2016年4月28日木曜日

自己破産と生命保険金(死亡保険金)に関する判例

      
破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう将来の請求権に該当し,破産財団に属する ので,


たとえ,破産手続開始以後に被保険者が死亡した場合であっても,死亡保険金(生命保険金)は破産者の自由財産にはなりません。


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裁判年月日 平成28年4月28日 最高裁判所第一小法廷  判決     

結果  棄却     


判示事項

裁判要旨
 破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産財団に属する

参照法条

全文  最高裁判所HP
全文

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2016年4月22日金曜日

相続放棄と強制執行



(1)債務名義の成立後(判決の場合は,事実審の口頭弁論終結後)に,


債務者が死亡して,相続が発生した場合は,


債権者は,債務者の相続人に対して強制執行をするためには,承継執行文の付与の申し立てをする必要があります。


債権者が承継執行文の付与の申し立てをする際は,


債務者の相続発生及び法定相続人を証するため,戸籍謄本・除籍謄本を提出する必要があります。


(2)しかし,債務者の相続人が相続放棄をしたかどうかについては,債権者の証明は不要とされ,執行文の付与機関も執行機関も調査をしません。


そのため,債務者の相続人が相続放棄をしていたとしても,承継執行文は付与されるため,債務者の相続人の固有の財産に対して,強制執行をされることがあります。


相続放棄をした債務者の相続人は,承継執行文の排除を求めるために,承継執行文の付与に対する異議の申し立て又は異議の訴えなどを提起しなければなりません。


強制執行の開始の際には,承継執行文の対象となる債務者の相続人に対して,裁判所から執行文付きの債務名義謄本などの書類が送達されますので,強制執行の開始を知ることができます。


相続放棄をした相続人が,異議の申し立て又は異議の訴えなどをしないで,放置をしていると,強制執行の手続き(差押,換価,配当)が自動的に進んでいきますので注意が必要です。


(3)なお,相続放棄の申述受理によって既判力が生じることはありませんので,債権者から訴訟を提起されるおそれがありますし,債権者が被相続人に対する債務名義を取得している場合には,強制執行されるおそれがありますので,


相続放棄の申述(申し立て)が家庭裁判所に受理されたら,おしまいという発想は捨てましょう。


どうやら,インターネット上などで,相続放棄の申述(申し立て)は簡単にできるとの情報を流れており,素人が専門家に相談せずに,自分で相続放棄の申述(申立て)をしていることも多いようです。


しかし,上記のとおり,相続放棄の申述受理後の手続きが必要なる場合もありますので,注意してください。


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2016年4月14日木曜日

所有権の権利の消滅に関する定め



所有権の権利の消滅(死亡を終期とする場合)に関する定めの利用方法ですが,


甲と乙が内縁の夫婦で,甲と乙が現在居住している甲が所有権登記名義人の土地建物について,


甲死亡後の乙の生活のために,いったんは乙に所有権の移転の登記をするが,


乙の死亡後は,名義を戻して,甲の相続人に土地建物を相続させたいと考える場合でしょうか。


乙は,法律婚による配偶者ではないため,甲の相続人にはなれませんので,


甲の死亡後,乙は,甲の相続人から現在居住している建物から追い出される可能性があります。


しかし,単純な贈与などで乙に所有権を移転してしまうと,乙の死亡後は,乙の相続人が相続してしまうことになり,甲の相続人としては不満が生じるでしょう。


そこで,所有権の権利の消滅(死亡を終期とする場合)に関する定めの活用が考えられます。


*ただし,課税される各種税金を考慮する必要があるでしょう。


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登記研究817号(平成28年3月号)の114頁以下(実務の視点)によると,


所有権について,不動産登記法69条を適用して登記権利者が単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができるかどうかについてですが,


実務の視点は,適用否定説,


香川保一(元最高裁判所判事)は,適用肯定説,


とされており,争いがあるようですが,登記実務は否定説のようです。


(1)受贈者が死亡したときは,贈与契約による所有権の移転が失効するという受贈者の死亡を期限とする旨を定めた場合,


不動産登記法59条5号の権利の消滅に関する定めに該当する。


登記事項は,「受贈者何某が死亡した時は所有権移転が失効する」と記録(不動産登記記録例集203参照)され,贈与による所有権の移転の登記の付記によってされる(規則3条6号)。


(2)受贈者は当該不動産を第三者へ処分して,第三者への所有権の移転の登記をすることができる。


その場合において,受贈者が死亡した時は,贈与者は所有権失効の定めを付記登記により公示していたのであるから,贈与者は第三者に対して所有権の復帰を対抗することができる。


贈与者を権利者,現在の所有権の登記名義人である第三者を登記義務者として,所有権の移転の登記をすることになる。


(3)所有権について,不動産登記法69条を適用して登記権利者が単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができるかどうかについて,


大正3年8月24日大審院決定(民録20輯658頁)と登記実務を理由として,


(文章を読んだ限りでは,明記はされていないが),所有権の抹消の登記ではなく,移転の登記によるべきと記載していることから,不動産登記法69条の適用否定説を採用しているもよう。


(4)なお,香川保一(元最高裁判所判事)『新不動産登記法逐条解説(二)』テイハン平成20年の193頁の法69条の解説によると,


所有権を除外する合理的な理由がなく,むしろ必要があることから,


所有権に関しても権利者の単独申請により抹消登記ができるとして,適用肯定説を採用している。


なお,所有権の抹消の登記の代わりに移転の登記をする場合も,類推適用により単独申請ができるとしている。


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2016年4月2日土曜日

銀行取引と相続・資産承継を巡る諸問題




個人的には,下記の3つを興味深く読ませていただきました。


民法(相続関係)部会の相続法制の見直し案にも言及しています。


一般社団法人 全国銀行協会HP
http://www.zenginkyo.or.jp/abstract/news/detail/nid/5958/


金融法務研究会第2分科会報告書「銀行取引と相続・資産承継を巡る諸問題」について(金融法務研究会)


平成28年3月31日


第4章「遺言があった場合における相続預金の払戻し-遺留分減殺請求権との関係-」(山田誠一神戸大学教授)


第5章「預金債権を『相続させる』旨の遺言と遺言執行者の職務権限」(加毛明東京大学准教授)


第6章「相続債務(借入)の承継・処理を巡る諸問題―遺言による承継指定ほか」(沖野眞已東京大学教授)


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