2013年11月1日金曜日

代償金の支払いに対して,贈与税が課税される場合




被相続人 父

相続人 子A,子B

相続財産 現金        1000万円

死亡保険金(受取人 子A) 4000万円  


子Aは死亡保険金4000万円を受け取り,子Bは現金1000万円を受けとりました。

子Aと子Bが,上記の財産を均等に取得するために,子Aが子Bに対して,代償金として1500万円を支払った場合。

子Aが受けとった死亡保険金4000万円は,民法上の相続財産ではなく,子A固有の財産となります。したがって,子Aと子Bの遺産分割の対象となるのは,現金1000万円のみです。

死亡保険金は遺産分割の対象ではないので,子Aが子Bに対して代償金を支払っているにもかかわず,子Aは代償金に対応する相続財産を子Bからまったく取得していないことになります。

下記の参照文献によると,本問の場合は,代償金1500万円全額を子Aが子Bに贈与したことになり,子Bには贈与税が課税されるとの結論を示していました。


ところで,平成16年10月29日 最高裁判所第二小法廷 決定 民集 第58巻7号1979頁 は,

「被相続人を保険契約者及び被保険者とし,

共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,

民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,

保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,

保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,

同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。」


と判断しています。


つまり,生命保険金が,特段の事情によって特別受益に準じて持戻しの対象となる場合は,

代償金の支払いがあっても,代償金の受取人に贈与税は課税されないと解されます。

本問では,生命保険金の割合が,全財産5000万円のうち4000万円(80%)を占めているので,

諸般の事情にもよりますが,

特別受益に準じて持戻しの対象となる可能性が高く,

私見としては,代償金を受けとった子Bに対して,贈与税が課税されない可能性も充分あると思います。




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『説例解説 遺産分割と相続発生後の対策 五訂版』

(中川 昌泰 監修  遺産分割研究会 編)

<大蔵財務協会>

P390

「6-6 本来の取得財産価額を超える代償金を交付すると相手方にその超過金額に対する贈与税が課される」

を参考にしました。


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