2012年7月31日火曜日

債権者が相続放棄に納得できない場合(札幌) 

当事務所(司法書士・行政書士・社会保険労務士)では,債務者の相続人の相続放棄に納得できない債権者のご相談・ご依頼を受け付けています。


140万円以内の金額の場合は,司法書士が訴訟代理人になることができます。


家賃滞納をしていた賃借人が死亡し,相続人が相続放棄をしたが,納得できない。滞納家賃や原状回復費用を支払ってほしい。


お金を貸していた知人が死亡したが,相続人が相続放棄をした。なんとか相続人から借金を返済して欲しい。


債務者の相続人は,相続放棄をしたにもかかわらず,死亡した債務者が名義の建物に居住し続けている,死亡した債務者名義の自動車にそのまま乗っているので,納得できない。


借金が返済できない場合は,家を売って返済すると言っていたのに,債務者の死亡直前に債務者から相続人に名義を変えている。納得できない。財産の隠匿だ。


相続放棄をした相続人が,債務者の死亡後に自分の名義に土地・建物の名義を変えているようだ。財産の隠匿だ。


札幌市中央区 
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民法939条により,相続の放棄をした者は,

初めから相続人にならなかったものとみなされるので,

被相続人の債務(借金など)を承継しないことになります。



ところで,一般の方には理解しがたいと思いますが,家庭裁判所による相続放棄の受理審判がなされても,
債権者の債権の請求を無効にする効力が生じるわけではありません。


なぜなら,家庭裁判所は,相続放棄が無効となる理由(法定単純承認の事由)を厳格に審査しないからです。
実際,家庭裁判所は被相続人の死亡から3ヵ月以内に相続放棄の申述があった場合には,ほぼ無条件で受理の審判(相続放棄を受け付けましたという判断)を出しています。
また,仮に,相続放棄の受理審判後に,相続放棄をした相続人が債務者の相続財産を自分の名義に変えたり,売却したりしても,家庭裁判所が調査をして相続放棄の無効を認定するというようなことはありません。



そのため,債権者が積極的に相続放棄の無効を主張していく必要があります。
法律上,債権者は,(相続放棄をした)相続人に対して当該債権に基づく民事訴訟を提起して,相続放棄の無効(法定単純承認の事由など)を主張することができることになっています。


当該訴訟で,相続人が相続放棄の受理審判があったこと主張しても,債権者が法定単純承認の事由があったことの立証に成功すれば,相続放棄は無効ということになります。


相続放棄をした相続人が,相続放棄の受理審判により,被相続人の債務は相続しないことが確定したと勘違いし,当該民事訴訟の提起を無視した場合は,擬制自白によって債権者が勝訴します。


相続放棄をした相続人が,当該訴訟の判決正本を受け取った翌日から2週間以内に控訴しない場合は,判決が確定します。


当該勝訴判決が確定した場合は,
債権者は,相続放棄は無効であり被相続人の債務(借金など)を相続したとして,相続人に対して強制執行をすることができます。


相続放棄をした相続人が,当該勝訴判決に対して,再審の訴えを提起することは無理だと思います(民事訴訟法第338条第1項ただし書き)。


強制執行に対する不服申し立ての方法として,請求異議訴訟があります。
限定承認と相続放棄は手続きが異なるので,何ともいえませんが(限定承認の手続きは2ヵ月をくだらない官報公告と知れたる債権者には催告をする必要がありますが,相続放棄の手続きは債権者に対して官報公告や催告は不要です),


限定承認に関する大判昭15年2月3日:債権者が債務者たる相続人から限定承認の事実を通知され,これを了知しながら無留保の請求をなし,債務者も当該事実を主張しなかったため,無留保判決がなされた場合,当該判決を執行することは不法であり請求異議の原因となる,という大審院判例があります。


当該大審院判例を敷衍すると,
相続放棄をした相続人が,あらかじめ訴訟提起をした債権者に対して,相続放棄をした旨を通知していた場合は,
相続放棄をした相続人が,債権者の訴訟提起を無視したため,債権者勝訴判決が確定し,強制執行を受けた場合は,請求異議訴訟を提起できる可能性があります。


ただし,たとえ請求異議訴訟が可能であっても,債権者が法定単純承認事由の立証に成功した場合は,やはり,相続放棄は無効になるので,強制執行は適法ということになります。




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以下は,破産管財人が相続放棄の無効を認定した事例

(登記情報609号47ページ)

1:破産申立ての予定者は,被相続人の不動産を共同相続していたが,

他の共同相続人が単独相続する内容の遺産分割協議が成立していたので,

破産申立ての予定者が相続した財産はないものとして破産を申し立てた。


2:ところが,破産裁判所から不動産の名義が被相続人の名義のままであり,

遺産分割は登記が対抗要件なので,破産申立人は不動産に対し共有持分を有していると指摘された。

3:そこで,破産申立人は相続開始から約8年間経過していたが,

破産裁判所から指摘された時点から熟慮期間が進行するとして相続放棄を申述したところ,受理審判がなされた。

4:ところが,選任された破産管財人は,相続放棄を無効と認定した。


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