2013年11月21日木曜日

不動産の生前贈与による相続紛争の防止

遺言によって,相続紛争を防止する方法もありますが,

被相続人(遺言者)の死亡=相続発生ですので,

死亡後に遺言者の希望が貫徹される保障はありません。


そこで,被相続人の生前に相続紛争を防止する方法があります。

生前に相続時精算課税制度(2500万円まで特別控除)を利用して,

あとを次いで欲しい相続人に対して不動産を贈与します。

相続開始時には,預貯金が主たる遺産として残るようにします。

預貯金は可分債権ですので,

相続人全員で遺産分割協議をしなくても,相続人が単独で銀行に対して法定相続分を請求することができます(遺産分割協議を経由した場合と比較して手続的負担は生じます)。

不動産をもらっていない相続人が遺産分割調停の申立てをしても,

預貯金は可分債権ですので,遺産分割調停・審判の対象になりません。

また,不動産をもらっていない相続人が不動産の贈与に対して特別受益の主張をしても,遺産分割調停・審判の対象となる遺産がなく,持ち戻される財産がないので,無意味な主張になります。

ただし,相続開始時の預貯金が少なく,贈与された不動産により遺留分の侵害が生じている場合は,遺留分減殺請求訴訟のなかで,特別受益を加味した遺留分の計算がおこなわれることになります。

(例)不動産の価格は1200万円,預貯金1200万円,子Aと子Bが相続人の場合。

不動産を子Aに贈与して,相続開始時の預貯金を子Aと子Bが600万円ずつ可分債権として法定相続すると,

全体の遺産は2400万円で,子の遺留分は4分の1=600万円となり,Bの遺留分を侵害していないことになるので,

Aは,Bとの遺産分割協議をすることなく,1200万円の不動産と預貯金600万円を確保することができます。


なお,不動産の贈与に対して不動産取得税や登録免許税が課税されますので,

相続時精算課税制度の利用前に,

贈与税の暦年課税110万円の基礎控除を利用して,受贈者に対して納税資金を贈与しておく方法が考えられます。



*上記の方法は,あくまで単純化した例ですので,必ず専門家に相談して下さい。


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