の住所を証する書面の提出を必要とする。」として,判決正本は住所証明情報には該当しないとしている。

 また質疑応答登研573号は,「遺産分割の調停調書は、登記権利者の住所を証する書面にはならない。」として,遺産分割の調停調書の正本は住所証明情報には該当しないとしている。


 住所を証する書面(住所証明情報)とは,不動産登記令別表30項(所有権の移転の登記)の添付情報ロの「登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」のことをいう。

 

 「逐条不動産登記令」(きんざい)によると,不動産登記令別表30項の添付情報は,

「別表の2の項添付情報ロの解説参照」と記載されている。

「具体的には,「市町村長が職務上作成する情報には,住民票の写し又は住民票記載事項証明書が含まれる。「登記官」が職務上作成する情報には,法人についての登記事項証明書が該当する。市町村長,登記官以外の「その他の公務員」が職務上作成する情報には,登記を必要としない法人について所管官庁の長が作成する証明情報,外国に居住する日本人である表題部所有者又は所有権の登記名義人の住所を証する日本国領事が作成した証明情報が該当する。また,「これに代わるべき情報」には,外国に居住する外国人である表題部所有者の氏名等が変更した場合における外国官署が作成した証明情報等が含まれる。」と記載されている。これは旧不動産登記法と同じ取り扱いとなるような記載である。

 この記載内容は,「逐条不動産登記令」の変更証明情報(登記原因証明情報)の記載内容とほぼ同じである。


下記の記載は,判決正本が住所を証する書面(住所証明情報)に該当しないことの理由ではあるが,判決正本が変更証明情報(登記原因証明情報)に該当しないことの理由としても解することができるものである。

 
登記研究747号(平成22年):実務の視点(22)には,

遺産分割の調停調書は、登記権利者の住所を証する書面にはならない。」とする登研573号について,

 「裁判所の関与の下に進行する訴訟過程において,登記権利者が特定され,当該登記権利者にあてて当該判決がされる以上,虚無人名義による登記又は成りすましによる登記がされる可能性は極めて少ないものと思われる。

 したがって,登記官は,判決書に記載された登記権利者の住所をそのまま登記すればよく,改めて住所を証す情報の提供を求めなくても差し支えないように思われる。 

 しかしながら,判決書に記載された登記権利者の肩書地が住所であることとはされておらず,したがって,判決書に記載する訴訟当事者の氏名及び住所の表示が,住民基本台帳上のそれと違っている場合もあり得る。

 これに対して,不動産の公証制度である登記にあっては,その制度の目的から,登記名義人の特定を居所や営業所等の場所的な記載をもってすることは認められておらず,形式的,画一的に特定するため必ず住所を表示(登記)するものとして,住民基本台帳に記載された住所の表示が間違いなく登記申請書に記載され,かつ,これが登記記録に記録されることを手続上保証するため,登記権利者が判決により所有権の移転登記を申請する場合であっても,当該登記権利者の住所を証する情報の提供を求めているのである(昭和三十七年七月二十八日付け民事甲二一一六号民事局長通達)。

 したがって,確定判決と同一の効力を有するとされる調停調書を提供して所有権の移転登記を申請する場合にも,登記権利者の住所を証する情報の提供を要するのである。」

と記載されている。

 

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(石原注:旧不動産登記法時の用語を使用しています。)

 

登記研究(テイハン) 質疑応答



登記名義人表示変更登記の省略の可否(登研611号)

《所有権移転登記(その他)》《登記名義人の表示の変更・更正》《判決登記》

 要旨 判決による所有権移転の登記を申請する場合において、申請書に添付された判決正本に登記義務者である被告の住所として、登記簿上の住所と現住所が併記されているときであっても、その前提として登記名義人表示変更(更正)の登記を省略することはできない。

 問 判決による所有権移転登記を申請する場合において、原因証書である判決正本に、登記義務者である被告の住所として、登記簿上の住所と現住所が併記されているときであっても、その前提として登記名義人表示変更(更正)の登記を省略することはできないと考えますが、申請書に登記義務者の登記簿上の住所を記載すれば、これをする必要がないとする見解(質疑応答登研427号)もあることから、いかがでしょうか。

 答 登記名義人表示変更(更正)の登記は省略することができないものと考えます。

 


登記名義人の表示の変更登記の省略の可否(登研476号)
《登記名義人の表示の変更・更正》《判決登記》
 要旨 和解調書に基づき登記権利者単独で所有権移転の登記申請をする場合において、右調書上に登記名義人の表示を登記簿上の住所及びこれと異なる現在の住所とが併記されている場合であっても、前提としての登記名義人の表示変更の登記は、省略することができ
ない

 


表示変更登記の要否(登研455号)
《登記名義人の表示の変更・更正》《代位登記(総説)》《判決登記》
 要旨 時効取得による所有権移転の登記をするに当たり、登記名義人の登記簿上の住所と判決書の住所が相違する場合は、その表示変更登記を
要する

 


登記名義人表示変更登記の省略の可否(登研429号)
《判決登記》《登記名義人の表示の変更・更正》
 要旨 判決による所有権移転の登記を申請する場合において、登記義務者の住所の表示が登記簿の表示と相違しているが、申請書に添付の判決正本に登記簿上の住所が併記しているときであっても、右登記の前提として住所変更(更正)の登記を省略することはでき
ない

 



判決による登記の登記義務者の表示(登研427号)
《申請書(記載)》《判決登記》
 要旨 判決による登記を申請する場合において、当該判決に登記義務者である被告の住所と登記簿上の住所が併記されている場合には、申請書に登記義務者の登記簿上の住所を表示すれば足りる。
 問 (一) 判 決
 当事者
     番地 原告甲
 (注1) (登記簿上の住所)番地
被告乙
 (注2) 現在の住所 ×××番地
    主 文
被告は原告に対し別紙目録不動産につき所有権移転登記手続をせよ。
   (以下省略)
 右のような判決を原因証書として、甲から所有権移転登記を申請するとき、申請書の登記義務者の住所を(注1)のとおりとすれば、前提として乙の住所変更(更正)による所有権登記名義人表示更正(変更)の代位登記をする必要はないと思うがどうでしょうか。
(二) また、当事者は右と同じで
    主 文
被告は原告に対し別紙目録不動産につき○○法務局昭和日受付第○○号の抵当権登記の抹消登記手続をせよ。
   (以下省略)
とある判決を原因証書として、甲から抵当権抹消登記を申請するとき、申請書の登記義務者の住所を(注1)のとおり記載すれば、乙の住所変更(更正)証明書を添付する必要がないと思うがどうでしょうか。
 答 (一)、(二)ともに御意見のとおりと考えます。


(石原注:(一)については,登研429号により変更された。(二)については,維持されている。)

 



判決と前提登記の要否(登研276号)
《登記名義人の表示の変更・更正》《所有権移転登記(総説)》《判決登記》
 要旨 判決に基づき原告が単独で所有権移転登記を申請する場合でも、登記簿における登記義務者の住所の表示が判決のそれと相違するときは、その前提として登記名義人の表示変更登記をなすことを
要する

 



遺産分割の調停調書を登記権利者の住所を証する書面とすることの可否(登研573号)
《添付書面(住所証明書)》
 要旨 遺産分割の調停調書は、登記権利者の住所を証する書面にはならない。

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登記先例 (昭和37年7月28日民事甲第2116号・民事局長通達)

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判決による所有権移転の登記の場合

-------------------------------------------------------------------

〔要旨〕 判決により所有権移転登記を申請する場合においても、申請人たる登記権利者の住所を証する書面の提出を必要とする。





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 昭和4357日 民事甲1260 






権利の移転の登記の前提としてする名義人表示変更の登記の省略(消極)






〔要旨〕 権利移転の登記を申請するにあたって、登記簿の登記義務者につき変更を生じている場合(または更正すべき場合)、当該申請書に変更、(または更正)を証する書面を添付し、かつ変更前(更正前)の表示を併記することとして、その表示の変更(または更正)の登記を省略する取扱いは、いかなる事情によっても認められない。

 












 

 

2017年12月14日木曜日

商事留置権に関する判例





賃貸人(上告人)から本件土地の賃貸借契約を解除された賃借人(被上告人)が本件土地を引き続き占有していたので,


賃貸人は賃借人に対し所有権に基づいて本件土地の明渡し等を請求した。


賃借人は,本件土地について,賃借人の賃貸人に対する弁済期にある運送委託料債権(賃貸借契約の終了前に生じている)を被担保債権とする商事留置権を主張した。


最高裁判所は,商法521条が定める「物」には,不動産も含まれると判断して上告を棄却した。


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事件番号 平成29(受)675     

事件名 建物明渡等請求事件      

裁判年月日 平成29年12月14日      

法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決     

結果 棄却     

判例集等巻・号・頁   

判示事項
 不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たる

裁判要旨

     

最高裁判所HP
全文


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2017年9月4日月曜日

地上権の混同による抹消



登記研究834号(平成29年8月号)の113頁(実務の視点)に,


混同を登記原因とする地上権の抹消登記について解説があります。


登記権利者又は登記義務者の相続と混同抹消の事例の記載もあります。



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2017年8月16日水曜日

法定地上権の登記



登記研究832号(平成29年6月号)の136頁以下(実務の視点)に法定地上権の記載があります。


143頁に民法以外の法律が定める法定地上権として,立木ニ関スル法律,工場抵当法,工業抵当法,国税徴収法が挙げられていますが,


民事執行法(81条)が欠落しています。


なお,仮登記担保契約に関する法律(10条)には,法定借地権が規定されています。


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2017年8月11日金曜日

清算型遺言(清算型遺贈)が行われた場合の課税

「換価遺言が行われた場合の課税関係について」
税務大学校研究部教授 小 柳 誠 (氏)の論文です。


国税庁HP
https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/85/01/01.pdf#search=%27%E9%81%BA%E8%A8%80%E5%9F%B7%E8%A1%8C%E8%80%85+%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E%27


とくに清算型遺贈の場合で,相続人がいるが,受遺者が相続人ではない場合,だれが譲渡所得の納税義務者になるかが問題となります。
この論文は,譲渡所得は,受遺者が納税義務者になるとの見解を示されています。
この論文は,換価遺言の場合であれば、受遺者に対して,分配する金銭のみを取得(遺贈)させたいのか,換価する財産の取得(遺贈)も意図しているのか,清算する債務の負担は誰に負担させたいと意図しているのか(相続人のままか,金銭を取得させる者か)などを明確にし,遺言書を作成することが,法的性質の決定の不安定さを低減し,予測可能性をも高めることになるとの指摘をされています。
よって,清算型遺言(清算型遺贈)の遺言書の作成は,専門家に依頼すべきと考えます。
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2017年8月2日水曜日

休眠担保権の抹消の本



不動産登記簿(とくに土地)に,明治や大正時代の古い担保権(抵当権・根抵当権)が,そのまま記載されていることがあります。


そのまま相続するだけであれば,問題点は見えないままなのですが,将来,土地を売却する際や担保としてお金を借りる際に,問題点が明白化します。


古い担保権を抹消しないと,原則として,売却することやお金を借りることができないのです。


当事務所では,休眠担保権(抵当権・根抵当権)の抹消登記の依頼を承っております。


当事務所 札幌市中央区
(石原拓郎司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所)のHP
 
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電話番号 011-532-5970
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休眠担保権の抹消に関する本は,次の本が大変役に立ちます。
『正影秀明 「休眠担保権に関する登記手続と法律実務」 平成28年 日本加除出版』


パート別毎に同じことが記載されている部分が見受けられます。
しかし,この程度の記載は,むしろ著者による親切心だと思いました。


ただし,以下の点に注意が必要です。


157頁の図表において,2000年がうるう年では「ない」としている部分,


158頁において,「2000年,2400年は平年であり,2月29日はない。」としている部分が,


間違えておりますので注意が必要です。


2000年,2400年は閏年ですので,「2月29日はある」が正解です。


現時点で,出版社の正誤表に記載はないようです。


158頁に,閏年のルール「②4で割り切れる年にも例外がある。西暦年号が100で割り切れて400で割り切れない年は,平年とする。」,


と記載したすぐ下の段落で,「2000年,2400年は平年であり,2月29日はない。」と記載されていましたので,わたしの頭は???となりました。


2000年,2400年のカレンダーにもしっかり2月29日は載っております。


なお,『後藤基 「[補訂版]休眠担保権をめぐる登記と実務」 平成19年 新日本法規』の134頁の年数早見表では,やはり2000年はうるう年と記載されております。


上記の点は,明確な誤記であることが本文中によりわかりますので,この点を差し引いても,休眠担保の抹消に関する最良書だと思います。







2017年7月31日月曜日

遺留分減殺の登記の抹消

遺留分減殺を原因とする所有権の移転の登記は,後発的な原因による場合は,共同申請はもちろん家庭裁判所の調停調書による場合でも,抹消をすることはできません。

(藤原勇喜 登記原因証明情報と不動産登記をめぐる諸問題(21) 登記研究平成29年7月号(833号) 71頁を参照)

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遺留分減殺請求を原因とする所有権移転登記の抹消の可否(消極)



〔要旨〕 遺留分減殺を原因とする持分一部移転登記を「遺留分減殺請求撤回」、「遺留分減殺請求取消」又は「和解」等の後発的な原因によって抹消することはできない。
(照会) 別紙の事案について、
(1) Dの遺留分減殺を原因とする持分一部移転登記(事案の②、③、④の登記)について、②の登記はADの共同申請により、③の登記はBDの共同申請により、④の登記はCDの共同申請により、それぞれ抹消の申請をすることができるか。
また、共同申請ではなく、家庭裁判所の調停調書を用いて各登記の抹消の申請をすることができるか。
(2) (1)の申請ができる場合には、Dの遺留分減殺を原因とする持分一部移転登記が判決に基づいてされていたときも、同様に、共同申請又は調停調書によって抹消の申請をすることができるか。
(3) (1)、(2)の抹消の申請ができる場合、その登記原因は、「平成〇年〇月〇日遺留分減殺請求撤回(又は取消)」又は「平成〇年〇月〇日和解(又は調停)」で差し支えないか。


別紙
(事案)
被相続人甲の相続につき、相続人は、甲の子A、B、C、Gおよび甲の孫D、E、Fの合計7名である。(ABCGの相続分各5分の1、DEFの相続分各15分の1、DEFの遺留分各30分の1)
 

甲の遺産である不動産(甲単独所有名義)につき、甲の遺言を原因証書として、A、B、C3名の持分各3分の1とする次のような相続登記がなされた。

その後、相続人DがABCに対し遺留分減殺の請求をし、同一の不動産につき、「遺留分減殺」を登記原因とする、次のようなABCの各持分一部移転登記がなされた。E、F、Gについては遺留分減殺によるこのような登記はなされていない。



(回答) 客年11月22日付け11―2705号をもって照会のあった標記の件については、下記のとおりと考えます。
1 照会事項(1)について
いずれの抹消登記手続もできないと考えます。
2 照会事項(2)及び(3)について
(1)により了知されたい。(平成12年3月10日民三第708号・民事局第三課長回答)

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2017年7月14日金曜日

土地所有権の放棄の裁判例

 当該裁判例の訟務月報の解説には,次の記載があります。

「不動産の所有権放棄について争われた裁判例は少なく,不動産の所有権放棄の可否について正面から判断した裁判例は見当たらないが,」 

「本件では,不動産の所有権放棄の可否そのものは争点とされていなかったため,本判決はこの点に触れていない。もっとも,本判決は,後記のとおり,本件所有権放棄の権利濫用該当性について検討していることからすれば,その前提として,不動産の所有権放棄自体はできるとの見解に立ったものとも思われる。」

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理論上は,その前提として,不動産の所有権放棄自体はできるとの見解を採用せざるをえないのでしょうが,国策として,権利濫用又は公序良俗違反を理由に,原告の請求は棄却されることになるはずです。


最近の土地所有権放棄の裁判例として参考になります。

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法務省 訟務重要判例集データベースシステム

訟務月報62巻10号

http://www.shoumudatabase.moj.go.jp/search/html/upfile/geppou/pdfs/d06210/m06210012.pdf




土地所有権移転登記手続請求事件
(松江地裁 平成26年(ワ)第151号 平成28年5月23日判決)
(原  告)X
(被  告)国
本件は控訴中(広島高裁松江支部平成28年(ネ)第51号)
     
 受贈者は,父の所有する土地を将来において相続し保有し続ける事態を避けるため,当該土地の受贈後に所有権を直ちに放棄する目的であえて父から当該土地の生前贈与を受けたものであること,受贈者において,当該所有権放棄により当該土地に関する負担ないし責任が受贈者から国に移転することを認識していたこと,当該所有権放棄により当該土地の所有権が帰属することとなる国において,財産的価値の乏しい土地の管理に係る多額の経済的負担を余儀なくされることなどの事情の下においては,土地の生前贈与の受贈者による当該土地の所有権を受贈後直ちに放棄する旨の意思表示は,権利の濫用に当たり無効であるとされた事例


* 請求の趣旨「被告は,原告に対し,別紙物件目録〈略〉記載の各土地について,平成26
年10月23日放棄を原因とする原告から被告への所有権移転登記手続をせよ。」


*本件土地1の固定資産税評価額は47万3083円,本件土地2の固定資産税評価額は6763円である。そして,①本件各土地はいずれも山林であって,その所在地が特段付加価値の高い地域ではないこと,②本件各土地は地上に樹木が生い茂った状態であり,本件各土地を利用するためには地上にある樹木を伐採し土地を整備する必要があり,相当の負担が必要となることに照らせば,本件各土地の転売可能性は相当低いものと認められ,以上を踏まえると,本件各土地の現実の財産的価値は固定資産税評価額を超えるものではないと認めるのが相当である。


*本件各土地が国の所有となれば,国はその管理費用として,少なくとも,境界確定費用(測量費用を含む。)として52万0676円をかなり上回る費用,単管柵の設置費用として100万7328円を負担することとなるほか,毎年かかるものとして,巡回警備費用1万3280円,草刈り費用6万5240円,枝打ち費用(1本899円)を負担することになるものと認められる。


*なお,本件各土地の管理に要する費用について,本判決は,Xらが本件各土地の管理をせず,その費用を支出していないことを挙げて,その費用の必要性がない旨のXの主張を排斥しており,所有者が長年不動産の管理をしていないとしても,そのことから当該不動産の管理の必要性が否定されるものではないことを示すものといえよう。


*,原告による本件所有権放棄が認められれば,本件各土地は,民法232条2項により必然的に国庫に帰属することとなるのであって,被告は,本件各土地の取得について何らの行為をなすことなく,いわば原告の意思表示により一方的かつ必然的に,本件各土地の所有に伴い生じる負担を余儀なくされる関係にあるのであるから,被告が本件各土地を取得することに伴い被告に生じる負担を,原告の所有権放棄の意思表示と切り離して評価する理由はなく,原告の主張は採用できない。


*また,原告は,共有持分の放棄(民法255条)や相続放棄(民法959条)の場合には,権利濫用等が問題とされないことに照らせば,原告による本件所有権放棄に対して権利濫用等の主張をすること自体が権利の濫用であると主張している。 しかし,共有持分の放棄の場合でも,法解釈上,権利濫用等の主張が一切認められないとする理由はないし,また,相続放棄は,相続人の意思にかかわらない被相続人の死亡により生じる相続財産について,相続人がこれを包括的に放棄するか否かを選択する制度であって,個別的な財産の所有権の放棄を問題とする本件とは根本的に異なることが明らかであり,いずれも理由とならない。


*以上によれば,原告による本件所有権放棄は権利濫用に当たり無効であり,被告は本件各土地の所有権を取得していないから,原告の請求は理由ない。


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2017年7月1日土曜日

株主リスト(登記研究)



登記研究平成29年6月号(832号)の1頁以下に


「株主リストに関する一考察」のタイトルで


法務省民事局付
辻 雄介
法務省民事局商事課係長
(商業法人登記第一係担当) 
大西 勇


の両氏による解説が記載されています。


改正省令の施行後,各法務局及び地方法務局等から,当課に対して,商業登記規則第61条第2項又は第3項に規定する株主リストの添付の要否,記載内容及びその作成者等について,多数の照会が寄せられ,当課において,それらの内容を検討してきたところである。


そこで,本稿では,そのうち,商業・法人登記実務に特に有益と考えられる株主リストの添付の要否,記載内容及び作成者に関する問題をいくつか取り上げ,解説を加えることとする。




第2 株主リストの添付の要否に関するもの


総論


持分会社への組織変更


取締役会を置かない会社における株主総会で選定した代表取締役の辞任


募集株式の発行における株主総会の委任に基づく取締役会による募集事項の決定


発行済みのある株式の一部を他の種類の株式にする場合


失権予告付催告の期間を短縮する場合における綜株主の同意


会計監査人の自動再任


会計監査人を再任しない旨の決議


特例有限会社における監査役を置く旨の定款の定めの廃止による監査役の退任の登記


取締役の一部につき種類株主総会で選解任できる場合における当該取締役の解任


取得請求権付株式の取得と引換えにする新株予約権の発行


募集新株予約権の発行に当たり,資本金として計上しない額を定めていた場合


第3 株主リストの記載内容に関するもの


主要な株主が死亡した場合の株主リスト


第4 株主リストの作成者に関するもの


組織再編の場合における株主リスト


第5 株主リストの書式例に関するもの


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2017年6月28日水曜日

登記官に対する審査請求(商業・法人)



登記研究831号(平成29年5月号)の57頁以下に,


「行政不服審査法等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」


法務省民事局商事課係長(商業法人登記第一係担当) 大西 勇 


氏の見解が掲載されています。


行政不服審査法(平成26年法律第68号)及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成26年法律第69号)が平成28年4月1日に施行され,同日以降にされた登記官の処分又は不作為については,行政不服審査法の規定とともに,整備法による改正後の商業登記法(昭和38年法律第125号)の規定が適用されることとなった。


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2017年6月26日月曜日

不動産取得税の申告(北海道)

居住用の中古のマンション(中古の住宅)及びその敷地について,


贈与の所有権の移転の登記の完了後,


道税事務所に不動産取得税の申告(住宅控除及び土地減額)をするため,申告者が不動産取得税の申告書を郵送したところ,


道税事務所から申告者に対して,居住用の中古の住宅及びその敷地の不動産取得税の申告は,


登記の完了から3ヵ月から4ヵ月後に申告者に納税通知書が送付されるので,納税通知書の送付後に,不動産取得税の申告をして欲しいとの連絡があったようです。


*居住用の建物の新築の場合は,登記の完了後,ただちに不動産取得税の申告をしてもらってもかまわないとことです。


*行政書士は,不動産取得税の申告書は作成できますが,不動産取得税の申告自体はできません。


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当事務所では,札幌市内の不動産取得税の申告書(住宅控除及び土地減額)の作成を承っております。


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2017年6月15日木曜日

財産分与と仮登記

夫婦が離婚し,財産分与として元夫名義の不動産を元妻名義にする場合ですが,
住宅ローンを返済中のときは,住宅ローンの契約に注意する必要があります。

住宅ローンの契約には,通常,期限の利益喪失特約として,

銀行の承諾無く,抵当物件を譲渡した場合,直ちに(又は請求により)期限の利益を喪失し,抵当権を実行し競売により債務の弁済に充当するとの特約があります。

よって,銀行の承諾無く,財産分与により元夫から元妻に不動産の名義を変更すると,この期限の利益喪失特約に違反したとして,競売にかけられる可能性があります。

期限の利益喪失特約に違反しないようにする方法として,住宅ローン完済時に所有権が移転する仮登記の方法があるようです。

この仮登記の方法だと,住宅ローンの完済時に所有権が移転(譲渡)することになり,所有権の移転時には,住宅ローンが消失していることから,住宅ローンの契約(期限の利益喪失特約)違反にはなりません。

しかし,見落としがあります。

離婚により,元夫婦は別居するでしょうから,住宅ローンが残り3年ぐらいなら良いですが,

それより長期の場合は,住宅ローンの完済時には,元夫が住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日を経過しているはずです。

よって,元夫は,居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例が利用できず,
元夫には,譲渡所得税が課せられる可能性があります。

*そもそも譲渡益がでない場合であれば,譲渡所得税を心配する必要はありませんが・・・


もうひとつの見落としですが,仮登記を本登記にする場合は,元夫の協力が必要になることです。住宅ローンの完済時になってから,元夫の協力を得ることができるのかは未知数といえるでしょう。


*元夫が協力しない場合,元夫を訴えることにより,本登記にすることは可能です。


さらに,仮登記の後ろに,差押などの登記がある場合には,それら後順位の登記も抹消しなければ,本登記にすることはできません。

なお,楽天銀行の不動産担保 ローン約款は,「当行は、その変更等がなされても担保価値の減少等債権保全に支障を生ずるおそれがない場合には、これを承諾するものとします。」との条項になっています。


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楽天銀行 不動産担保 ローン約款


第21条 担保


2.債務者は、担保について現状を変更し、又は第三者のために権利を設定若しくは譲渡するときは、あらかじめ書面により当行の承諾を得るものとします。当行は、その変更等がなされても担保価値の減少等債権保全に支障を生ずるおそれがない場合には、これを承諾するものとします。


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2017年6月6日火曜日

法定相続情報証明制度

登記研究831号(平成29年5月号)に以下の記載があります。


「法定相続情報証明制度の創設に伴う不動産登記規則改正の逐条解説」


福岡地方裁判所小倉支部判事補(前法務省民事局付検事)
宮崎 文康


「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務等の取扱いについて」


法務省民事局民事第二課係長
西澤 徹


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2017年6月5日月曜日

被相続人の同一性を証する情報(相続登記)





令和元年9月20日追記
下記先例の登記研究の解説には、
住民票及び戸籍の附票を取得してもなお住所がつながらない時に、登記済証で被相続人の同一性を判断することになる、ようなことを記載してあった。
確かにそのように解釈する合理性は理解できるが、そうはいっても下記先例では、登記済証は、住民票及び戸籍の附票と並列関係となっているのであるから、後出しの解説でそのような解釈を加えるのは、やはり納得できない。


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平成29年9月16日追記
某法務局から(除かれた)戸籍の附票を要求されたのが,納得いかん。
補正ではなく,あくまでお願いということだったが。
死亡から5年以内だったため添付済みの住民票の除票のほかに,(除かれた)戸籍の附票も出してくれと言われた。
根拠を尋ねたところ,取得できる書類は取得してもらうことになっていると返答された。


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登記研究831号(平成29年5月号)の133頁の訓令・通達・回答に,


「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について」


(平成29年3月23日付け法務省民二第174号法務省民事局民事第二課長回答)


の解説が記載されています。


第1概要


被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なるときに,同一性を証する情報として,住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),戸籍の附票(登記記録上の住所が記載されているものに限る。),又は所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば,不在籍証明書,不在住証明書など他の添付情報を求めることなく相続登記をすることができる。




第2基本的な考え方


1被相続人の同一性を証する情報


登記官において,所有権の登記名義人と戸籍等の謄本に記載されている者とが同一人であることの蓋然性があると判断できる情報でなければならない。


被相続人の同一性を証する情報に具体的に該当する書面について検討するにあたっては,当該書面が,①登記記録上の所有権の登記名義人との結び付き及び②戸籍等の謄本に記載された者との結び付きをいずれも架橋するものでなければならない点に留意する必要がある。


2住民票の写し又は戸籍の附票の写し


それのみで同一性を認定することができる。


3所有権に関する被相続人名義の登記済証


それのみで同一性を認定することができる。


4不在籍証明書・不在住証明書


不在籍証明書等を発行するか否かは地方公共団体の裁量に委ねられている(大阪高等裁判所平成14年10月8日判例タイムズ1121号139頁),「現在はない」旨の証明をしている市区町村もある。


第3 その他の被相続人の同一性を証する情報


個々の事案により申請人から提供することができる情報が異なることから,一律に定めることは困難であり,個々の事案を審査する登記官の裁量的な判断に委ねられているといえる。


(1)固定資産税の納税証明書又は評価証明書


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(2)「所有権の登記名義人と戸籍上の被相続人とは同一である」旨の相続人全員の上申書(印鑑証明書付き)


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(3)不在籍証明書等


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(4)その他の書面


①所有権の登記名義人宛て(登記記録上の住所と同一であることを要する。)の消印のある郵便物,②相続登記の対象である不動産に登記されている所有権以外の登記名義人の証明書(印鑑証明書付き),③隣接地(近傍地)所有者の証明書(印鑑証明書付き),④前所有者の証明書(印鑑証明書付き),⑤(共有地であれば)他の共有者の証明書(印鑑証明書付き),⑥名寄帳及び当該名寄帳に記載され,かつ,相続登記完了している物件の登記事項証明書(閉鎖登記簿謄本)


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


消除の起算日も法令上明確であるので,被相続人の死亡日から5年以上経過して相続登記が申請された場合には,「廃棄処分により除住民票の写し等の添付はできない」旨の市区町村長の証明書の提供は不要と考えられる。


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結論としては,
①住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),
②戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているものに限る。),
③所有権に関する被相続人名義の登記済証,
のいずれかの添付があれば,それのみで被相続人の同一性を認定することができるが,


それ以外の書類については,複数の書類を組み合わせて,登記官が同一人であることの蓋然性があると判断できるような情報を提供することになる。


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