2011年4月21日木曜日

生命保険に関する判例19

生命保険金と損益相殺に関する判例

本判決およびその後の最高裁判決により,

現在では,生命保険,損害保険,傷害保険を問わず,

保険金は,損益相殺の対象にはならないと解されています。
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事件番号 昭和39(オ)328




事件名 損害賠償請求


裁判年月日 昭和39年09月25日


法廷名 最高裁判所第二小法廷  判決


 民集 第18巻7号1528頁


判示事項


不法行為による死亡に基づく損害賠償額から生命保険金を控除することの適否。




裁判要旨


生命保険金は、不法行為による死亡に基づく損害賠償額から控除すべきでない。




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=53910&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例18

保険金受取人の指定と相続財産に関する判例

Aが養老保険につき,

被保険者をA,

保険金受取人は,保険期間満了の場合はA,被保険者死亡の場合は相続人,

との内容の保険契約をしていたところ,

Aは,相続人ではないBに対し,Aの所有財産の全部を包括遺贈しました。

その後,Aは死亡しましたが,

保険金受取人は,包括受遺者のBになるのか,Aの相続人になるのか,で争いになった事案です。

判決は,本件事案では,保険金受取人はAの相続人であると判断しました。
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事件番号 昭和36(オ)1028




事件名 保険金請求


裁判年月日 昭和40年02月02日


法廷名 最高裁判所第三小法廷  判決


 民集 第19巻1号1頁




判示事項


一 保険金受取人を「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定したときの養老保険契約の性質。






二 前項の場合における保険金請求権の帰属。






裁判要旨


一 養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のないかぎり、右契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当である。






二 前項の場合には、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、右相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱しているものと解すべきである。




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=57731&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例17

保険金受取人による被保険者故殺に関する判例

本判決によると,保険金受取人が,被保険者を故意に死亡させた場合は,

保険金受取人が保険契約の存在を知らなかったとしても,

保険金受取人に保険金の取得目的がなかったとしても,

保険会社は保険金の支払いを免れます。


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事件番号 昭和41(オ)933




事件名 生命保険金請求


裁判年月日 昭和42年01月31日


法廷名 最高裁判所第三小法廷  判決


民集 第21巻1号77頁




判示事項


殺害者に保険金取得の意思のない場合と商法第六八〇条第一項第二号の適用






裁判要旨


保険金受取人が、被保険者を殺害し、その直後に自殺を遂げ、殺害当時保険金取得の意図を有しなかつたときでも、保険者は、保険金支払の責を免れる。


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=54050&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例16

保険金請求権と滞納処分に関する判例

なお,一般的に保険金請求権は,

保険事故の発生前でも,

差し押さえることができると解されています。


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事件番号 昭和44(オ)1129




事件名 保険金請求


裁判年月日 昭和45年02月27日


法廷名 最高裁判所第二小法廷  判決


 集民 第98号313頁




判示事項


生命保険契約に基づく保険金請求権と滞納処分による差押






裁判要旨


保険事故が発生して具体化している生命保険契約に基づく保険金受取人の保険金請求権は、通常の金銭債権として、国税または地方税に関する滞納処分による差押の対象となりうる。




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=66705&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例15

生命保険契約に付加された特約の給付金と損益相殺に関する判例

被害者が加害者に対し直接請求する損害賠償金額が減少するのは,

損益相殺と保険代位は共通していますが,

損益相殺の場合,

加害者の損害賠償金額が全体として減少するのに対し,

保険代位の場合,

加害者は,被害者から請求されないが,代わりに保険会社から請求されるため,

加害者の損害賠償金額は全体として減少しません。

判決は,本件事案では,損益相殺も保険代位も否定し,被害者の損害賠償金額は減少しないとの判断をしました。


ーーーーーー事件番号 昭和54(オ)344




事件名 損害賠償


裁判年月日 昭和55年05月01日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


集民 第129号591頁




判示事項


生命保険契約に附加された特約による給付金と商法六六二条の適用の有無






裁判要旨


生命保険契約に附加された特約に基づいて被保険者である受傷者に給付される傷害保険金又は入院保険金については、商法六六二条所定の保険者の代位の制度の適用がなく、右受傷者が保険者から支払を受けた場合であつても、その限度で第三者に対する損害賠償請求権を失うものではない。


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=64313&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例14

保険金受取人の表示の解釈に関する判例


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事件番号 昭和56(オ)1196




事件名 保険金支払等


裁判年月日 昭和58年09月08日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


 民集 第37巻7号918頁




判示事項


生命保険契約において被保険者の「妻何某」とのみ表示してした保険金受取人の指定の趣旨




裁判要旨


生命保険契約において被保険者の「妻何某」とのみ表示してした保険金受取人の指定は、当該氏名をもつて特定された者を保険金受取人とする趣旨であり、それに付加されている「妻」という表示は、それだけでは、その者が被保険者の妻である限りにおいてこれを保険金受取人として指定する意思を表示した趣旨であると解することはできない。


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52154&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例13

保険金受取人の変更に関する判例(ただし,旧商法下)

平成22年4月1日(保険法の施行日)以後に締結された保険契約では,

保険契約者が,保険金受取人の変更の意思表示の相手方は,

保険者(保険会社)に限定されました。



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事件番号 昭和61(オ)100




事件名 不当利得金返還


裁判年月日 昭和62年10月29日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


民集 第41巻7号1527頁




判示事項


保険金受取人変更の方法






裁判要旨


保険金受取人を変更する権利が留保された生命保険契約における保険金受取人の変更は、新旧受取人のいずれかに対する保険契約者の意思表示によつても、直ちにその効力を生ずる。




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=55212&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例12

保険事故発生以前に受取人が死亡した場合の受取人に関する判例






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事件番号 昭和63(オ)1748




事件名 保険金


裁判年月日 平成4年03月13日


法廷名 最高裁判所第二小法廷  判決


民集 第46巻3号188頁




判示事項


生命保険の保険金受取人が死亡した場合における保険金受取人の変更に関する普通保険約款の解釈






裁判要旨


普通保険約款において、生命保険の保険金受取人の死亡時以後保険金の支払理由が発生するまでに保険金受取人が変更されていないときは保険金受取人は死亡した保険金受取人の死亡時の法定相続人に変更されたものとする旨定められているときは、右条項の趣旨は、死亡した保険金受取人の法定相続人又は順次の法定相続人で保険金の支払理由が発生した当時において生存する者を保険金受取人とすることにあると解すべきである。


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52755&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例11

保険金受取人が保険事故発生前に死亡した場合の保険金取得割合に関する判例


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事件番号 平成2(オ)1100




事件名 保険金


裁判年月日 平成5年09月07日


法廷名 最高裁判所第三小法廷  判決


 民集 第47巻7号4740頁








判示事項


一 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」の意義




二 生命保険の指定受取人の法定相続人と順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合の各保険金受取人の権利の割合と民法四二七条の適用






裁判要旨


一 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、保険契約者によって保険金受取人として指定された者の法定相続人又は順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に生存する者をいう。






二 生命保険の指定受取人の法定相続人と順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法四二七条の規定の適用により、平等の割合になる。


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52775&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例10

保険金受取人を相続人と指定した場合の保険金取得割合に関する判例



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事件番号 平成3(オ)1993




事件名 保険金


裁判年月日 平成6年07月18日


法廷名 最高裁判所第二小法廷  判決


民集 第48巻5号1233頁


判示事項


保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合において相続人が保険金を受け取るべき権利の割合






裁判要旨


保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になる。




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52492&hanreiKbn=01


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2011年4月14日木曜日

生命保険に関する判例9

保険者貸付と民法478条に関する判例

保険契約者の妻が,保険契約者に内緒で,

保険契約者の代理人と称して,契約者貸付制度により,

お金を借りた事案です。

本件事案では,保険会社の貸付は有効で,

その貸付金額分だけ,保険金は減額になりました。


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事件番号 平成5(オ)1951




事件名 債務不存在確認


裁判年月日 平成9年04月24日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


民集 第51巻4号1991頁




判示事項


生命保険会社がいわゆる契約者貸付制度に基づいて保険契約者の代理人と称する者の申込みにより行った貸付けと民法四七八条の類推適用






裁判要旨


生命保険会社甲が、いわゆる契約者貸付制度に基づいて保険契約者乙の代理人と称する丙の申込みによる貸付けを実行した場合において、丙を乙の代理人と認定するにつき相当の注意義務を尽くしたときは、甲は、民法四七八条の類推適用により、乙に対し、右の貸付けの効力を主張することができる。


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=54783&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例8

生命保険の解約返戻金請求権と差押債権者に関する判例

生命保険の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は,

現金化する(取り立てる)ために,保険契約の解約権を行使することができます。


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事件番号 平成10(受)456




事件名 取立債権請求事件


裁判年月日 平成11年09月09日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


 民集 第53巻7号1173頁




判示事項


生命保険契約の解約返戻金請求権の差押債権者がこれを取り立てるために解約権を行使することの可否






裁判要旨


生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使することができる。


(反対意見がある。)




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52238&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例7

普通傷害保険契約における死亡保険金と偶然の事故に関する判例

普通傷害保険契約について,

発生した事故が,偶然な事故であることは,

死亡保険金を請求する者が主張立証責任を負います。


なお,生命保険契約に付加される災害関係特約についても,

平成13年4月20日,最高裁判所第二小法廷が,

発生した事故が,偶然な事故であることは,

災害死亡保険金を請求する者が主張立証責任を負う,と判断しました。


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事件番号 平成12(受)458




事件名 保険金請求事件


裁判年月日 平成13年04月20日


法廷名 最高裁判所第二小法廷  判決


 集民 第202号161頁


判示事項


普通傷害保険契約の約款に基づき死亡保険金の支払を請求する場合における偶然な事故についての主張立証責任






裁判要旨


普通傷害保険契約における死亡保険金の支払事由を急激かつ偶然な外来の事故による死亡とする約款に基づき,保険者に対して死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶然な事故であることについて主張,立証すべき責任を負う。


(補足意見がある。)




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=62469&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例6

会社の取締役による被保険者の故殺と免責に関する判例

本件事案では,保険会社(保険者)の免責が認められませんでした。


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事件番号 平成14(受)310




事件名 保険金請求事件


裁判年月日 平成14年10月03日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


 民集 第56巻8号1706頁


判示事項


1 生命保険契約の被保険者を故意に死亡させた第三者の行為が保険契約者又は保険金受取人の行為と同一のものと評価される場合における保険者の免責


2 保険契約者兼保険金受取人が会社である生命保険契約の被保険者を当該会社の取締役が故意に死亡させた場合に保険者が免責されないとされた事例






裁判要旨


 1 被保険者が保険契約者又は保険金受取人の故意により死亡した場合には死亡保険金を支払わない旨の生命保険契約上の免責条項は,被保険者を故意に死亡させた第三者の行為が,公益や信義誠実の原則に照らして保険契約者又は保険金受取人の行為と同一のものと評価される場合を含む。


2 生命保険契約の保険契約者兼保険金受取人である有限会社の代表取締役として同会社の業務のほとんどを支配していた被保険者を,その補助的性質の業務を担当していた代表権のない取締役が個人的動機によって故意に死亡させたなど判示の事実関係の下においては,上記取締役の行為をもって上記会社の行為と同一のものと評価することはできず,保険者は,被保険者が保険契約者又は保険金受取人の故意により死亡した場合に死亡保険金を支払わない旨の保険契約上の免責条項によって,免責されない。


(2につき反対意見がある。)


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52361&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例5

死亡保険金の受取人を変更する行為と民法1031条に関する判例

本件事案は,保険契約者兼被保険者が,

保険金受取人を共同相続人以外の者(父)に変更したところ,

共同相続人が,保険金受取人に対して,遺留分減殺請求をしました。

最高裁判所は,遺留分減殺請求を認めませんでした。


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事件番号 平成11(受)1136




事件名 死亡保険金支払請求権確認請求事件


裁判年月日 平成14年11月05日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


民集 第56巻8号2069頁


判示事項


自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為と民法1031条に規定する遺贈又は贈与






裁判要旨


自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は,民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく,これに準ずるものということもできない。




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52260&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例4

生命保険金請求権の消滅時効に関する判例

本件事案は,被保険者が自動車を運転して自宅を出たまま行方不明となり,

行方不明から3年以上経過した後,展望台の下の雑木林で遺体が見つかりました。

被保険者が行方不明になったころ,

被保険者が運転する自動車が道路から転落し,

その傷害により,被保険者が死亡したと推認されました。

約款の規定により,死亡時から3年経過した場合,

保険金請求権は,時効により消滅しますが,

本件事案では,最高裁判所は,保険金請求権の時効消滅を認めませんでした。


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事件番号 平成12(受)485




事件名 保険金請求事件


裁判年月日 平成15年12月11日


法廷名 最高裁判所第一小法廷  判決


 民集 第57巻11号2196頁


判示事項


1 生命保険契約において被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている保険約款の解釈


2 生命保険契約に係る保険約款が被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている場合であっても上記消滅時効は被保険者の遺体が発見されるまでの間は進行しないとされた事例






裁判要旨


1 生命保険契約に係る保険約款中の被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨の定めは,当時の客観的状況等に照らし,上記死亡の時からの保険金請求権の行使が現実に期待することができないような特段の事情が存する場合には,その権利行使が現実に期待することができるようになった時以降において上記消滅時効が進行する趣旨と解すべきである。


2 生命保険契約に係る保険約款が被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている場合であっても,被保険者が自動車を運転して外出したまま帰宅せず,その行方,消息については何の手掛かりもなく,その生死も不明であったが,行方不明になってから3年以上経過してから,峠の展望台の下方約120mの雑木林の中で,自動車と共に白骨化した遺体となって発見されたなど判示の事実関係の下では,上記消滅時効は,被保険者の遺体が発見されるまでの間は進行しない。




最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52297&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例3

自殺と免責約款に関する判例

本判決は,原則として,約款の自殺免責期間経過後の自殺は,

自殺の動機,目的が保険金の取得にあることが認められるときであっても,免責の対象とはしないものと判断しました。



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事件番号 平成13(オ)734




事件名 保険金請求,債務不存在確認請求本訴,同反訴事件


裁判年月日 平成16年03月25日


法廷名 最高裁判所第一小法廷 判決


 民集 第58巻3号753頁




判示事項


1 生命保険契約において保険者の責任開始の日から1年内に被保険者が自殺した場合には死亡保険金を支払わない旨を定めている保険約款の解釈


2 債務の履行を求める反訴が提起されている場合における当該債務の不存在確認を求める訴えの確認の利益


3 保険金支払債務の履行を求める反訴が提起されたために債務者が提起した当該債務が存在しないことの確認を求める訴えが確認の利益がないとして却下された場合において当該確認訴訟に係る訴訟の総費用を債権者に負担させた事例






裁判要旨


 1 生命保険契約に係る保険約款中の保険者の責任開始の日から1年内に被保険者が自殺した場合には保険者は死亡保険金を支払わない旨の定めは,責任開始の日から1年経過後の被保険者の自殺による死亡については,当該自殺に関し犯罪行為等が介在し,当該自殺による死亡保険金の支払を認めることが公序良俗に違反するおそれがあるなどの特段の事情が認められない場合には,当該自殺の動機,目的が保険金の取得にあることが認められるときであっても,免責の対象とはしない趣旨と解すべきである。


2 債務者が債権者に対して提起した債務が存在しないことの確認を求める訴えは,当該債務の履行を求める反訴が提起されている場合には,確認の利益がない。


3 (省略)


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=57042&hanreiKbn=01


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生命保険に関する判例2

団体定期生命保険契約と保険金の受取りに関する判例

団体定期保険(いわゆるAグループ保険)は,

本件事案のほか多数のトラブルが生じたことから,

平成8年11月からは,

総合福祉団体定期保険が創設されたことにより,消滅しました。
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事件番号 平成14(受)1358




事件名 保険金引渡請求事件


裁判年月日 平成18年04月11日


法廷名 最高裁判所第三小法廷  判決


民集 第60巻4号1387頁




判示事項


団体定期保険(いわゆるAグループ保険)に基づいて被保険者である従業員の死亡により保険金を受領した会社が生命保険会社との間の合意をもって社内規定に基づく給付額を超えて上記保険金の一部を死亡従業員の遺族に支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断に違法があるとされた事例






裁判要旨


Y社が,複数の生命保険会社との間で,保険金受取人をY,被保険者をYの従業員全員とし,死亡保険金の合計額が従業員1人につき6000万円を超える団体定期保険(いわゆるAグループ保険)契約を締結し,従業員の死亡により保険金を受領する一方,当該従業員の遺族Xに対しては,社内規定に基づく給付額である1000万円程度の死亡時給付金を支払ったにとどまる場合において,


1 他人の生命の保険については被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図るべく保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求する規制を採用していない立法の下では,直ちに上記契約が公序良俗に違反するとはいえないこと,


2 Yは,団体定期保険の主たる目的が受領保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあることは認識していたものの,死亡従業員の遺族に支払うべき死亡時給付金が社内規定に基づく給付額の範囲内にとどまることは当然と考え,そのような取扱いに終始していたのであり,社内規定に基づく給付額を超えて受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを黙示的にも合意したと認める余地はないことなど判示の事情の下では,上記のような団体定期保険の運用が公序良俗に違反することを前提として,これを免れるためには,Yは,生命保険会社との間の第三者のためにする契約をもって,社内規定に基づく給付額を超えて死亡時給付金として社会的に相当な金額(3000万円)に満つるまでの額をXに支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断には,違法がある。


(補足意見がある。)


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=32877&hanreiKbn=01


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生命保険金に関する判例

保険金受取人とその相続人が同時に死亡した場合の判例

本件事案は,無理心中のため,互いの死亡の前後が不明だったようです。

本判決によると,

夫が生命保険契約者兼被保険者,

妻が保険金受取人の場合で,


夫婦が同時に死亡したときや,

民法32条の2によって,同時に死亡したと推定されるときは,

保険金受取人である妻の法定相続人のみが,

保険金受取人となります。

夫は,妻死亡時に死亡しており,

夫は,妻の相続人にはなれないので,

妻の法定相続人ではない夫の法定相続人は,

保険金を受け取れません。

←夫と妻の子は,

妻の法定相続人として保険金を受け取れます。

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事件名 死亡給付金等請求,民訴法260条2項の申立て事件


裁判年月日 平成21年06月02日


法廷名 最高裁判所第三小法廷 判決


 民集 第63巻5号953頁


判示事項


生命保険の指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において,その者又はその相続人は,商法676条2項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」に当たるか


裁判要旨


生命保険の指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において,その者又はその相続人は,商法676条2項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」には当たらない。


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=37670&hanreiKbn=01


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2011年4月5日火曜日

借金と相続放棄

借金のある人が,亡くなった場合,

相続人が,法定相続分に応じて,借金を相続します。

つまり,相続人が,借金の支払い義務を承継します。

相続人は,法定相続分に応じて相続するという部分がポイントです。

(例) 父が,資産として不動産2000万円を所有しているが,

借金5000万円を抱えて死亡した場合。

相続人が妻,子どもA,Bのとき。

原則として法定相続分は,妻2分の1,子A4分の1,子B4分の1になります。

妻の相続分は,資産1000万円,借金2500万円

子Aの相続分は資産500万円,借金1250万円

子Bの相続分は資産500万円,借金1250万円

この場合,単純計算なら,借金が資産を3000万円超過するので,

相続放棄をした方が得です。

しかし,資産である不動産が,

妻の居住不動産の場合,相続放棄を選択したくないというときもあるでしょう。

法定相続分によると,

妻の借金超過分は1500万円,子Aは750万円,子Bは750万円。

妻は,

借金が1500万円なら,

自分の財産や自分の親からの相続財産で賄えると考えるかもしれません。

しかし,子A,Bは,

すでに自己の居住用不動産をもっており,

将来的に,妻(母)から不動産を相続するが,

自己の住宅ローンの支払いで精一杯のため,

父の借金を相続したくないと考えるかもしれません。

その結果,子A,Bがふたりとも相続放棄をすると,

妻の相続する借金は,まるまる5000万円,不動産もまるまる2000万円分を相続できますが,

借金超過分は3000万円になります。

そうなると,当初の妻の計画は,成り立たないことになります。

(資産も増えますが,不動産は売却して現金化することは考えていないので)


←借金が,資産を超過する場合,

自己の相続分は,法定相続分によると,マイナス○○円と思っていても,

他の相続人が,相続放棄をすることで,

法定相続分が,増加し,その分だけ借金も増加するということがあります。

相続財産に借金があった場合は,

安易に現在時点の法定相続分で分割されると考えてはいけません。

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