2015年12月25日金曜日

混同を原因とする抵当権抹消登記の登記義務者



登記研究814号(平成27年12月号)の質疑応答【7972】によりますと,


「抵当権者が抵当不動産の所有権を取得し,所有権の移転の登記後に死亡した場合には,混同による抵当権の抹消の登記の申請における登記義務者は,当該抵当権者の相続人全員である。


なお,質疑応答4617(登記研究252号67頁)の取扱いは,変更されたものと了知願います。」


この質疑応答は,抵当権の事案ですが,抵当権以外の権利の混同抹消にも影響をあたえることになるでしょう。


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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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2015年12月4日金曜日

混同と権利混同(抹消原因)



(1)所有権移転請求権仮登記の抹消及び抵当権の抹消に関する登記研究の質疑応答を読む限り,


「混同」と「権利混同」の用語は,同義語として使用されているようです。


先日,札幌法務局へ所有権移転請求権仮登記の抹消を年月日権利混同で申請したところ,年月日混同で登記されていました。




(2)ところが,不動産登記記録例について(通達)(平成21年2月20日法務省民二第500号) を見ると,


六 抵当権の登記の抹消 3 権利の混同 には,


権利の混同というタイトルにもかかわらず,「原因 平成年月日混同」 と記録されています。


一 所有権に関する仮登記 13 仮登記義務者の一人が仮登記された移転請求権の一部移転を受けた場合の権利混同による登記の目的の変更の登記 には,


タイトルどおり,「原因 平成年月日共有者中乙某持分について権利混同」 と記載されています。


「混同と権利混同」の用語が区別されているようです。




(3)登記研究784号 平成25年6月号 122頁 実務の視点によりますと,


抵当権抹消の登記原因について,


混同を使用する場合と権利混同を使用する場合の各質疑応答が例示されており,質疑応答には用語の統一性がありません。


しかし,その解説文である実務の視点の本文中には,意識的に「混同」という用語のみが使用されています。




(4)登記研究761号(平成23年7月号)の質疑応答の質問者は,所有権移転請求権仮登記の抹消について,「混同」を登記原因とすべきと考えますが,


と質問しており,「権利混同」ではないと考えているようです。


(5)香川保一 元最高裁判所裁判官は,新不動産登記法逐条解説(二) 1032頁<テイハン>において,所有権移転請求権仮登記の仮登記権利者が,不動産の所有権を取得して所有権移転登記を受けた場合は,民法179条の物権混同により,所有権移転登記請求権は消滅すると記載しています。(なお,最判昭和57年3月25日・民集36巻3号446頁に注意
最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54251


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権利混同を原因とする所有権移転請求権仮登記抹消登記の添付書類(登研531号)

《添付書面(登記済証)》《添付書面(印鑑証明書)》《仮登記抹消》

 ○要旨 A所有不動産に対して、Bのために所有権移転請求権仮登記がされた後にBがAを相続した場合の当該仮登記の抹消登記申請は、権利混同を原因としてBの単独申請によることとなるが、登記済証及び印鑑証明書を添付することを要する。

 ▽問 A所有不動産に対して、Bのために所有権移転請求権保全仮登記が設定された後にBがAを相続した場合の当該仮登記の抹消登記申請は、権利混同を原因としてBの単独申請によることとなるが、この場合、登記済証及び印鑑証明書の添付を要するものと考えますが、要しないとする質疑応答〔登研374号83頁(5603)〕もあり、いささか疑義がありますのでお伺いします。

 ◇答 御意見のとおりと考えます。

 
混同を登記原因として所有権移転請求権仮登記の抹消登記を申請する場合における印鑑証明書の添付の要否(登研529号)

《添付書面(印鑑証明書)》《仮登記抹消》

 ○要旨 混同を登記原因とする所有権移転請求権仮登記の抹消登記を申請する場合において、登記権利者と登記義務者が同一人のときでも、登記義務者の印鑑証明書の添付を要する。

 ▽問 所有権移転請求権仮登記を混同を登記原因として抹消登記申請する場合には、登記権利者兼登記義務者たる仮登記名義人の印鑑証明書の添付は必要ないものと考えますが、いかがでしょうか。

 ◇答 必要と考えます。

 

仮登記の抹消と申請人(登研360号)

《仮登記抹消》

 ○要旨 1 A所有の不動産に対し、Bが所有権移転請求権保全の仮登記をした後、BがAを相続した場合の仮登記の抹消原因は「権利混同」であり、Bの単独申請による。

2 A所有の不動産に対し、Bが所有権移転請求権保全の仮登記をした後、Bが他の原因により所有権移転の登記を受けた場合の仮登記の抹消原因は「権利混同」であり、Bの単独申請による。

 ▽問 (1) A所有の不動産に対し、Bが所有権移転請求権保全の仮登記をした後、BがAを相続し当該不動産の相続による所有権移転の登記をした場合の、右の仮登記を抹消する登記原因は「権利混同」となるか。また登記申請はBの単独申請となるか。

(2) A所有の不動産に対し、Bが「売買予約」を原因として所有権移転請求権保全の仮登記をした後、Bが「贈与」を原因として所有権移転の登記を受けた場合の、右の仮登記を抹消する登記原因は「権利混同」となるか。また登記申請は単独となるか。

 ◇答 いずれも御意見のとおりと考えます。なお、登研65号30頁(1247)、同162号48頁(3454)参照。


仮登記名義人が仮登記義務者を相続した場合の仮登記抹消の登記原因の記載(登研65号)

《仮登記抹消》

 ○要旨 甲が乙所有不動産につき、所有権移転請求権保全の仮登記をしたまま死亡した場合において、乙が甲を相続した場合の当該仮登記の抹消の登記原因は、「何年何月何日(被相続人甲死亡の日)権利混同」と記載する。

 ▽問 乙(甲の長男)所有不動産に対し、甲(乙の父)は所有権移転請求権保全の仮登記をなしたるところ、昭和15年死亡し乙はその家督相続をしたが今回その仮登記を抹消せんとするのですがその登記原因の書き方が分りませんので、御教示願います。なお、その根拠となる通牒でもありますなら併せて御示し下さい。

 ◇答 「何年何月何日(被相続人死亡の日)権利混同」と記載すること。なお、これについては、民事局長の通達等はありません。







抵当権が混同によって消滅する場合(登研520号)


《抵当権抹消》
 ○要旨 抵当権者が抵当権の目的である不動産を取得した場合であっても、後順位抵当権が消滅しない限り、抵当権は混同により消滅せず、その後、後順位抵当権が消滅したときに初めて消滅する。
 ▽問 ある不動産につき設定登記を経由した抵当権者が、その後当該不動産の所有権を取得した場合には、後順位に抵当権がある場合でも「年月日混同」を登記原因としてその登記の抹消ができるものと考えますが、いかがでしょうか。
 ◇答 消極に解します。なお、後順位抵当権がその後に消滅した場合には、その時に混同により消滅するものと考えます(民法179条1項ただし書参照)。
 


18

権利混同による抵当権の抹消登記と登記義務者の権利に関する登記済証の要否(登研130号)

《添付書面(登記済証)》《抵当権抹消》


 ○要旨 抵当権者が抵当不動産の所有権を取得し、更に第三者に売買した後右抵当権登記を権利混同を原因として新所有者と共同して抹消する場合、登記義務者の権利に関する登記済証の添付を要する。


 ▽問 抵当権者が売買により抵当不動産の所有権取得の登記をした後、更に売買によりその不動産の所有権を第三者に移転し、その登記をした場合、権利混同を登記原因として現在の所有者と抵当権者との共同申請による抵当権の抹消登記についても、登記義務者の権利に関する登記済証の提出を要すると考えますが、いかがでしょうか。もし要するものとすれば、当該登記済証を滅失した場合は、法44条、細則46条の規定は勿論、細則42条ノ2の規定の適用もありますか。

 
◇答 前段、後段いずれも御意見のとおり。



混同により消滅した抵当権設定登記のある不動産を第三者に移転した場合の抵当権抹消の登記原因(登研20号)


《抵当権抹消》《申請書(記載)》《抹消登記(申請)》


 ○要旨 混同により消滅した抵当権設定の登記のある不動産を第三者に移転した場合の抵当権抹消の登記原因は、混同である。


 ▽問 甲 混同による抵当権の抹消登記の申請をなさずして、当該不動産の所有権を乙に移転した後甲及び乙双方においてこれが抵当権抹消の登記申請をする場合、その登記原因につき混同によるを相当とする旨登研3号20頁(20)で回答せられてありますところ、これに関して左の反対説がありますがいかがでしょうか、御教示下さい。


 反対説 既に第三者たる乙に所有権を移転したるものなれば民法520条本文にいわゆる債権及び債務が同一人に帰したため権利が既に失われたものであって、かつ、新たに所有権を取得した第三者たる乙は抵当権抹消の登記義務を承継していないから同条本文の規定に該当しない。したがって、この場合は、むしろ同条ただし書の規定によるべきものであって、この場合に限り放棄を登記原因とするを相当とする。


 ◇答 登記原因は混同である。

(理由)民法520条は債権の混同の規定であり、本問の場合は物権の混同の規定である同法179条の規定の適用を受けるべきものであって、抵当権者甲がその不動産の所有権を取得した当時同条1項本文の規定により甲の抵当権は既に消滅したものであるから、その抵当権の抹消の登記の登記原因は混同であり、これは甲が乙に所有権を譲渡した後に登記の申請をする場合においても同様である。

なお、右179条1項ただし書の規定は、例えば、抵当権者がその権利の目的である不動産の所有権を取得した場合においてその不動産につき次順位の抵当権があるとき、地上権者がその権利の目的である不動産を取得した場合においてその地上権が抵当権の目的となっているとき等にも先順位の抵当権や地上権を混同により消滅させると、後順位の抵当権者が不当に利益したり、地上権の抵当権者が不当に不利益を受けたりすることとなるので、かかる場合には混同の規定の適用を排除したものであって、本問の場合がこれに該当しないことは勿論である。

 

23

混同により消滅する抵当権(登研15号)

《抵当権抹消》

 ○要旨 抵当権者が所有権者となっても、後順位抵当権が消滅しなければ、抵当権は混同により消滅せず、その後順位抵当権が消滅したときに始めて消滅する。

 ▽問 甲(1番抵当)と乙(2番抵当)のため抵当権設定登記のしてある不動産を、甲が売買によりその所有権を取得したときは、その後乙の抵当権の消滅の時に甲の抵当権は、権利混同によって消滅するか。

 ◇答 御意見のとおり。



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2015年12月1日火曜日

月報司法書士11月号



記事中に,10年以上前の六法を使用しているであろうために,条文の改正を見過ごしている部分を発見しました。


20年以上前の最高裁判決で類推適用が認められていたため,判例六法なら20年以上前のものでも,誤解に気づくことができた事案です。


この条文,なんかおかしいなぁとは思わなかったのか?,というのが本音です。


最新の六法による条文チェックは必須です(自戒をこめて)。


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2015年11月26日木曜日

市街化調整区域と地区計画

市街化調整区域は,原則として,建築物の建築が禁止されています。


しかし,例外として,建築物を建築できる場合があります。


たとえば,地区計画が定められている場合は,工事の30日前までに届出をし,かつ,建築許可を受けることにより,建築物を建築することができます(都市計画法第34条第10号)。


札幌市の場合は,都市計画情報提供サービスにより,都市計画情報やその他の土地利用規制等の情報をインターネットで閲覧することができます。


カーソル(矢印)が,調査する土地とズレた位置にある場合は注意が必要です。たとえば,カーソルが道路を一本でも隔てた位置にあるだけで,都市計画情報がまったく変わってくるからです(自戒をこめて)。


都市計画情報提供サービスには,誤差がありますし,変更が直ちに反映されていない場合などもありますので,やはり,札幌市役所などの窓口に行って,窓口係員の指導のもと,調査をしてください。


なお,札幌市では,地区計画の計画書及び計画図をインターネット上で閲覧することができます。


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2015年11月20日金曜日

相続登記の更正・抹消の登記



登記研究812号 平成27年10月号 127頁 実務の視点


に解説があります。




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遺言書の破棄に関する判例



遺言書の文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで1本の斜線が引かれていたところ(ただし,元の文字は判読できる状態となっている。),

最高裁は,この斜線は,遺言者が故意に引いたものであるとの事実認定に基づいて,

本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は,民法1024条前段所定の故意に遺言書を破棄したときに該当するとして,

遺言者は,本件遺言を撤回したものとみなされる,と判断しました。

なお,遺言書の一部を抹消した後にも,なお元の文字が判読できる状態であれば,民法968条2項所定の方式を具備していない限り,抹消としての効力を否定するという判断もあり得る,とのことです。

遺言者の真意の探求は困難を極めますので,やはり,遺言者は,遺言を撤回する場合は,遺言書を破るなり,燃やすなりして,遺言の撤回が明白になるような方法を取るべきでしょう。

第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。     


第千二十四条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。


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事件名 遺言無効確認請求事件      

裁判年月日  平成27年11月20日      

法廷名  最高裁判所第二小法廷

裁判種別  判決     

結果   破棄自判     

判例集等巻・号・頁
       

判示事項

裁判要旨
 遺言者が自筆証書である遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為が民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し遺言を撤回したものとみなされた事例

参照法条

全文 最高裁判所HP
全文


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2015年10月25日日曜日

中間及び最終の登記原因に相続が含まれる場合

登記研究811号 平成27年9月号 実務の視点187頁以下によると,


「判決による場合であっても,中間及び最終の登記原因に相続,遺贈,若しくは死因贈与が含まれている場合には,中間省略の登記ができないとされている(昭和39年8月27日付け民事甲第2885号民事局長通達)。


したがって,中間又は最終の登記原因に相続が含まれている中間省略登記については、登記義務者のうち一部の者が調停、残りの者は判決により確定した場合、調停調書及び判決主文に同一の登記原因日付が明示してあっても、当該登記申請は受理できない(登記研究530号質疑応答)。」




ところで,登記研究810号 平成27年8月号 藤原勇喜 登記原因証明情報と不動産登記をめぐる諸問題(4) 98頁以下によると,


「昭和39年の先例は,判決主文に登記原因が明示されていない場合についてのものであるから,判決主文に登記原因が明示されている場合には,中間又は最終の登記原因に相続等が含まれているときでも,その判決による登記申請は受理されると解される。


昭和35年2月3日民事甲第292号法務省民事局長回答は,AからBが買い受けた不動産について,Bの相続人Cから,Aに対して上記売買を登記原因(その日付はその売買の日付)としてCへの所有権移転登記手続を命ずる判決により直接C名義にする所有権移転登記申請は受理して差し支えないとしている。この先例の場合,最終の登記原因に相続が含まれているが,判決主文のとおり登記することができるとしている。


判決主文に登記原因が明示されている場合には,その判決主文のとおり登記せざるを得ないということではないかと考えられる。この場合,任意の申請による場合は,AからBへの売買の登記をした後にBからCへの相続による登記をすべきと考えられる。


なお,BC間の所有権移転が遺贈又は死因贈与である場合も同様に解することができるかどうかについては疑問がある。


前掲昭和39年の先例は,中間及び最終の登記原因に相続等が含まれている場合には,判決による登記申請であっても受理しないとしている。その理由は必ずしもはっきりしないところである。その理由を不動産登記法62条(改正前不動産登記法42条)の趣旨に求める考え方,あるいは相続を証する書面等により判断すべきものとして予定しているものであり,このことに重点を置く考え方がある。いずれも登記官の判断に重点を置く考え方であり,大変意義のある考え方である。」






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*平成29年7月1日追記
登記研究832号 平成29年6月号 藤原勇喜 登記原因証明情報と不動産登記をめぐる諸問題(20)73頁以下では,


前掲昭和39年の先例と登記研究530号質疑応答に言及した上で,102頁には,
「(略),判例の今後の動向等も注目されるところである。改正後の不動産登記法は,旧不登法からの全面改正により物権変動原因(過程と態様)の公示の要請を強めており(不動法61条),そのような状況の中で,最判平成22年12月16日(民集64巻8号2050頁)は,(略),本判決のように登記名義人・中間者の同意の有無を問うことなしに中間省略登記の請求を否定しており,従来の判例の立場を実質的に修正したもの」と評されている(小粥太郎「特約によらない中間省略登記請求権」民法判例百選①総則・物権[第7版]105頁)」


と記載されていました。なお,前掲昭和35年2月3日の先例には言及していませんでした。昭和35年7月12日民甲1580号と同民甲1581号について言及していました。


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以下は,私見である。


上記の藤原勇喜の解説には,登記研究530号質疑応答に対する言及がなかったこと,


登記研究530号質疑応答は,登記原因証明情報の一部が調停調書とされており,全部が判決の事例ではないが,平成4年に出された質疑応答であること,


登記研究平成27年9月号の実務の視点では,判決主文における登記原因の明示の有無に言及することなく,昭和35年2月3日の先例を引用して,「判決による場合であっても,中間及び最終の登記原因に相続,遺贈,若しくは死因贈与が含まれている場合には,中間省略の登記ができないとされている。」と記載していることから,


判決主文に登記原因が明示されていても,中間及び最終の登記原因に相続,遺贈,若しくは死因贈与が含まれている場合には,中間省略の登記ができないと解する。


(登記研究766号=平成23年12月号の実務の視点159頁も参照)
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 昭和35年2月3日 民事甲292
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売主から直接買主の相続人名義にする場合
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〔要旨〕 売買登記未了のまま買主が死亡し、その相続人から売主に対し登記手続の履行を請求した場合において、これを認容した判決主文中、売主(被告)から直接買主の相続人(原告)名義に登記すべき旨が明らかにされているときは、その判決正本により、相続人名義に登記をすることができる(いわゆる中間省略の登記が可能であるとされた事例である)。

(照会) 被相続人乙が昭和24年6月1日甲から買受けた不動産につき、乙の相続人丙から左記主文の判決正本を添付して前記売買を原因として直接自己名義に所有権移転登記申請があった場合、受理して差し支えないものと考えますが、いささか疑義がありますので、何分の御垂示賜りたく、お伺いいたします。


被告(甲)は原告(丙)に対し○○○○の不動産につき、昭和24年6月1日附売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。(昭和34年6月20日東京地方裁判所民事第14部判決)


(回答) 貴見のとおり取り扱ってさしつかえないものと考える。(昭和35年2月3日民事甲第292号・民事局長回答)


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 昭和39年8月27日 民事甲2885
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主文に登記原因の明示がない判決による中間省略登記の可否
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〔要旨〕 判決主文に登記原因の明示がなく、その理由において(1)所有権が甲から乙、乙から丙へといずれも売買により移転したものであること(2)中間登記の省略について乙の合意が成立していること(3)登記原因の日付は乙から丙に移転した日であることが認められる場合で、中間及び最終の登記原因に相続又は遺贈若くは死因贈与が含まれない場合には、当該判決正本を添付し、最終の登記原因及びその日付をもって、甲から直接丙への所有権移転の登記を申請することができる。

(照会) 所有権が数次にわたり移転した場合、いわゆる中間登記を省略して所有権移転の登記ができるのは、判決主文に登記原因が明示されている場合に限ると解されていますが(昭和35年7月12日民事甲第1580号貴職回答)、判決主文には「甲は丙に対し、A不動産につき所有権移転登記手続をせよ」とあり、登記原因の明示がなく、その理由中より、
1 所有権が甲から乙、乙から丙へいずれも売買により移転したものであること。
2 中間登記の省略について乙の合意が成立していること。
3 登記原因の日付は、乙から丙に移転した日であること。
が認められる場合においても、当該判決正本を添付して甲から直接丙に所有権移転登記の申請があったときは、受理してさしつかえないものと考えますが、前記御回答の次第もあり疑義がありますので、何分の御垂示を賜わりたく、お伺いいたします。


(回答) 所問の場合のように中間及び最終の登記原因に相続又は遺贈もしくは死因贈与が含まれない場合において、最終の登記原因及びその日付をもって申請があったときは、受理してさしつかえないものと考える。(昭和39年8月27日民事甲第2885号・民事局長通達)


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判決と調停による中間省略登記の申請(登研530号)
《相続登記手続(総説)》《添付書面(登記原因証書・申請書副本)》
 ○要旨 中間又は最終の登記原因に相続が含まれている中間省略登記については、登記義務者のうち一部の者が調停、残りの者は判決により確定した場合、調停調書及び判決主文に同一の登記原因日付が明示してあっても、当該登記申請は受理できない。


 ▽問 中間又は最終の登記原因に相続が含まれている中間省略登記について、登記義務者のうち一部の者については調停により、残りの者については判決手続により確定した場合、調停調書及び判決主文に同一の登記原因日付が明示されていれば、当該調停調書及び判決正本を登記原因証書として1件で当該登記の申請はできるものと考えますが、いかがでしょうか。
 ◇答 中間又は最終の登記原因に相続が含まれていることから、消極に解します。



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昭和35年7月12日 民事甲1580
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判決による中間省略の登記
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〔要旨〕 主文において甲から乙への所有権移転登記手続を命ずる判決の理由中に、中間取得者Aの存することが明らかであっても、当該判決において登記原因が明示されている限り、Aのための登記を省略して、主文のごとき登記をすることができる。
(照会) 甲は乙のために所有権移転登記手続をなすことを命ずる判決の理由中に、該所有権は甲からA、Aから乙に移転していることが明らかである場合、該判決正本を登記原因を証する書面として、甲から直接乙に対する所有権移転登記申請をすることは、所謂中間省略の登記申請となりますので受理できないものと考えますが、いささか疑義がありますので、何分の御垂示を賜りたく御伺いいたします。

(回答) 判決において登記原因を明示して所有権移転登記手続を命じている場合には、当該判決による登記の申請を受理してさしつかえないものと考える。(昭和35年7月12日民事甲第1580号・民事局長回答)

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昭和35年7月12日 民事甲1581
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数次転売の場合の中間処分登記の省略
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〔要旨〕 甲、乙、丙、丁と順次所有権が移転したにもかかわらず登記名義が甲である場合において、甲は丁に対し登記手続をすべき旨の確定判決を得て、丁から甲を登記義務者とする所有権移転登記の申請があったときは、これを受理すべきである。
(照会) 所有権が甲から乙、乙から丙、丙から丁へと順次売買により移転したが、所有権の登記名義人が甲に存する場合、「甲は丁に対し別紙目録記載の不動産につき昭和何年何月何日付売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。」との確定判決(もっとも、判決の内容において、甲、乙、丙全員が中間登記の省略につき合意が成立していること、原因日付は丙から丁に移転した日であることが認められる。)に基き、丁から登記申請があったとき受理してさしつかえないでしょうか。いささか疑義がありますので、至急何分の御指示をお願いいたします。

(回答) 受理すべきものと考える。(昭和35年7月12日民事甲第1581号・民事局長回答)
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2015年10月8日木曜日

遺産分割協議の引換え給付と相続登記




当事務所では,遺産分割協議の引き換え給付(代償分割:相続分の売買)による相続登記の依頼を承っております。


不動産について相続による名義変更(相続登記)をしたにも関わらず,お金を支払ってもらえないとのトラブルを防止することができます。


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登記研究810号 平成27年8月号 実務の視点 152頁によると,


共同相続人中のある者が,生活に窮した場合に他の者から援助を受け得ることを条件として,相続財産の分譲を受けないもものとして成立した遺産分割の協議は有効であり(昭和31年1月31日付け民事甲第193号民事局長回答),


「長男甲が,次男乙に金500万円を支払ったときは,甲が後記の不動産を相続する。」,


「長男甲は,後記の不動産を相続する。ただし,甲は,相続することの引換えとして乙に金500万円を支払う。」,


旨の記載がある遺産分割協議書に基づいて,相続による所有権の移転の登記の申請をする場合であっても,


反対給付を履行したことを証する情報としての乙の領収書等を提供することを要しない(質疑応答 登記研究602号177頁)。


反対給付(現金の支払い)が履行されていないにもかかわらず,相続登記がされた場合であっても,民法541条に基づき遺産分割協議を債務不履行解除をすることは困難だと思われます(最判平元年2月9日民集43巻2号1頁参照)。


よって,相続登記の抹消を請求することはできません。


第三者である司法書士が関与することで,


反対給付の履行(現金の受領)を確保したうえで,必要書類を添付して法務局に相続登記を申請するという手順を踏むことができますので,


代償分割(相続分の売買)による遺産分割協議に基づき相続登記をする場合は,司法書士に依頼すべきでしょう。




異順位者の共有名義の相続登記の申請



登記研究810号 平成27年8月号 実務の視点148頁によると,


遺産の分割に関する規定は,共同相続人の共有に属する相続財産の分配の方法,効果等を定めたに過ぎないのであって,相続人の決定をすることまで認めたものではない。


したがって,被相続人甲が死亡し,その直系卑属乙及び丙を相続人とする相続(第1次相続)が行われ,次いで,乙が死亡し,その直系卑属A及びBを相続人とする相続(第2次相続)があった場合において,


丙とAとB間で,丙とAが共有名義人となる遺産分割協議を成立させても,丙とAは異順位の共同相続人であって,遺産分割協議によって同順位の相続人とすることはできないので,


「被相続人甲  登記原因 甲の死亡の日の相続」とする所有権の移転の登記は,1件の申請情報で申請することはできない(質疑応答 登記研究466号115頁)。


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2015年9月22日火曜日

遺言の落とし穴2



特定の相続人を除外して,残りの複数の相続人に対して相続分を指定して,遺言者のすべての相続財産を相続させる旨の遺言書が作成される場合があります。


しかし,この場合は,注意が必要です。


法定相続人A・B・Cのうち相続人Cを除外して,相続人AとBに対して相続分を指定して,遺言者のすべての相続財産を相続させる旨の遺言が作成されていた場合に,


Cを除いたAとBの遺産分割協議により,不動産甲についてAが単独相続する旨の協議が成立したとして,




当該遺言書及び遺産分割協議書(戸籍謄本・印鑑証明書)のみを添付して,不動産甲の相続登記の申請がなされたときは,


当該相続登記の申請は却下されます。


当該相続登記は,Cの遺留分減殺請求権の行使のないことが条件となるため,


Cの家庭裁判所の遺留分放棄許可書またはCの遺留分放棄証明書(印鑑証明書付き)の添付も必要となります。


なお,遺言者のすべての相続財産を単独の相続人に相続させるという内容の遺言書の場合は,即時権利移転効により,遺産分割協議を経ることなく,当該相続人が単独相続しますので,他の相続人の家庭裁判所の遺留分放棄許可書または遺留分放棄証明書(印鑑証明書付き)は,いずれも不要となります。


(登記研究810号 平成27年8月号 実務の視点138頁参照)


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2015年9月13日日曜日

抵当権設定登記がされている建物のとりこわし



建物に抵当権設定登記がされている場合において,


抵当権者に無断で建物をとりこわしたときは,


刑法262条により建造物損壊罪に該当します。


よって,建物をとりこわす場合は,登記事項証明書で差押えや物権の設定の有無を調査しましょう。


差押えや物権の設定がある場合は,登記を抹消するか権利者の承諾を得た上で,建物をとりこわしましょう。


解体業者は,登記事項証明書で依頼者が所有者であること,差押えや物権の設定の有無を調査したうえで,建物を解体しましょう。


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刑法


第二百六十条  他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

第二百六十二条  自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、又は賃貸したものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。

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