2017年6月5日月曜日

被相続人の同一性を証する情報(相続登記)





令和元年9月20日追記
下記先例の登記研究の解説には、
住民票及び戸籍の附票を取得してもなお住所がつながらない時に、登記済証で被相続人の同一性を判断することになる、ようなことを記載してあった。
確かにそのように解釈する合理性は理解できるが、そうはいっても下記先例では、登記済証は、住民票及び戸籍の附票と並列関係となっているのであるから、後出しの解説でそのような解釈を加えるのは、やはり納得できない。


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平成29年9月16日追記
某法務局から(除かれた)戸籍の附票を要求されたのが,納得いかん。
補正ではなく,あくまでお願いということだったが。
死亡から5年以内だったため添付済みの住民票の除票のほかに,(除かれた)戸籍の附票も出してくれと言われた。
根拠を尋ねたところ,取得できる書類は取得してもらうことになっていると返答された。


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登記研究831号(平成29年5月号)の133頁の訓令・通達・回答に,


「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について」


(平成29年3月23日付け法務省民二第174号法務省民事局民事第二課長回答)


の解説が記載されています。


第1概要


被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なるときに,同一性を証する情報として,住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),戸籍の附票(登記記録上の住所が記載されているものに限る。),又は所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば,不在籍証明書,不在住証明書など他の添付情報を求めることなく相続登記をすることができる。




第2基本的な考え方


1被相続人の同一性を証する情報


登記官において,所有権の登記名義人と戸籍等の謄本に記載されている者とが同一人であることの蓋然性があると判断できる情報でなければならない。


被相続人の同一性を証する情報に具体的に該当する書面について検討するにあたっては,当該書面が,①登記記録上の所有権の登記名義人との結び付き及び②戸籍等の謄本に記載された者との結び付きをいずれも架橋するものでなければならない点に留意する必要がある。


2住民票の写し又は戸籍の附票の写し


それのみで同一性を認定することができる。


3所有権に関する被相続人名義の登記済証


それのみで同一性を認定することができる。


4不在籍証明書・不在住証明書


不在籍証明書等を発行するか否かは地方公共団体の裁量に委ねられている(大阪高等裁判所平成14年10月8日判例タイムズ1121号139頁),「現在はない」旨の証明をしている市区町村もある。


第3 その他の被相続人の同一性を証する情報


個々の事案により申請人から提供することができる情報が異なることから,一律に定めることは困難であり,個々の事案を審査する登記官の裁量的な判断に委ねられているといえる。


(1)固定資産税の納税証明書又は評価証明書


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(2)「所有権の登記名義人と戸籍上の被相続人とは同一である」旨の相続人全員の上申書(印鑑証明書付き)


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(3)不在籍証明書等


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


(4)その他の書面


①所有権の登記名義人宛て(登記記録上の住所と同一であることを要する。)の消印のある郵便物,②相続登記の対象である不動産に登記されている所有権以外の登記名義人の証明書(印鑑証明書付き),③隣接地(近傍地)所有者の証明書(印鑑証明書付き),④前所有者の証明書(印鑑証明書付き),⑤(共有地であれば)他の共有者の証明書(印鑑証明書付き),⑥名寄帳及び当該名寄帳に記載され,かつ,相続登記完了している物件の登記事項証明書(閉鎖登記簿謄本)


これのみでは,同一人であることの蓋然性があると判断することができる情報とまではいえないと考えられる。


消除の起算日も法令上明確であるので,被相続人の死亡日から5年以上経過して相続登記が申請された場合には,「廃棄処分により除住民票の写し等の添付はできない」旨の市区町村長の証明書の提供は不要と考えられる。


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結論としては,
①住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),
②戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているものに限る。),
③所有権に関する被相続人名義の登記済証,
のいずれかの添付があれば,それのみで被相続人の同一性を認定することができるが,


それ以外の書類については,複数の書類を組み合わせて,登記官が同一人であることの蓋然性があると判断できるような情報を提供することになる。


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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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