2014年1月3日金曜日

親子の縁を切る3(生活保護法)

平成25年12月6日,生活保護法改正案が衆議院で可決され,改正法が成立しました。

改正された生活保護法には,下記の規定が新設されました。

下記の規定は平成二十六年七月一日から施行されます。


これにより,扶養義務者(親子や兄弟姉妹)と,

生活保護の申請者(生活保護受給者)との関わり合いが強度になったといえます。

厚生労働省令の内容は現時点では不明ですが,

扶養義務者が,単に親子(兄弟姉妹)の縁を切ったからという主観的な事情では,例外には当たらないことになると思います。


ドメスティックバイオレンス(DV)に関係する法律は,夫婦間などの恋人間の暴力に関する法律ですし,

児童虐待防止に関係する法律は,親の未成年子に対する虐待に関する法律ですし,

高齢者の虐待防止に関係する法律は,子の高齢親に対する虐待に関する法律ですので,

現時点で,成年の子が親を扶養しなくてもよいというような内容の法律は創設されていません。


基本的な法律である民法において,親子の間には扶養義務が定められているので,

いわゆる毒親(モラハラ)だったからという理由で,成年の子が親に対して扶養しないということは認められません。

自分たち家族の生活費だけで金銭的余裕が無いような場合は,扶養を拒絶することが認められています。

民法の定める扶養とは金銭扶養のことですので,引き取って面倒をみろということではなく,経済的な援助をしろ,ということです。

なお,そもそも生活保護法の第4条第2項には,生活保護よりも民法の扶養義務を優先させるとの原則が規定されています。


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生活保護法

第2条第8項

 保護の実施機関は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。


第28条第2項

 保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条の規定の施行のため必要があると認めるときは、保護の開始又は変更の申請書及びその添付書類の内容を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、要保護者の扶養義務者若しくはその他の同居の親族又は保護の開始若しくは変更の申請の当時要保護者若しくはこれらの者であつた者に対して、報告を求めることができる。


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民法


第八百七十七条  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

第八百七十八条  扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

第八百七十九条  扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

第八百八十条  扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。


第八百八十一条  扶養を受ける権利は、処分することができない。  


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