2017年6月15日木曜日

財産分与と仮登記

夫婦が離婚し,財産分与として元夫名義の不動産を元妻名義にする場合ですが,
住宅ローンを返済中のときは,住宅ローンの契約に注意する必要があります。

住宅ローンの契約には,通常,期限の利益喪失特約として,

銀行の承諾無く,抵当物件を譲渡した場合,直ちに(又は請求により)期限の利益を喪失し,抵当権を実行し競売により債務の弁済に充当するとの特約があります。

よって,銀行の承諾無く,財産分与により元夫から元妻に不動産の名義を変更すると,この期限の利益喪失特約に違反したとして,競売にかけられる可能性があります。

期限の利益喪失特約に違反しないようにする方法として,住宅ローン完済時に所有権が移転する仮登記の方法があるようです。

この仮登記の方法だと,住宅ローンの完済時に所有権が移転(譲渡)することになり,所有権の移転時には,住宅ローンが消失していることから,住宅ローンの契約(期限の利益喪失特約)違反にはなりません。

しかし,見落としがあります。

離婚により,元夫婦は別居するでしょうから,住宅ローンが残り3年ぐらいなら良いですが,

それより長期の場合は,住宅ローンの完済時には,元夫が住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日を経過しているはずです。

よって,元夫は,居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例が利用できず,
元夫には,譲渡所得税が課せられる可能性があります。

*そもそも譲渡益がでない場合であれば,譲渡所得税を心配する必要はありませんが・・・


もうひとつの見落としですが,仮登記を本登記にする場合は,元夫の協力が必要になることです。住宅ローンの完済時になってから,元夫の協力を得ることができるのかは未知数といえるでしょう。


*元夫が協力しない場合,元夫を訴えることにより,本登記にすることは可能です。


さらに,仮登記の後ろに,差押などの登記がある場合には,それら後順位の登記も抹消しなければ,本登記にすることはできません。

なお,楽天銀行の不動産担保 ローン約款は,「当行は、その変更等がなされても担保価値の減少等債権保全に支障を生ずるおそれがない場合には、これを承諾するものとします。」との条項になっています。


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楽天銀行 不動産担保 ローン約款


第21条 担保


2.債務者は、担保について現状を変更し、又は第三者のために権利を設定若しくは譲渡するときは、あらかじめ書面により当行の承諾を得るものとします。当行は、その変更等がなされても担保価値の減少等債権保全に支障を生ずるおそれがない場合には、これを承諾するものとします。


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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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