2012年5月4日金曜日

葬儀費用(葬式費用)の負担者の考え方



葬儀に要する費用については同葬儀を主宰した者が負担し,そのうち埋葬等の行為に要する費用は祭祀主催者が負担するものとされた事例


事件番号 平成23(ネ)968 事件名 貸金返還等請求控訴事件

裁判年月日 平成24年03月29日

 名古屋高等裁判所  民事第3部

最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82234&hanreiKbn=04




【事案の概要】

Eが死亡した。相続人は子Aと子Cの2名。

EとA,Cは20年以上疎遠であったため,Eの兄弟であるBが葬祭・火葬・納骨などを行った。

Bが葬儀の喪主を務めた。

Bが,葬儀費用(葬祭費用,火葬費用,納骨代,お布施など)を立て替えたとして,

相続人A,Cを訴えた。

原審の名古屋地方裁判所が,Bの請求を棄却したので,Bが控訴。

(なお,Bが立て替えた①Eのアパートの賃貸借契約の解約に基づく原状回復費用,②Eの公共料金については,原審の名古屋地方裁判所が請求を認容しています。)




【名古屋高等裁判所の判断】

(1)葬儀費用とは,

①死者の追悼儀式に要する費用

および

②死者の埋葬等の行為に要する費用((死体検案,死亡届,死体の運搬,火葬に要する費用)

のこと。


(2)葬儀費用の負担については,

亡くなった者が,あらかじめ自分の葬儀の契約を締結しておらず,

かつ,

相続人や関係者との間で葬儀費用の負担について合意がない場合は,

①死者の追悼儀式に要する費用は,追悼儀式を主宰した者が負担する。

②死者の埋葬等の行為に要する費用は,祭祀承継者が負担する。



*追悼儀式を主宰した者とは,自己の責任と計算で,儀式を準備,手配,挙行した者のこと。

*祭祀主宰者とは,民法897条に定める者のこと。




(3)本件において,

①死者の追悼儀式に要する費用の負担者:

亡くなったEが,あらかじめ自分の葬儀の契約を締結しておらず,


かつ,

相続人A,Cや関係者との間で葬儀費用の負担について合意がないので,

追悼儀式を主宰したBが負担する。

(裁判の結果は,Bの請求は棄却)


②死者の埋葬等の行為に要する費用の負担者:

祭祀承継者につき,Eが指定しておらず,

かつ,

慣習上明白であるとは判断できないので,

家庭裁判所において,祭祀主宰者が定められる必要がある。

本件では,家庭裁判所において祭祀主宰者が定められていないので,

結局,死者の埋葬等の行為に要する費用を負担するべき者は定まらない(=負担者が不明の状態になっている)。

(裁判の結果は,Bの請求は棄却)


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