2016年4月14日木曜日

所有権の権利の消滅に関する定め



所有権の権利の消滅(死亡を終期とする場合)に関する定めの利用方法ですが,


甲と乙が内縁の夫婦で,甲と乙が現在居住している甲が所有権登記名義人の土地建物について,


甲死亡後の乙の生活のために,いったんは乙に所有権の移転の登記をするが,


乙の死亡後は,名義を戻して,甲の相続人に土地建物を相続させたいと考える場合でしょうか。


乙は,法律婚による配偶者ではないため,甲の相続人にはなれませんので,


甲の死亡後,乙は,甲の相続人から現在居住している建物から追い出される可能性があります。


しかし,単純な贈与などで乙に所有権を移転してしまうと,乙の死亡後は,乙の相続人が相続してしまうことになり,甲の相続人としては不満が生じるでしょう。


そこで,所有権の権利の消滅(死亡を終期とする場合)に関する定めの活用が考えられます。


*ただし,課税される各種税金を考慮する必要があるでしょう。


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登記研究817号(平成28年3月号)の114頁以下(実務の視点)によると,


所有権について,不動産登記法69条を適用して登記権利者が単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができるかどうかについてですが,


実務の視点は,適用否定説,


香川保一(元最高裁判所判事)は,適用肯定説,


とされており,争いがあるようですが,登記実務は否定説のようです。


(1)受贈者が死亡したときは,贈与契約による所有権の移転が失効するという受贈者の死亡を期限とする旨を定めた場合,


不動産登記法59条5号の権利の消滅に関する定めに該当する。


登記事項は,「受贈者何某が死亡した時は所有権移転が失効する」と記録(不動産登記記録例集203参照)され,贈与による所有権の移転の登記の付記によってされる(規則3条6号)。


(2)受贈者は当該不動産を第三者へ処分して,第三者への所有権の移転の登記をすることができる。


その場合において,受贈者が死亡した時は,贈与者は所有権失効の定めを付記登記により公示していたのであるから,贈与者は第三者に対して所有権の復帰を対抗することができる。


贈与者を権利者,現在の所有権の登記名義人である第三者を登記義務者として,所有権の移転の登記をすることになる。


(3)所有権について,不動産登記法69条を適用して登記権利者が単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができるかどうかについて,


大正3年8月24日大審院決定(民録20輯658頁)と登記実務を理由として,


(文章を読んだ限りでは,明記はされていないが),所有権の抹消の登記ではなく,移転の登記によるべきと記載していることから,不動産登記法69条の適用否定説を採用しているもよう。


(4)なお,香川保一(元最高裁判所判事)『新不動産登記法逐条解説(二)』テイハン平成20年の193頁の法69条の解説によると,


所有権を除外する合理的な理由がなく,むしろ必要があることから,


所有権に関しても権利者の単独申請により抹消登記ができるとして,適用肯定説を採用している。


なお,所有権の抹消の登記の代わりに移転の登記をする場合も,類推適用により単独申請ができるとしている。


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札幌市中央区 
石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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