2015年7月23日木曜日

相続不動産と占有者(居住者)の保護



月報司法書士 2015年7月号 27頁 「相続不動産における居住の保護」


大阪市立大学大学院法学研究科教授 高橋 眞 


によると,


最判昭41年5月19日民集20巻5号947頁は,


「他のすべての相続人らがその共有持分を合計すると,その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといって,共有物を現に占有する少数持分権者(共有持分12分の1)に対して,当然にその明渡を請求することができるものではない。少数持分権者は自己の持分によって,共有物を使用収益する権限を有し,これに基づいて共有物を占有する者と認められるからある。従って,多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには,その明渡を求める理由を主張し立証しなければならない。」


*本判決からは,「その明渡を求める理由」が何であるかは明らかではない。


*本件は,(そもそも所有者である被相続人と占有者である相続人は同居しておらず),被相続人と占有者との間の関係悪化により,使用貸借の成立や共有物の使用に関する合意の成立は否定される事案である。




最判平8年12月17日民集50巻10号2778頁は,


①被相続人と同居していた相続人は,


②被相続人との合意(合意の推認)により,


③遺産分割による所有関係の確定までの間は,


④建物全部につき相続開始前と同一の態様における無償使用が認められる。


⑤使用貸借契約により,同居していた相続人の取得する利益に法律上の原因がないということはできないので,不当利得返還債務は負わない。


*占有者に建物全部の占有権限がない場合は,占有者の共有持分を除く部分につき,不当利得が成立する。


最判平10年2月26日民集52巻1号255頁は,


①内縁の夫婦が,共有不動産を共同で使用してきたときは,


②両者の合意(合意の推認)により,


③この合意の変更または共有関係が解消されるまでの間は,


④一方の死亡後,他方が当該不動産を単独で使用できる。


*平成8年判決(使用貸借)とは異なり,この合意は共有物の管理に関する合意として,死亡した内縁の配偶者の相続人に承継される。


*最判昭39年10月13日民集18巻8号1578頁は,内縁の夫死亡後,その所有家屋に居住する内縁の妻に対して,内縁の夫の相続人(養子)からの家屋明渡請求につき,具体的事情(離縁が決定していたが戸籍上の手続をしないうちに内縁の夫が死亡したこと,相続人には家屋使用の必要性がなかったこと,内縁の妻の子女は独立しておらず明け渡しにより家計上相当重大な打撃を受けるおそれがあること等)のもと,権利濫用に当たるとして排斥した。


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