2009年7月26日日曜日

遺言書の発見

◇ メール相談を承ります:相談料5250円(前払い):3回まで回答いたします。相談内容を下記のメールアドレスまで送信ください。 soudann@ishihara-shihou-gyosei.com 

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相続が発生した場合,遺言書の保管者はもちろん,遺言書を発見した相続人についても,

なるべく早く,家庭裁判所に遺言書を提出する必要があります(「検認」といいます。)。

*ただし,家庭裁判所に対する検認手続きは,公正証書遺言の場合は不要です。

 (つまり,自筆証書遺言の場合は必要になります。)

 結局,家庭裁判所に対する検認手続きが必要になると,その分だけ,遺言執行(遺言内容の実現)を開始するのに時間がかかることになります。

 遺言書を発見した相続人が,家庭裁判所に対して検認手続きをすることなく,
遺言書を破棄,隠匿,偽造などをした場合,

 ①裁判所から,5万円以下の過料の制裁を受ける可能性(民法1005条)

 ②相続人の欠格事由に該当し,相続人の地位を失い,相続財産を取得できない可能性(民法891条)
 
  があります。

 明らかに,被相続人の遺言書だと認識できた場合は,開封することなく,家庭裁判所に遺言書を提出してください。
 よく分からず,開封してしまい,遺言書に気づく場合もあります。その場合も,家庭裁判所に提出してください。
 遺言書を読んで,自分に不利な遺言内容だからといって,破棄・隠匿・偽造すると相続欠格事由になります。そのような行為は,止めてください

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(遺言書の検認)
民法 第千四条  
 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

(過料)
第千五条  前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条  次に掲げる者は、相続人となることができない
 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

2009年7月24日金曜日

相続と破産

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住宅ローンで住宅を買ったが,給料が減額されて,支払が不能になった場合,

①住宅ローン特則付きの個人再生を裁判所に申し立てる

②破産を裁判所に申し立てる

の2つ方法があります。

ただし,①の再生は,住宅ローン「以外」の借金総額のみ減額できる制度なので,

そもそも,借金が住宅ローンしかない場合は,使いません。
住宅金融支援機構=旧住宅金融公庫や,銀行に対し,住宅ローンの返済金額の減額および返済期間の延長をお願いします。

②の破産は,住宅は手放すことになりますが,住宅ローンの支払もなくなります。
住居がなくなるので,実家で暮らすか,賃貸住宅に居住することになります。
通常(裁判所による競売ではなく,破産者本人が不動産の売却に同意する,いわゆる任意売却の場合)は,住宅の売却にあたり,引っ越しまでの猶予期間をもらえます。


さて,本題ですが,
再生手続や破産手続をした「後」に,親が亡くなって相続が発生した場合は,
当然ながら,相続財産を取得できます。

ポイントは,
再生をすれば,借金は減額されますし,
破産をすれば,借金は免責(0円)されます。

*税金などは,免責・減額されません。

その結果,取得した相続財産は,

破産の場合だと,相続財産-0円=相続財産の100%が手元に残ります。

再生の場合だと,相続財産-再生による減額借金=相続財産の?%が手元に残ります。

破産や再生を「しない」場合は,相続財産は,減額「されない」借金額への返済に充てられることになります。

つまり,法的手続き(破産・再生)を実行しておけば,借金が減った分について,相続財産による返済を免れるため,をするということになります。


似たような場合として,親・兄弟(親族)からの援助をしてもらう場合があります。

中途半端に,援助をしてもらって,借金の返済に充てても無駄です。
「とりあえず,借金の総額を減らしておこう。」,みたいな考えに基づくようですが,
法律的には,全くダメです。

法律的に,良い順番は,破産・再生などの法的手続きをした「」(借金を減らした後)に,援助することです。
この順番をまちがえては,いけません。

援助するなら,借金の返済ではなく,法的手続きへの報酬・費用に援助してください。

2009年7月21日火曜日

法律上の相続放棄

世間では,相続財産を一切もらわないという意味で,「相続放棄」という用語を使うことがあります。

法律上は,家庭裁判所で手続きをした場合のみ,相続放棄といいます。

したがって,ある相続人が,相続財産を独占する相続人に対して,

「私は相続財産は取得しません。」,と表明(書類に署名押印)しても,それは,法律上の相続放棄ではありません

法律上の相続放棄は,プラスの財産も「マイナスの財産も」含めた,すべての権利放棄,という効果が発生します。

これに対し,世間で言う相続放棄は,プラスの財産のみの権利放棄,という効果しか発生しません。
(本人は,プラスの財産を権利放棄するのだから,「マイナスの財産についても,支払い義務はない」。と思うことが多いようですが,間違いです。)

この違いが,目に見えて現れるのは,相続財産にマイナスの財産があった場合です。

*相続財産というのは,プラスの財産だけでなく,マイナスの財産も含むのです

相続財産を独占した相続人が,相続財産であるマイナスの財産(借金)を正常に返済していれば問題はありませんが,返済に行き詰まると,借金の貸付人(銀行など)は,相続財産を全く取得していない他の共同相続人に対して,借金の返済を請求してきます。

法律上,この貸付人の請求は,正当な権利行使として認められています。

つまり,共同相続人の間で,相続財産を独占した相続人が「プラスの財産を取得するが,責任をもってマイナスの財産も返済する」,という合意をしたとしても,法律上は借金の貸付人には通用しないということです。

悲惨な例は,相続財産を独占した相続人が,プラスの財産でマイナスの財産を返済せずに,プラスの財産を浪費するような場合です。

よって,相続財産を一切取得しない場合は,家庭裁判所で相続放棄の手続きをしましょう。


【注意】

相続登記(相続による不動産名義人の変更)に必要だからと言われて,
不動産を取得する相続人から
「特別受益証明書」,「相続分皆無証明書」,「相続分のないことの証明書」という書類が送られてくることがあります。
上記書類には,「わたしは,既に財産をもらっているから,相続分はありません。」みたいなことが記載してあります。しかし,上記書類に署名押印したとしても,法律上の相続放棄にはなりません

2009年7月19日日曜日

相続による預貯金口座の凍結

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金融機関が,預貯金の名義人が亡くなったことを知った場合,名義人の口座は凍結(払い戻しの停止)されます。

口座の凍結後は,原則として金融機関は,相続人全員の同意書(実印押印し,印鑑証明書を添付)がなければ,払い戻しに応じません。

ただし,金融機関によっては,相続人が「葬式費用」として請求する場合,払い戻しに応じてくれることがあります。
 この葬式費用の払戻金額は,各金融機関ごとに,

 ① 払い戻し請求をした相続人の法定相続分を限度とする場合
  
 ② 葬儀社に確認した葬式費用を限度とする場合

 ③ 当該地域における平均的な葬式費用を限度とする場合

 ④ ①と②,①と③の組み合わせの範囲内を限度とする場合

のように,限度額を定めているようです。
なぜなら,葬式費用としての払い戻しは,金融機関にとっては,便宜的な取扱いだからです。

 
 亡くなった方が,有名人・事故の被害者の場合,金融機関も情報を入手します。
 
 なお,北海道の場合,掲載希望者に限りますが,一般人についても新聞にお悔やみ欄があるので,金融機関は情報を入手します。
 
 情報入手の結果,金融機関が一方的に口座を凍結します。
 
 口座が凍結されると,公共料金の引き落としが止まるので,すみやかに各社に連絡をしましょう。
(金融機関によっては,公共料金の引き落としについては,そのまま継続してくれるとこともあります。)

 家賃の支払いも注意が必要です。家主に連絡しましょう。

 
相続が発生した場合,発生しそうな場合は,専門家に相談することをお勧めします。
 

2009年7月17日金曜日

ペットの葬儀

今回は,ペットの葬儀の話しです。
ペットは,法律上,動産になります。
したがって,ペットの亡骸は廃棄物の扱いになってしまいます。

ペットの死亡や火葬・埋葬について自治体に届け出をする必要はありません。
ただし,の場合,狂犬病予防法により,登録している市町村に対し,死亡から30日以内に届け出をしなければなりません。

自治体によっては,そのまま廃棄物として処理するところもあるようです。
札幌市では,動物管理センターが,ペットの火葬を行ってくれます。(ただし,焼骨は返却できません。)

【札幌市 保健福祉局 保健所 動物管理センター】
よくある質問http://www.city.sapporo.jp/inuneko/main/q_and_a.html


人間の場合は,墓地,埋葬等に関する法律がありますが,
ペットの場合は原則として,火葬・埋葬に関する法律がありません
(牛,馬,豚,めん洋,山羊については,化製場等に関する法律が適用されます。)

したがって,ペットの火葬・埋葬方法は,原則自由であり,
「自宅の庭に,焼骨を埋葬すること」や,「埋葬せずに焼骨を自宅で保管すること」も可能です。

ただし,近隣住民に対し不快感を与えないことが条件です。自宅の庭に埋葬した場合,土地を売却する際に買主からクレームが入る可能性もあります。

*自宅の庭に,火葬せずに埋葬することもできますが,衛生保健上の関係から火葬することをお勧めします。

また,ペットの火葬・埋葬を行う業者を規制する法律もありません
(ごく一部の自治体が,条例で規制しているようです。札幌市には,条例がないようです。)

【ペット火葬業者の問題が取り上げられたニュース】
http://www.zakzak.co.jp/top/200906/t2009060805_all.html

火葬の途中で,最初の提示金額とは異なる,高額な料金を請求し,
「応じないと生焼けのままで返す」,「応じるまで焼骨を返さない」など脅す手口があるようです。

ペットの葬儀についても,相手の業者が信頼できるかどうか,確かめてから依頼しましょう。

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狂犬病予防法
第四条  
 第一項及び第二項の規定により登録を受けた犬の所有者は、犬が死亡したとき又は犬の所在地その他厚生労働省令で定める事項を変更したときは、三十日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地(犬の所在地を変更したときにあつては、その犬の新所在地)を管轄する市町村長に届け出なければならない。

2009年7月14日火曜日

祭祀主宰者


祭祀財産は,祭祀主宰者が 承継します。

祭祀主宰者決定の順番は,

被相続人の指定,

指定がない場合その地方の慣習

指定も慣習もない場合は,家庭裁判所の審判

被相続人が指定する場合,遺言はもちろん,生前において書面だけでなく口頭でも,明示だけでなく黙示にも指定できるとされています。
(祭祀主宰者の資格につき,法律上は制限はないので,相続人・親族関係・氏の同一性とは関係なく,祭祀主宰者を指定することができます。)

家庭裁判所が審判で決定する場合は,被相続人との身分関係・生活関係,祭祀主宰の意思や能力などに基づき総合的に判断されます(特に被相続人との関係を重視するようです)。

祭祀主宰者は,原則として一人です。

祭祀主宰者は,その地位を放棄することができません。
しかし,祭祀を行う義務を負うわけでもありません。(祭祀を行う権利はある。しかし,義務はない。)

祭祀主宰者になったからといって,相続分を増やしてもらうことはできません。遺言により相続分が指定されている場合や遺産分割協議によって定めた場合を除いて,相続分は法定相続分によります。

なお,相続放棄した者も祭祀承継者になることができます。祭祀財産と相続財産は,別の財産であるとされているからです。

祭祀主宰者となった,夫(妻)が離婚により復氏した場合,養子が離縁により復氏した場合は,祭祀財産の承継者を「改めて」定めることになります。

2009年7月13日月曜日

祭祀財産

祭祀財産とは,系譜・祭具・墳墓のことをいいます。

法律上,祭祀財産は,相続財産(現金・預貯金・不動産など)とは,別の財産であると規定されています。

「系譜」とは,家系図,過去帳など祖先以来の系統を示すものです。

「祭具」とは,位牌,仏壇,仏具,神棚など祭祀・礼拝のために使用するものです。

「墳墓」とは,墓標・墓石のことです。墓地の所有権や使用権も墳墓に含まれると解されています。
  

*墓地所有権における墓地とは,墳墓の敷地として,墳墓と密接不可分な範囲に限られます。

 そして,祭祀財産を承継する者のことを祭祀主宰者と呼びます。


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民法
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条  系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

2009年7月12日日曜日

(札幌)葬式と相続放棄


札幌,岩見沢,室蘭,小樽,滝川,浦河,岩内,夕張,静内の各家庭裁判所の相続放棄の申述書の作成

【相続放棄の司法書士報酬】

*司法書士報酬には,戸籍謄本の取得報酬も含んでいます。
*実費として,収入印紙代・戸籍謄本代・切手代などが必要です。

(1)配偶者や子が相続放棄をする場合は,
①基本報酬2万円と②相続放棄者1人につき1万円を加算します(税抜き)。


(2)配偶者や子が相続から3ヵ月経過後に相続放棄をする場合は,
①基本報酬2万円と②相続放棄者1人につき2万円を加算します(税抜き)。


(3)兄弟姉妹が相続放棄する場合は,
①基本報酬3万円と②相続放棄者1人ごとに1万円を加算します。(税抜き)


<北海道内や札幌市内だけでなく,全国対応しております。>
当事務所(司法書士・行政書士・社会保険労務士)のHP 

http://ishihara-shihou-gyosei.com
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相続人が,自己の財産から葬式費用を負担して被相続人の葬式を行ったとしても,相続放棄をすることができます。

また,相続人が,相続財産から葬式費用を出したとしても,社会的許容範囲内の金額による葬式であれば,単純承認とはみなされず,相続放棄ができる場合もあるようです。


原則としては,相続放棄をすることが明確な場合は,相続財産からの支出は避けるのが賢明でしょう。


音信不通だった被相続人の場合は,借金を背負っている可能性もあります。財産調査の上,相続放棄について考えましょう。


相続放棄をする場合,死亡の連絡から3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。



したがって,死亡時から3ヵ月が経過していても,死亡の連絡がなければ,連絡があったときから3ヵ月以内であれば,相続放棄をすることができます。


音信不通で,葬式に参加していない相続人は,救済される可能性があります。


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参考:
①相続人が相続財産から被相続人の葬式費用を支払った行為につき,当然営まれるような葬式費用の範囲内であれば,単純承認には当たらないとする下級審判例があります。

東京控訴院昭和11年9月21日判決(新聞4059号13頁)
「遺族トシテ当然営マサルへカラサル葬式費用ニ相続財産ヲ支出スルカ如キハ道義上必然ノ所為ニシテ民法1024条(現行民法921条)第1号ニ所謂相続財産ノ処分ニ該当セス従ツテ之レヲ以テ控訴人カ単純承認ヲ為シタルモノト見做サルルコトナク・・・」

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②ほとんど経済的価値のない被相続人の見回り品を引き取ったこと,被相続人の僅少な所持金に相続人の所持金を加えて,被相続人の火葬費用および治療費残額を支払った行為につき,単純承認には当たらないとする下級審判例があります。

大阪高等裁判所昭和54年3月22日決定(判時938号51頁)
「本件のように行方不明であった被相続人が遠隔地で死去したことと所轄警察署から通知され,取り急ぎ同署に赴いた抗告人ら妻,子が,同署から戸籍法92条2項,死体取扱規則(公安委員会規則)8条に基づき,被相続人の着衣,見回り品の引取りを求められ,前認定1(11)のとおり,やむなく殆ど経済的価値のない財布などの雑品を引取り,なおその際被相続人の所持金2万0432円の引渡を受けたけれども,右のような些少の金品をもって相続財産(積極財産)とは社会通念上認めることができない。(このような経済的価値が皆無に等しい見回り品や火葬費用等に支払われるべき僅かな所持金は,民法897条所定の祭祀供用物の承継ないしこれに準ずるものとして慣習によって処理すれば足りるものであるから,これをもって,相続財産の帰趨を決すべきものではない)。のみならず,抗告人らは右所持金に自己の所持金を加えて金員をもって,前示のとおり遺族として当然なすべき被相続人の火葬費用ならびに治療費残額の支払に充てたのは人倫と道義上必然の行為であり,公平ないし信義則上やむを得ない事情に由来するものであって,これをもって,相続人が相続財産の存在を知ったとか,債務承継の意思を明確に表明したものとはいえないし,民法921条1号所定の『相続財産の一部を処分した』場合に該るものとはいえないのであって,右のような事実によって抗告人が相続の単純承認をしたものと擬制することはできない。」

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戸籍法
第九十二条
2  死亡者の本籍が明かになり、又は死亡者を認識することができるに至つたときは、警察官は、遅滞なくその旨を報告しなければならない。

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死体取扱規則(昭和三十三年十一月二十七日国家公安委員会規則第四号)
(死体の遺族等への引渡)
第八条  死体について、身元が明らかになつたときは、着衣、所持金品等とともに死体をすみやかに遺族等に引き渡さなければならない。ただし、遺族等への引渡ができないときは死亡地の市区町村長に引き渡すものとする。

2009年7月9日木曜日

火葬許可証・改葬許可証

 墓地,埋葬等に関する法律によると,

 埋葬(いわゆる土葬)については,埋葬許可証を,
 火葬については,火葬許可証を,
 改葬については,改葬許可証を,それぞれ,提出します。

 しかし,火葬後の焼骨を「埋蔵」(墓地へ埋めること),焼骨を「収蔵」(納骨堂へ納めること)することについては,埋蔵(収蔵)許可証というものは発行されず,火葬許可証を提出することになります。

 したがって,焼骨を墓地へ埋蔵することも,納骨堂へ収蔵することもなく,長期間にわたって自宅で保管した後,墓地(納骨堂)へ埋蔵(収蔵)することに決めた場合,火葬許可証が必要になります。

 仮に,火葬許可証を紛失してしまった場合は,火葬許可証の再発行を求めることになります。

 また,改葬をするため改葬許可証の交付を受けたが,改葬することなく,自宅で保管していて,改葬許可証を紛失することもあるようです。この場合も,改葬許可証の再発行を求めることになります。

 札幌市の場合,改葬許可証には,有効期限はありません(市町村により,異なります。)。
 したがって,改葬許可証に記載されている改葬場所へ改葬する場合,原則として,改葬許可後,長期間にわたって自宅で保管した後であっても,改葬することができます。
 ただし,改葬許可証に記載されている「改葬場所である墓地・納骨堂との使用契約が有効」であることが前提です。

 火葬許可証も改葬許可証も,再発行をしてもらう場合には,手続きを経る必要があるので,大切に保管しましょう。

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Q3 「改葬許可証」を郵送してもらえませんか?

A3  市役所【生活環境課墓園管理係】あて、お電話にてご相談ください。    
なお、「改葬許可証」には、特に有効期限はありません。 ●保健所生活環境課墓園管理係  
住所:〒060-0642 札幌市中央区大通西19丁目 WEST19 3階  電話:011-616-2855 
http://www.city.sapporo.jp/seikatsu-eisei/boen/te_kaiso.html

2009年7月7日火曜日

葬祭扶助(生活保護法)

どうしても葬祭を行うことが困難な場合,

生活保護法の葬祭扶助により,札幌市の場合,約20万円の範囲内で葬祭費を支給してもらえます。

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【生活保護法】
(葬祭扶助) 第十八条  
1 葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。

 検案

 死体の運搬

 火葬又は埋葬

 納骨その他葬祭のために必要なもの

 左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。


 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。

 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。

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第18条第1項は,死亡者の遺族又は扶養義務者(亡くなった方の祖父母,父母,子,孫,兄弟姉妹)が困窮のため葬祭を行うことができない場合です。

*なお,第18条 第1項 第4号の納骨その他葬祭のために必要なもの の範囲には,死亡診断書,棺桶,骨壺,位牌,祭壇,読経も含まれます。(但し,合計金額は,約20万円が限度です。)


第18条第2項は,生活保護受給者自身が亡くなった場合で,なおかつ,扶養義務者がいない場合です。
第18条第2項の場合,そもそも扶養義務者がいないので,第三者(家主や民生委員など)が葬祭を行えば,葬祭扶助が支給されます。

 *一人暮らしの生活保護受給者が亡くなった場合,原則として第18条第1項が適用されるので,遺族,または,扶養義務者が,いったん葬祭費用を出してしまうと,その後,市役所から葬祭扶助を支給してもらうことは難しいようです

 遺族,または,扶養義務者が,葬祭費用を出せるということは,遺族,または,扶養義務者に支払い能力があり,「困窮のため葬祭を行うことができない」場合にあたらないからです。

 市役所は,生活保護法による扶助よりも,扶養義務者の援助を優先させているようです。


 *なお,墓地埋葬法第9条第1項により,市町村長は,旅行人などで身元不明人の埋葬,または,火葬を行う義務があります。

 *また,老人福祉法第11条第2項により,市町村は,老人ホームに入所していた者が死亡した場合で,葬祭を行う者がいないときは,市町村が葬祭を行う,または,老人ホームに葬祭を行うことを委託することができる,とされています。

【墓地、埋葬等に関する法律】
第九条    死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。

【老人福祉法】
第十一条
 市町村は、前項の規定により養護老人ホーム若しくは特別養護老人ホームに入所させ、若しくは入所を委託し、又はその養護を養護受託者に委託した者が死亡した場合において、その葬祭(葬祭のために必要な処理を含む。以下同じ。)を行う者がないときは、その葬祭を行い、又はその者を入所させ、若しくは養護していた養護老人ホーム、特別養護老人ホーム若しくは養護受託者にその葬祭を行うことを委託する措置を採ることができる。

2009年7月2日木曜日

葬儀には最低いくら必要か?(札幌市内)

【火葬費用】
札幌市では,札幌市民の火葬費用は,無料です。

【埋葬(埋蔵)費用」
地を持っていなくても,札幌市営の平岸霊園で焼骨を埋蔵してくれます。
ただし,合葬式の墓(合同納骨塚)になります。(1体の永代料1,900円)

【遺体の運送費用】
 「葬式をしない(戒名・法名も不要)場合」,他に必要になるのは,

 亡くなった場所から火葬場
 (亡くなった場所から自宅,自宅から火葬場)への「遺体の運送費用」,

 火葬場から霊園までの「焼骨の運送費用」,です。

 遺族が,自家用車で遺体や焼骨を運送することは,可能です。しかし,遺体の運送については,腐敗など問題があるので,業者に依頼すべきでしょう。
 霊柩自動車による遺体の運送を業務とする場合は,国土交通大臣の許可が必要になります。
 霊柩自動車の運送料は,霊柩自動車の種類や走行距離などに応じて計算されます。

 *具体的な運送料について,計算方法が,それぞれの事業者によって異なること,時間帯や豪雪地帯では冬季割増しなどがあることから,示すことができません。

 一般的には,葬儀業者を通じて,霊柩自動車を依頼することが多いようですが,直接,霊柩運送事業者に依頼することもできます。
 霊柩運送事業者は,正当事由がなければ,遺体の運送申し込みを拒絶できません。
 
 
*あとは,棺桶,遺体保存用のドライアイス,焼骨を入れる骨壺の費用ぐらいでしょうか。


【火葬・市営霊園の問い合わせ先】

札幌市 保健所 生活環境課 墓園管理係 

札幌市中央区大通西19丁目 WEST19 3階 電話:011-616-2855

*札幌市墓地条例の第4条第3項によると,
 「公の援助を受ける者、市長において貧困のため使用料を納付する資力がないと認めた者その他市長が特に必要があると認める者には、使用料を減額し、又は免除することができる。」
 とされていますので,1900円の永代料についても,減額・免除をしてもらえることがあります。

*札幌市火葬場条例の第8条第1項によると,
 「火葬場で火葬炉を使用した者は、焼骨を引き取らなければならない。」
とされていますので,遺体の火葬後は,焼骨を引き取ることになります。

2009年7月1日水曜日

墓地使用契約の中途解約



墓地使用契約を中途解約した場合,墓地使用料は,返還されるか?

「墓地使用料を返還する必要はない。」,と判断された事例


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(1)判決内容について

京都地方裁判所 平成19年(レ)第36号 墓所使用料前納金返還請求控訴事件
平成19年6月29日判決

原告(訴えを起こした人):原告の亡父が,被告と墓地使用契約を締結していた。
被告(訴えられた人)   :墓地を経営している宗教法人

訴えの内容:
「原告の父が死亡した後,墓地使用契約を解約したので,被告は墓地使用料を全額返還しろ。」

裁判所の判断:
「被告は,墓地使用料を返還する必要はない。」


事案の内容:
 平成4年3月,原告の父が,被告(宗教法人)との間で,被告が経営する墓地の使用契約を締結し,墓地使用料として65万円を支払った。

 墓地使用規則(墓地使用契約)には,墓地の使用期間と墓地使用料の返還の規定は,記載されて「いなかった」。

 平成17年12月,原告の父が死亡した。
 原告の父は,墓地に墓石などを設置して「いなかった」。
 原告は,原告の父の墳墓を本件墓地以外の場所に設けることにした。

 (墓地使用契約締結から約14年経過した)
 平成18年2月,原告は被告に,墓地使用契約の解約を申し入れるとともに,墓地使用料の返還を求めたが,被告はこれを拒絶した。

 
 裁判所の判断理由:
 (前提となる事実や墓地使用規則によると)
 本件墓地使用契約は,墓地使用期間の規定がなく,使用者の死亡にかかわらず,祭祀承継者(お墓の管理をする相続人)への使用を許諾する,永続的・永代的な使用権(いわゆる永代使用権)を設定する内容である。
 
 墓地使用料は,使用開始時に一括支払いが,予定されていること(実際にも,一括支払い済み。),
墓地使用規則に墓地使用料の返還について規定がないことから,墓地使用料は,使用期間に対応した使用の対価とは「いえない」。
 つまり,墓地使用権の設定(契約締結により,墓地を「使用できるという地位」)に対する対価である。

 墓地使用契約締結後,墓石などを設置していない状態で,墓地使用契約を解約したとしても,それは,原告の一方的な墓地使用権の放棄(権利放棄)である。

 原告の解約により,本件墓地について,被告は他の人に墓地使用権を設定できるようになるが,不当な利得とはいえない。

 よって,被告は,原告に対し,墓地使用料を返還する義務を負わない。



 最高裁判所のホームページから原文を参照してください。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=04&hanreiNo=34968&hanreiKbn=03

裁判所の判断は,個別具体的な事件に対して行われるものですから,
 すべての事件について,裁判所が同様の判断をするとは限りません。



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(2)標準契約約款について

厚生省(当時)の生活衛生局長が,各都道府県知事,指定都市市長,中核都市市長に宛てた
 「墓地経営・管理の指針等について(平成12年12月6日生衛発第1764号)」
 というものがあります。
 
 この中に標準契約約款というものがあり,墓地使用料の返還規定は,次のようになっています。


 第8条(使用者による契約の解除)
   墓地使用者は,書面をもって,いつでも墓地使用契約を解除できる。

 2 解除した場合,使用者はすでに支払った使用料および管理料の返還を請求することができない。           

 ただし,墓所に墓石の設置等を行っておらず,かつ,焼骨を埋蔵していない場合において,使用者がすでに使用料を納付しているときは,契約締結後〇日以内に契約を解除する場合に限り,墓地経営者は,当該使用料の〇割に相当する額を返還するものとする。

 3 (略)



上記のとおり,厚生省が示した標準契約約款によると,
「墓石の設置をしていなくても,契約締結後〇日経過すると,経営者は使用料を返還しなくてもよい」,ということになっています。

 この裁判の事案につき,仮に,

 (消費者側(墓地使用者側)に有利な内容が多いとされる)
 厚生省の標準契約約款にあてはめてみても,契約締結から「約14年経過」していることから,
 やはり,墓地経営者は,使用料を返還する必要は「ない」ことになります。

*厚生省の標準契約約款とは,あくまで厚生省がお勧めする指針にすぎず,ある墓地使用契約の内容が標準契約約款に違反したとしても,ただちに契約内容が無効になるものではありません。


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(4)消費者契約法について

平成13年4月1日以降の消費者契約については,消費者契約法が適用されます。

この裁判の事案については,平成4年に締結していますので消費者契約法は適用されません。

なお,仮に消費者契約法が適用されたとしても,「墓地使用料」に関する条項は,いわゆる中心条項と考えられます。

よって,原則として消費者契約法9条及び10条は適用されないと解します。


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なお,①墓地使用契約が,公序良俗違反となるような例外的な場合には民法によって無効とされるので墓地使用料は返還されますし,

②墓地経営者が墓地使用契約の契約内容に違反したことを理由に契約を解除する場合は墓地使用料は返還されますし,

③墓地使用契約の締結時に違法な勧誘行為があった場合は,消費者契約法または特定商取引法に基づき契約を取り消すことにより墓地使用料は返還されますし,

④「クーリングオフ」よって,墓地使用契約を解除する場合は墓地使用料は返還されます。


←消費者契約法および特定商取引法の取消権は,追認をすることができる時から6ヵ月間行わないとき又は契約締結時から5年を経過したときは,時効によって消滅します。


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おそらく,墓地使用契約は民法上の典型契約ではなく,無名契約の一種にあたると思われます。

在学契約に解除に関する学納金返還請求訴訟の最高裁判決(最判平18年11月27日民集60巻9号3437頁,最判平18年11月27日民集60巻9号3597頁,同日のほか3件の判決)を参照する限り,

使用者(=消費者)が,使用者の都合(クーリングオフを除く)で,墓地使用契約を中途解約する場合,墓地使用料の返還請求が認められる可能性は低いと解します。


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