2016年4月22日金曜日

相続放棄と強制執行



(1)債務名義の成立後(判決の場合は,事実審の口頭弁論終結後)に,


債務者が死亡して,相続が発生した場合は,


債権者は,債務者の相続人に対して強制執行をするためには,承継執行文の付与の申し立てをする必要があります。


債権者が承継執行文の付与の申し立てをする際は,


債務者の相続発生及び法定相続人を証するため,戸籍謄本・除籍謄本を提出する必要があります。


(2)しかし,債務者の相続人が相続放棄をしたかどうかについては,債権者の証明は不要とされ,執行文の付与機関も執行機関も調査をしません。


そのため,債務者の相続人が相続放棄をしていたとしても,承継執行文は付与されるため,債務者の相続人の固有の財産に対して,強制執行をされることがあります。


相続放棄をした債務者の相続人は,承継執行文の排除を求めるために,承継執行文の付与に対する異議の申し立て又は異議の訴えなどを提起しなければなりません。


強制執行の開始の際には,承継執行文の対象となる債務者の相続人に対して,裁判所から執行文付きの債務名義謄本などの書類が送達されますので,強制執行の開始を知ることができます。


相続放棄をした相続人が,異議の申し立て又は異議の訴えなどをしないで,放置をしていると,強制執行の手続き(差押,換価,配当)が自動的に進んでいきますので注意が必要です。


(3)なお,相続放棄の申述受理によって既判力が生じることはありませんので,債権者から訴訟を提起されるおそれがありますし,債権者が被相続人に対する債務名義を取得している場合には,強制執行されるおそれがありますので,


相続放棄の申述(申し立て)が家庭裁判所に受理されたら,おしまいという発想は捨てましょう。


どうやら,インターネット上などで,相続放棄の申述(申し立て)は簡単にできるとの情報を流れており,素人が専門家に相談せずに,自分で相続放棄の申述(申立て)をしていることも多いようです。


しかし,上記のとおり,相続放棄の申述受理後の手続きが必要なる場合もありますので,注意してください。


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札幌市中央区 
石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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