2010年11月30日火曜日

特別受益4

被相続人は,特別受益の持戻し免除の意思表示をすることができます。

遺留分を侵害するような持戻し免除の意思表示も有効ですが,

実際に遺留分権利者が,遺留分減殺請求をしてきた場合は,

遺留分を侵害する限度で,

持戻し免除の効力を失います。

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2010年11月29日月曜日

特別受益3

特別受益については,

相続人間の衡平をはかるため,

持戻し(相続開始時の財産に特別受益を加算すること)が原則です。

しかし,被相続人が生前または遺言で,

特別受益の持戻しの免除の意思表示をしていれば,

特別受益を相続開始時の財産に加算しません。

←特別受益をもらった相続人は,その分を得することになります。

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2010年11月28日日曜日

特別受益2

特別受益を規定している民法903条1項は,


「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。 」

となっています。

①遺贈とは,遺言による贈与のことです。

 遺贈の対象財産は,すべてが特別受益に含まれます。

婚姻若しくは養子縁組のための贈与とは,

 持参金,結婚の支度金,嫁入り道具については,

ある程度のまとまった金額の場合は,特別受益になります。
 
 結納金は,肯定説,否定説があります。

 挙式費用については,否定説が有力のようです。

生計の資本としての贈与とは,

生計の基礎として役立つ,財産上の給付のことです。

 ⅰ一般的には,子が親から独立する場合の不動産の贈与,

  営業資金の贈与,農地の贈与などです。

 ⅱ高等教育の費用については,

  私立医学部の費用や留学費用など,金額が高額になる場合は,

  特別受益になります。

 ⅲ生命保険金,死亡退職金は,原則として,特別受益になりません。

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2010年11月27日土曜日

特別受益

「特別受益」制度とは,

共同相続人のうち被相続人から

遺贈や一定の贈与を受けた者がある場合は,

相続人間の衡平をはかるべく,

その価額を遺産分割に際し,考慮する制度です。

つまり,遺贈の価額や一定の贈与の価額を

相続開始時の相続財産に加算して,

各相続人の具体的な相続分を算出することになります。

←贈与のように,生前に遺産の前渡しとして,

すでに財産をもらっている相続人がいる場合,

相続開始時の相続財産を,各共同相続人の法定相続分で分けると,

贈与をもらっている相続人が多くもらいすぎになるので,

その不公平を是正する制度が,特別受益制度です。








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(特別受益者の相続分)


民法第九百三条  共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

2  遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

3  被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。


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2010年11月26日金曜日

遺留分減殺請求22

遺言者が,民法903条の特別受益に該当する贈与につき,

持戻し免除の意思表示をしていても,

(贈与が民法1030条の要件に該当するかどうかを問わず)

遺留分算定の基礎財産に含まれると解されています。

←遺言者が持戻し免除の意思表示をしていても,

遺留分減殺請求がされた場合は,

遺留分に反する限度で,

持戻し免除の意思表示は,効力が認められないことになります。

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2010年11月24日水曜日

遺留分減殺請求21

遺言者は,複数の財産を遺贈する場合,

遺留分減殺請求に備えて,

遺言で,

遺留分減殺請求の対象になる財産の順序およびその割合を定めることができます。

ただし,遺言書作成時と相続発生時とでは,時間的間隔が生じるので,

遺言者が,あらかじめ遺留分減殺請求の対象になる財産の順序を指定すると,

受遺者(もらう人)にとって,不都合が生じることがあります。

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墓・葬儀サービス(国民生活センターの相談件数)

墓・葬儀サービスに関するPIO-NETに寄せられた相談件数の推移

国民生活センターHP http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/sougi.html

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2010年11月23日火曜日

相続欠格7

相続欠格事由の一つである,

民法 第八百九十一条 第1項は,


「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者 」

となっています。

・・・刑に処せられた者

となっていますので,

警察に捕まり,裁判所から有罪判決を受けたことが要件です。

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2010年11月22日月曜日

相続欠格6

相続欠格事由の一つである

民法 第八百九十一条 第1項は,

「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者 」

となっています。

故意に・・・死亡するに至らせ,または,至らせようとした・・・

ということですので,

いわゆる殺人罪または殺人未遂罪に該当する場合です。

よって,傷害罪,暴行罪は当然,傷害致死罪や過失致死罪に該当する場合でも,

相続欠格事由には該当しません。

傷害罪,暴行罪の場合は,

家庭裁判所に対する相続廃除の申立てを検討してみましょう。

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2010年11月21日日曜日

相続欠格5

相続欠格を理由として,ある相続人が相続権を有しないことの確認を求める訴訟は,

固有必要的共同訴訟ですので,

相続欠格事由に該当する相続人だけでなく,

他の共同相続人全員を訴訟当事者にしなければなりません。

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平成16年07月06日 最高裁判所第三小法廷 判決 民集 第58巻5号1319頁


判示事項

共同相続人間における相続人の地位不存在確認の訴えと固有必要的共同訴訟

裁判要旨

共同相続人が,他の共同相続人に対し,その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,固有必要的共同訴訟である。


最高裁判所HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52382&hanreiKbn=01

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2010年11月20日土曜日

相続欠格4

相続欠格者とされる者が,相続欠格者であることを自認しない場合は,

相続欠格を理由に相続権を有しないことの確認を求める訴訟を

提起することになります。


*相続廃除が戸籍謄本に記載されるのとは異なり,

相続欠格は,戸籍謄本に記載されません。

よって,不動産の相続登記の場合は,

相続欠格者が自認する場合は,

相続欠格者自身が作成した証明書(実印押印して,印鑑証明書添付)を使います。

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2010年11月19日金曜日

相続欠格3

相続欠格事由に該当する者は,

法律上,当然に,相続資格を失うと解されています。

(相続人廃除の場合は,家庭裁判所の審判が必要です。)

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2010年11月18日木曜日

相続欠格2

相続欠格事由に該当する者(相続欠格者)は,

相続人になれませんが,

その相続欠格者の子どもが,代襲相続人としての要件を満たしていれば,

代襲相続人として相続人になります。

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2010年11月17日水曜日

相続欠格

相続欠格事由に該当する者は,

相続人となる資格を失います。

相続欠格事由は,大別すると,

①被相続人に対する故意による生命身体への侵害

②被相続人に対する遺言の妨害

になります。


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(相続人の欠格事由)


民法 第八百九十一条  次に掲げる者は、相続人となることができない。

一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二  被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

三  詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

四  詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 
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2010年11月16日火曜日

死後離縁4

死後離縁は,家庭裁判所の許可により効力が生じるのではありません。

死後離縁の効力は,

家庭裁判所の許可の審判書謄本(確定証明が必要です。)を添えて,

届け出ることによって生じます(創設的届出)。

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2010年11月15日月曜日

死後離縁3

死後離縁には,遡及効がありません。

死後離縁をしても,

養親子の関係が遡って消滅するわけではありません。

よって,養親死亡後に死後離縁をしても,

離縁した養子について,

養親の相続において,

養子としての相続人たる地位は存続します。

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2010年11月14日日曜日

定額郵便貯金の遺産分割

定「額」郵便貯金は,

(定期貯金ではありません。)

郵便貯金法という法律により,

預け入れの日から起算して,10年が経過するまでは,

分割払戻しができません。

(一括払戻しは,預け入れの日から6ヵ月の経過で可能です。)


普通預金,定期預金については,

相続が発生すると,

各相続人の相続分に応じて,

当然に(自動的に),各相続人に分割して帰属します。

よって,各相続人が,ゆうちょ銀行,銀行などに対し,

個別に払戻しを請求できます。

しかし,定「額」郵便貯金については,

法律により,相続による分割帰属が認められないので,

①相続人全員の同意があれば,一括払戻しが可能ですが,

②相続人全員の同意がなければ,

預け入れの日から10年経過していなければ,一括払戻しができません。



*下記の判例は,定額郵便貯金について,共同相続人間で争いになった事例


平成22年10月08日 最高裁判所第二小法廷判決

判示事項

裁判要旨 共同相続人間において,定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えについては,その帰属に争いがある限り,確認の利益がある


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=80749&hanreiKbn=01

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2010年11月13日土曜日

遺留分減殺請求20

遺留分減殺請求があった場合の,不動産の登記名義の変更ですが,

①まだ相続登記がされていない場合は,

相続を原因として,遺留分権利者名義の所有権移転登記を申請することができます。

②すでに遺留分を侵害している登記がされている場合は,

遺留分減殺を原因として,所有権移転登記を申請します。

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2010年11月12日金曜日

遺留分減殺請求19

相続人の1人に対し,財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合,

特段の事情がない限り,

相続人の間においては,相続債務についても,当該相続人がすべて承継したと解されるので,

遺留分の侵害額の算定にあたり,

遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することはできません。

(例)相続財産につき,プラスの財産1000万円,マイナスの財産800万円

相続人は,子ABの場合で,Aに財産全部を相続させる旨の遺言がありました。

遺留分は,AB各4分の1なので,1000万円-800万円×4分の1=50万円になります。

遺留分の侵害額の計算につき,甲説と乙説があります。

最高裁判所は,下記の判決のとおり,乙説を採用しました。

甲説:相続債務は,債権者との間では,ABが法定相続分である2分の1ずつ,

各400万円負担することになるので,

遺留分侵害額は,

遺留分の50万円に,相続債務の負担額400万円を加えた450万円になるとする説。

乙説:相続債務は,相続人のABの間では,Aが全額負担するので,

遺留分の侵害額は,

遺留分の50万のみになるという説。

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平成21年03月24日最高裁判所第三小法廷判決民集 第63巻3号427頁

判示事項
相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否


裁判要旨
相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,相続人間においては当該相続人が相続債務もすべて承継したと解され,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない。




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2010年11月11日木曜日

遺留分減殺請求18

遺留分減殺請求を受けた受遺者が,

民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,

遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求も受けていない場合,

受遺者は,遺留分権利者を相手として,

弁償すべき価額の確定を求める訴えを起こすことができます。

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平成21年12月18日最高裁判所第二小法廷判決民集 第63巻10号2900頁

判示事項
遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,目的物の現物返還請求も価額弁償請求も受けていない場合において,受遺者の提起した弁償すべき額の確定を求める訴えに確認の利益があるか


裁判要旨
遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において,弁償すべき額につき当事者間に争いがあり,受遺者が判決によってこれが確定されたときは速やかに支払う意思がある旨を表明して,弁償すべき額の確定を求める訴えを提起したときは,受遺者においておよそ価額を弁償する能力を有しないなどの特段の事情がない限り,上記訴えには確認の利益がある。


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2010年11月10日水曜日

遺留分減殺請求17

遺留分権利者の遺留分減殺請求(現物返還請求)に対し,

受贈者または受遺者が民法1041条1項に基づく,

現物返還に代わる価額弁償の意思表示をしてきたので,

それを受けて,遺留分権利者が,

受贈者または受遺者に対し,価額弁償を請求した場合,

遺留分権利者は,現物返還請求権を遡って失いますが,

価額賠償請求権を確定的に取得します。

そして,価額賠償請求権を確定的に取得した日の翌日から,

遺留分権利者は,価額賠償請求権の遅延損害金も請求できるようになります。

遺留分権利者       受贈者または受遺者

①遺留分減殺請求→

(現物返還請求)

           ←    ②価額弁償の意思表示

③価額弁償請求 →    

=遺留分権利者は,現物返還請求権は失うが,

価額賠償請求権を取得します。

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平成20年01月24日最高裁判所第一小法廷判決民集 第62巻1号63頁

判示事項
受遺者から民法1041条1項の規定による価額弁償の意思表示を受けた遺留分権利者が受遺者に対し価額弁償を請求する旨の意思表示をした場合において,当該遺留分権利者が遺贈の目的物について価額弁償請求権を確定的に取得する時期


裁判要旨
遺留分減殺請求を受けた受遺者が民法1041条1項の規定により遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をし,これを受けた遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,その時点において,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得する。




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2010年11月9日火曜日

遺留分減殺請求16

遺留分権利者の遺留分減殺請求に対し,

受贈者または受遺者は,民法1041条1項に基づき,

現物返還に代えて価額賠償ができます。

受贈者または受遺者は,

ある財産については,遺留分権利者に現物返還すること,

他の財産については,遺留分権利者に価額賠償すること

を選択することができます。

ーーーーーーーーーーー

平成12年07月11日最高裁判所第三小法廷判決民集 第54巻6号1886頁

判示事項
一 遺留分減殺の対象とされた贈与等の目的である各個の財産について価額弁償をすることの可否

二 共有株式につき新たに単位未満株式を生じさせる現物分割を命ずることの可否


裁判要旨
一 受贈者又は受遺者は、遺留分減殺の対象とされた贈与又は遺贈の目的である各個の財産について、民法一〇四一条一項に基づく価額弁償をすることができる。


二 いわゆる単位株制度の適用のある株式の共有物分割において、新たに単位未満株式を生じさせる現物分割を命ずることはできない。




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2010年11月8日月曜日

遺留分減殺請求15

遺留分権利者の遺留分減殺請求に対し,

受贈者または受遺者は,民法1041条に基づき,

現物返還に代わる価額弁償をすることができます。

受贈者または受遺者が,

現物返還義務を免れるには,価額弁償の意思表示では足りず,

①価額弁償を現実に履行するか,②価額弁償のための履行の提供が必要です。

①は,実際に,現金で渡したこと又は振り込んだこと。

②は,実際に,遺留分権利者に(受け取ったかどうかを問わず)現金を持っていったことなど。

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昭和54年07月10日最高裁判所第三小法廷判決民集 第33巻5号562頁

判示事項
特定物の遺贈につき履行がされた場合に民法一〇四一条の規定により受遺者が遺贈の目的の返還義務を免れるためにすべき価額弁償の意義


裁判要旨
特定物の遺贈につき履行がされた場合に、民法一〇四一条の規定により受遺者が遺贈の目的の返還義務を免れるためには、価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければならず、価額の弁償をすべき旨の意思表示をしただけでは足りない。


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2010年11月7日日曜日

遺留分減殺請求14

遺留分権利者の遺留分減殺請求に対し,

受贈者又は受遺者は民法1041条1項に基づき,

現物返還ではなく,金銭による価額弁償をすることができます。

価額弁償の価額算定の基準時は,

原則として,現実に弁償される時ですが,

訴訟にあっては,事実審の口頭弁論終結時になります。

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昭和51年08月30日最高裁判所第二小法廷判決民集 第30巻7号768頁

判示事項
遺留分権利者が受贈者又は受遺者に対し民法一〇四一条一項の価額弁償を請求する訴訟における贈与又は遺贈の目的物の価額算定の基準時

裁判要旨
遺留分権利者が受贈者又は受遺者に対し民法一〇四一条一項の価額弁償を請求する訴訟における贈与又は遺贈の目的物の価額算定の基準時は、右訴訟の事実審口頭弁論終結の時である。

最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=54223&hanreiKbn=01

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2010年11月6日土曜日

遺留分減殺請求13

遺留分減殺請求の対象となる贈与の目的物の価額は,

相続開始時を基準とします。

不動産だけでなく,金銭の場合も,

贈与時の価額を,

相続開始時の貨幣価値に換算して評価します。
ーーーーーーーーー

昭和51年03月18日最高裁判所第一小法廷判決民集 第30巻2号111頁

判示事項
相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合と受益額算定の方法

裁判要旨
相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合には、贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもつて評価すべきである。


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2010年11月5日金曜日

遺留分減殺請求12

遺留分減殺請求の対象となる贈与について,

受贈者が,

当該贈与に基づいて目的物の占有を取得し,

民法162条の取得時効の要件を満たし,

取得時効を援用した場合でも,

遺留分権利者の権利の帰属は妨げられません。

遺留分減殺請求の対象となる贈与は,

受贈者が相続人の場合は,

数十年前の贈与ということもあります。

遺留分は,相続人の最低の取り分ということで,

受贈者の時効取得の反論に勝つことができます。

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平成11年06月24日最高裁判所第一小法廷判決民集 第53巻5号918頁

判示事項
遺留分減殺の対象としての要件を満たす贈与に基づき目的物を占有した者の取得時効の援用と減殺請求による遺留分権利者への右目的物についての権利の帰属

裁判要旨
遺留分減殺の対象としての要件を満たす贈与を受けた者が、右贈与に基づいて目的物の占有を取得し、民法一六二条所定の期間、平穏かつ公然にこれを継続し、取得時効を援用したとしても、右贈与に対する減殺請求による遺留分権利者への右目的物についての権利の帰属は妨げられない。



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2010年11月4日木曜日

遺留分減殺請求11

遺留分減殺請求権の行使によって取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は,
時効によって消滅しません。


しかし,遺留分減殺請求権を行使した後でも,


受贈者又は受遺者は,遺留分減殺請求の目的物を譲渡することができます。


しかも,遺留分減殺請求権の行使後の目的物の譲受人に対して,


再び,遺留分減殺請求権を行使することはできません。


その結果,遺留分権利者と目的物の譲受人の関係は,


民法177条により,


登記名義を先に備えた方が,勝つことになります。



つまり,


遺留分減殺請求の相手方である受贈者または受遺者との関係では,


遺留分権利者が,登記名義を備えなくても勝ちます。


しかし,遺留分減殺請求権の行使後の目的物の譲受人との関係では,


登記名義を備えないと,勝てません。


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昭和35年07月19日最高裁判所第三小法廷判決民集 第14巻9号1779頁

判示事項
一 減殺請求後の転得者に対する減殺請求の許否。


二 転得者に対する減殺請求権の消滅時効の起算点。


裁判要旨
一 受贈者に対し減殺請求をしたときは、その後に受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対してさらに減殺の請求をすることはできない。


二 受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の消滅時効の期間は、遺留分権利者が相続の開始と贈与のあつたことを知つた時から起算すべきである。


最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=53639&hanreiKbn=01



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2010年11月3日水曜日

遺留分減殺請求10

遺留分減殺請求権の行使によって取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は,


時効によって消滅しません。



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平成7年06月09日最高裁判所第二小法廷判決集民 第175号549頁

判示事項
遺留分減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権と消滅時効


裁判要旨
遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない。


最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=76118&hanreiKbn=01


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2010年11月2日火曜日

遺留分減殺請求9

遺留分減殺請求権は,


遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから,


1年以内に行使しないと,時効により消滅します。


1年以内に,遺留分減殺請求権を行使すれば,


行使の結果生じる,目的物の返還請求権や所有権移転請求権などの物権的請求権は,


1年の消滅時効に影響されません。




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昭和57年03月04日最高裁判所第一小法廷判決民集 第36巻3号241頁


判示事項
遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等と民法一〇四二条所定の消滅時効



裁判要旨
遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等は、民法一〇四二条所定の消滅時効に服しない。



最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=54236&hanreiKbn=01


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2010年11月1日月曜日

遺留分減殺請求8

遺留分減殺請求は,


複数の相続人に対する遺贈の場合,


遺贈された財産の価額のうち,受遺者(もらった人)の遺留分額を超過した部分のみが,


対象になります。


つまり,受遺者(もらった人)の遺留分額を超過した部分というのは,


受遺者も相続人として遺留分を有するので,



他の相続人の遺留分減殺殺請求により,


自己の遺留分が侵害されたら,


受遺者も遺留分を侵害されたとして,遺留分減殺請求権を行使することになり,


循環に陥るからです。


(例)遺産が400万円,相続人は子ABCD,


遺言で,Aは250万円,Bは100万円,Cは50万円取得し,Dは0円の場合。


Dの遺留分額は,4分の1×2分の1=8分の1=50万円


(ABCDの各遺留分額は,50万円)


Dが,ABC全員に案分して50万円の遺留分減殺請求すると,


A:B:C=5:2:1なので,


Aに31万2500円,Bに12万5000円,Cに6万2500円請求することになります。


しかし,そうなると,


Cは遺留分額と同額の50万円しか遺贈されていないので,


Dに6万2500円払うと,Cの遺留分は6万2500円侵害されることになります。


Cは,遺留分を侵害されたとして,遺留分減殺請求をすることになりますが,


CがDも含めて遺留分減殺請求すると,またDの遺留分が侵害されてしまいます。



そこで,最初のDの遺留分減殺請求の時点で,


Dは,遺留分額を超過して遺贈されていないCについては,


遺留分減殺請求を行使できないとすれば,問題が解決します。


そうすると,遺留分額を超過した部分が基準になるので,


Aは250万円-50万円(遺留分額)=200万円


Bは100万円-50万円(遺留分額)=50万円


A:B=4:1なので,

Dは,遺留分額50万円のうち,


Aに50万円×5分の4=40万円,


Bに50万円×5分の1=10万円


それぞれに請求できます。


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平成10年02月26日最高裁判所第一小法廷判決民集 第52巻1号274頁

判示事項
相続人に対する遺贈と民法一〇三四条にいう目的の価額



裁判要旨
相続人に対する遺贈が遺留分減殺の対象となる場合においては、右遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分額を超える部分のみが、民法一〇三四条にいう目的の価額に当たる。





最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52814&hanreiKbn=01



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