2017年6月28日水曜日

登記官に対する審査請求(商業・法人)



登記研究831号(平成29年5月号)の57頁以下に,


「行政不服審査法等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」


法務省民事局商事課係長(商業法人登記第一係担当) 大西 勇 


氏の見解が掲載されています。


行政不服審査法(平成26年法律第68号)及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成26年法律第69号)が平成28年4月1日に施行され,同日以降にされた登記官の処分又は不作為については,行政不服審査法の規定とともに,整備法による改正後の商業登記法(昭和38年法律第125号)の規定が適用されることとなった。


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2017年6月26日月曜日

不動産取得税の申告(北海道)

居住用の中古のマンション(中古の住宅)及びその敷地について,


贈与の所有権の移転の登記の完了後,


道税事務所に不動産取得税の申告(住宅控除及び土地減額)をするため,申告者が不動産取得税の申告書を郵送したところ,


道税事務所から申告者に対して,居住用の中古の住宅及びその敷地の不動産取得税の申告は,


登記の完了から3ヵ月から4ヵ月後に申告者に納税通知書が送付されるので,納税通知書の送付後に,不動産取得税の申告をして欲しいとの連絡があったようです。


*居住用の建物の新築の場合は,登記の完了後,ただちに不動産取得税の申告をしてもらってもかまわないとことです。


*行政書士は,不動産取得税の申告書は作成できますが,不動産取得税の申告自体はできません。


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当事務所では,札幌市内の不動産取得税の申告書(住宅控除及び土地減額)の作成を承っております。


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2017年6月15日木曜日

財産分与と仮登記

夫婦が離婚し,財産分与として元夫名義の不動産を元妻名義にする場合ですが,
住宅ローンを返済中のときは,住宅ローンの契約に注意する必要があります。

住宅ローンの契約には,通常,期限の利益喪失特約として,

銀行の承諾無く,抵当物件を譲渡した場合,直ちに(又は請求により)期限の利益を喪失し,抵当権を実行し競売により債務の弁済に充当するとの特約があります。

よって,銀行の承諾無く,財産分与により元夫から元妻に不動産の名義を変更すると,この期限の利益喪失特約に違反したとして,競売にかけられる可能性があります。

期限の利益喪失特約に違反しないようにする方法として,住宅ローン完済時に所有権が移転する仮登記の方法があるようです。

この仮登記の方法だと,住宅ローンの完済時に所有権が移転(譲渡)することになり,所有権の移転時には,住宅ローンが消失していることから,住宅ローンの契約(期限の利益喪失特約)違反にはなりません。

しかし,見落としがあります。

離婚により,元夫婦は別居するでしょうから,住宅ローンが残り3年ぐらいなら良いですが,

それより長期の場合は,住宅ローンの完済時には,元夫が住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日を経過しているはずです。

よって,元夫は,居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例が利用できず,
元夫には,譲渡所得税が課せられる可能性があります。

*そもそも譲渡益がでない場合であれば,譲渡所得税を心配する必要はありませんが・・・


もうひとつの見落としですが,仮登記を本登記にする場合は,元夫の協力が必要になることです。住宅ローンの完済時になってから,元夫の協力を得ることができるのかは未知数といえるでしょう。


*元夫が協力しない場合,元夫を訴えることにより,本登記にすることは可能です。


さらに,仮登記の後ろに,差押などの登記がある場合には,それら後順位の登記も抹消しなければ,本登記にすることはできません。

なお,楽天銀行の不動産担保 ローン約款は,「当行は、その変更等がなされても担保価値の減少等債権保全に支障を生ずるおそれがない場合には、これを承諾するものとします。」との条項になっています。


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楽天銀行 不動産担保 ローン約款


第21条 担保


2.債務者は、担保について現状を変更し、又は第三者のために権利を設定若しくは譲渡するときは、あらかじめ書面により当行の承諾を得るものとします。当行は、その変更等がなされても担保価値の減少等債権保全に支障を生ずるおそれがない場合には、これを承諾するものとします。


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2017年6月6日火曜日

法定相続情報証明制度

登記研究831号(平成29年5月号)に以下の記載があります。


「法定相続情報証明制度の創設に伴う不動産登記規則改正の逐条解説」


福岡地方裁判所小倉支部判事補(前法務省民事局付検事)
宮崎 文康


「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務等の取扱いについて」


法務省民事局民事第二課係長
西澤 徹


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2017年6月5日月曜日

被相続人の同一性を証する情報(相続登記)





令和元年9月20日追記
下記先例の登記研究の解説には、
住民票及び戸籍の附票を取得してもなお住所がつながらない時に、登記済証で被相続人の同一性を判断することになる、ようなことを記載してあった。
確かにそのように解釈する合理性は理解できるが、そうはいっても下記先例では、登記済証は、住民票及び戸籍の附票と並列関係となっているのであるから、後出しの解説でそのような解釈を加えるのは、やはり納得できない。


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平成29年9月16日追記
某法務局から(除かれた)戸籍の附票を要求されたのが,納得いかん。
補正ではなく,あくまでお願いということだったが。
死亡から5年以内だったため添付済みの住民票の除票のほかに,(除かれた)戸籍の附票も出してくれと言われた。
根拠を尋ねたところ,取得できる書類は取得してもらうことになっていると返答された。


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登記研究831号(平成29年5月号)の133頁の訓令・通達・回答に,


「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について」


(平成29年3月23日付け法務省民二第174号法務省民事局民事第二課長回答)


の解説が記載されています。


第1概要


被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なるときに,同一性を証する情報として,住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),戸籍の附票(登記記録上の住所が記載されているものに限る。),又は所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば,不在籍証明書,不在住証明書など他の添付情報を求めることなく相続登記をすることができる。




第2基本的な考え方


1被相続人の同一性を証する情報


登記官において,所有権の登記名義人と戸籍等の謄本に記載されている者とが同一人であることの蓋然性があると判断できる情報でなければならない。


被相続人の同一性を証する情報に具体的に該当する書面について検討するにあたっては,当該書面が,①登記記録上の所有権の登記名義人との結び付き及び②戸籍等の謄本に記載された者との結び付きをいずれも架橋するものでなければならない点に留意する必要がある。


2住民票の写し又は戸籍の附票の写し


それのみで同一性を認定することができる。


3所有権に関する被相続人名義の登記済証


それのみで同一性を認定することができる。


4不在籍証明書・不在住証明書


不在籍証明書等を発行するか否かは地方公共団体の裁量に委ねられている(大阪高等裁判所平成14年10月8日判例タイムズ1121号139頁),「現在はない」旨の証明をしている市区町村もある。


第3 その他の被相続人の同一性を証する情報


個々の事案により申請人から提供することができる情報が異なることから,一律に定めることは困難であり,個々の事案を審査する登記官の裁量的な判断に委ねられているといえる。


(1)固定資産税の納税証明書又は評価証明書


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(2)「所有権の登記名義人と戸籍上の被相続人とは同一である」旨の相続人全員の上申書(印鑑証明書付き)


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(3)不在籍証明書等


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(4)その他の書面


①所有権の登記名義人宛て(登記記録上の住所と同一であることを要する。)の消印のある郵便物,②相続登記の対象である不動産に登記されている所有権以外の登記名義人の証明書(印鑑証明書付き),③隣接地(近傍地)所有者の証明書(印鑑証明書付き),④前所有者の証明書(印鑑証明書付き),⑤(共有地であれば)他の共有者の証明書(印鑑証明書付き),⑥名寄帳及び当該名寄帳に記載され,かつ,相続登記完了している物件の登記事項証明書(閉鎖登記簿謄本)


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


消除の起算日も法令上明確であるので,被相続人の死亡日から5年以上経過して相続登記が申請された場合には,「廃棄処分により除住民票の写し等の添付はできない」旨の市区町村長の証明書の提供は不要と考えられる。


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結論としては,
①住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),
②戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているものに限る。),
③所有権に関する被相続人名義の登記済証,
のいずれかの添付があれば,それのみで被相続人の同一性を認定することができるが,


それ以外の書類については,複数の書類を組み合わせて,登記官が同一人であることの蓋然性があると判断できるような情報を提供することになる。


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数次相続と全部相続させる遺言2

登記研究831号(平成29年5月号)の163頁のカウンター相談249によりますと,


「土地の所有権の登記名義人甲が平成26年に死亡し,乙と丙が相続したが,相続登記が未了のうちに丙が平成27年に死亡し,その法定相続人はAとBである場合において,

①丙名義の「全ての相続財産をAに相続させる」旨の公正証書による遺言書
及び
②乙が土地を取得する旨に加えて,Bによる遺留分減殺請求権の行使がない旨の記載(又は上申書)がある乙名義とA名義の遺産分割協議書

を添付して,甲から乙への相続による所有権の移転の登記が申請されたときは,これを実行して差し支えない。

遺産分割協議「前」にBによる遺留分減殺請求権の行使がされていたときは,乙,A及びBが遺産分割の協議を行う必要がある。」



遺留分権利者たるBが減殺請求権を行使したときに,Bに帰属する権利が遺産性を帯びるのかどうかが問題となります。


最高裁判例はなく,学説も乏しく,文献もないので,他の判例を参考にして,考えることになります。


全部包括遺贈の最二判平8年1月26日民集50巻1号132頁,割合的な相続分の指定の最一決平24年1月26日判タ1369号124頁の以上を踏まえて,Bによる遺留分減殺請求の結果,Bに帰属する本件遺産についての権利も遺産性を帯びるとして,Bも遺産分割の当事者となるとする見解が相当と思われます。


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①全部相続させる旨の遺言(包括的全部相続させる旨の遺言も含む)に対して,遺留分減殺請求権が行使された場合は,物権共有になると解されています。その分割は,共有物分割手続により行うことになります。


②相続分の指定及び割合的相続させる旨の遺言に対して,遺留分減殺請求権が行使された場合は,遺産共有になると解されています。その分割は,遺産分割手続により行うことになります。


本件事案について,丙名義の「全ての相続財産をAに相続させる」旨の遺言により,丙の相続財産のうち,丙固有の遺産については,確定的にAに帰属していることから,遺産性が失われていることになります。遺留分減殺請求後の分割は,共有物分割手続により行うことになります。


しかし,丙が相続した被相続人甲の遺産については,遺産分割協議が未了の状態の法定相続分という共有持分であるため遺産性を帯びており,Aが遺言により全部相続した後であっても,乙とAの遺産分割協議前にBが遺留分減殺請求権を行使した場合は,Bには遺産性を帯びた権利が帰属するため,遺留分減殺請求後の分割は遺産分割手続により行うことになります。


なお,登記研究831号(平成29年5月号)の163頁のカウンター相談249は,法定相続人の一部を除く相続分の指定の事例で,遺留分権利者が存在する場合は遺産分割協議に参加しなければならない(又は遺留分放棄書を添付)という「カウンター相談Ⅱの141頁」について,まったく言及をしていません。




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2017年6月2日金曜日

遺族補償年金に関する判例(受給要件の夫の年齢)





本最高裁判決は,「死亡した職員の夫について,当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを遺族補償年金の受給の要件としている部分は,憲法14条1項に違反しない。」


と判断しました。


死亡した職員の妻については,当該妻が一定の年齢に達していることは受給の要件とされていないにもかかわらず,夫については,一定の年齢に達していることを受給の要件とされていることから,憲法14条1項の性別による差別に当たるかどうかが争点となっていました。


一審の大阪地方裁判所が違憲判決を出したため注目されていましたが,原審は合憲と判断していました。


原審 平成25(行コ)211 大阪高等裁判所 平成27年6月19日
一審 平成23(行ウ)178 大阪地方裁判所  平成25年11月25日
(最高裁HP 1審http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86612) 




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事件番号 平成27(行ツ)375     

事件名 遺族補償年金等不支給決定処分取消請求事件      

裁判年月日 平成29年3月21日      

法廷名 最高裁判所第三小法廷  判決     

結果  棄却     

判例集等巻・号・頁

  判示事項
 地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち死亡した職員の夫について一定の年齢に達していることを遺族補償年金の受給の要件としている部分と憲法14条1項





裁判要旨
 地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち,死亡した職員の夫について,当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを遺族補償年金の受給の要件としている部分は,憲法14条1項に違反しない。

     

最高裁HP
全文


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