2015年7月23日木曜日

代襲相続人の特別受益



登記研究 平成27年6月号 808号 53頁 実務の視点には,


「登記実務における取り扱いは,代襲相続人が被代襲者の死亡後又は被代襲者が相続権を失った後に被相続人から受けた特別受益額は,民法903条1項の対象となるが,それ以前に代襲相続人が被相続人から婚姻,養子縁組のため若しくは生計の資本として受けた贈与の額は,含まれない(昭和32年8月28日付け民事甲第1609号民事局長回答・登記研究119号20頁)」と記載してありました。


一方で,「代襲相続人が被相続人から財産の贈与を受けている場合は,その贈与の時期が被代襲者の死亡より前であると後であるとを問わず,民法903条の適用があるとの考え方もある。」として(上記昭和32年民事局長回答後に出された)質疑応答(登記研究169号50頁)が記載してありました。


いずれの説を採用するにしても,特別受益の紛争については,当事者間で話し合いがつかなければ裁判所で決すべき事柄ですし,特別受益証明書については具体的な特別受益の内容が記載されていなくてもOKですので,登記申請上の支障になることはないでしょう。




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相続不動産と占有者(居住者)の保護



月報司法書士 2015年7月号 27頁 「相続不動産における居住の保護」


大阪市立大学大学院法学研究科教授 高橋 眞 


によると,


最判昭41年5月19日民集20巻5号947頁は,


「他のすべての相続人らがその共有持分を合計すると,その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといって,共有物を現に占有する少数持分権者(共有持分12分の1)に対して,当然にその明渡を請求することができるものではない。少数持分権者は自己の持分によって,共有物を使用収益する権限を有し,これに基づいて共有物を占有する者と認められるからある。従って,多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには,その明渡を求める理由を主張し立証しなければならない。」


*本判決からは,「その明渡を求める理由」が何であるかは明らかではない。


*本件は,(そもそも所有者である被相続人と占有者である相続人は同居しておらず),被相続人と占有者との間の関係悪化により,使用貸借の成立や共有物の使用に関する合意の成立は否定される事案である。




最判平8年12月17日民集50巻10号2778頁は,


①被相続人と同居していた相続人は,


②被相続人との合意(合意の推認)により,


③遺産分割による所有関係の確定までの間は,


④建物全部につき相続開始前と同一の態様における無償使用が認められる。


⑤使用貸借契約により,同居していた相続人の取得する利益に法律上の原因がないということはできないので,不当利得返還債務は負わない。


*占有者に建物全部の占有権限がない場合は,占有者の共有持分を除く部分につき,不当利得が成立する。


最判平10年2月26日民集52巻1号255頁は,


①内縁の夫婦が,共有不動産を共同で使用してきたときは,


②両者の合意(合意の推認)により,


③この合意の変更または共有関係が解消されるまでの間は,


④一方の死亡後,他方が当該不動産を単独で使用できる。


*平成8年判決(使用貸借)とは異なり,この合意は共有物の管理に関する合意として,死亡した内縁の配偶者の相続人に承継される。


*最判昭39年10月13日民集18巻8号1578頁は,内縁の夫死亡後,その所有家屋に居住する内縁の妻に対して,内縁の夫の相続人(養子)からの家屋明渡請求につき,具体的事情(離縁が決定していたが戸籍上の手続をしないうちに内縁の夫が死亡したこと,相続人には家屋使用の必要性がなかったこと,内縁の妻の子女は独立しておらず明け渡しにより家計上相当重大な打撃を受けるおそれがあること等)のもと,権利濫用に当たるとして排斥した。


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2015年7月21日火曜日

相続放棄申述受理通知書と相続登記





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登記研究 平成27年6月号 808号 147頁の


質疑応答【7969】によりますと,


【相続を原因とする所有権の移転の登記の申請において,


相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載された「相続放棄等の申述有無についての照会に対する家庭裁判所の回答書」や「相続放棄申述受理通知書」を登記原因を証する情報の一部とすることができる


なお,質疑応答7862(登記研究720号205頁の取り扱いは,変更されたものと了知願います。】

震災復興事業に基づく用地取得に関しては,平成26年4月24日付け法務省民二第265号法務省民事局民事第二課長依命通知により,相続放棄申述受理証明書に代えて,「相続放棄等の申述有無についての照会に対する家庭裁判所の回答書」によることが認められていましたが,


本件質疑応答は,震災復興とは関係のない相続を原因とする所有権の移転の登記の申請においても認めるものとしています。


平成26年4月24日付け法務省民二第265号法務省民事局民事第二課長依命通知が認めた「相続放棄等の申述有無についての照会に対する家庭裁判所の回答書」には証明文言の記載がないにもかかわらず,相続放棄があったことを証する登記原因証明情報として認める扱いとされましたので,


同じく証明文言の記載がない「受理通知書」も相続放棄があったことを証する登記原因証明情報として認められるに至ったのでしょう。


なお,受理通知書と受理証明書には記載内容に相違があります。


受理通知書には,被相続人の本籍地の記載がなし,死亡日の記載があり
受理証明書には,被相続人の本籍地の記載があり,死亡日の記載がなし,証明文言の記載があり


*銀行は,受理証明書を要求するでしょうから,やはり受理証明書を取得すべきでしょう。


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