2014年4月1日火曜日

賃料滞納(家賃滞納)していた賃借人の相続人が相続放棄をした場合





賃料滞納(家賃滞納)していた賃借人の相続人が相続放棄をした場合,

賃貸人は,泣き寝入りをしなければならないのでしょうか?

以下のような場合は,相続放棄があったとしても,賃貸人は賃借人の関係者に滞納賃料などを請求できます。


(1)下級審判例では,賃料債務は日常家事債務にあたるとして,賃借人の配偶者に滞納賃料の支払いを命じた事例がありますので,


とりあえず,賃貸人は,賃借人の配偶者に対し,賃料債務は日常家事債務であり,相続放棄とは無関係であると主張して,

賃借人の死亡時までの滞納賃料を請求することができます。


*民法に具体的にどの範囲が日常家事債務にあたるのかが規定されているわけではありません。


よって,裁判になった場合,裁判官がどのような判断を下すかは不明です。


(2)賃借人の家族(賃借人の配偶者も含む)が,相続放棄をした場合は,


賃借権を相続放棄したことにより,賃借人と同居していた家族は賃貸物件を不法占拠していることになりますので,

賃借人の死亡後は,賃借物件を実際に使用している賃借人の家族に対して,不法行為に基づき建物明渡し時までの賃料相当損害金を請求することになります。


(3)賃借人の相続人が保証人になっていた場合は,相続放棄をしていたとしても,その相続人は保証人としての地位に基づき滞納賃料の支払い義務がありますので,免れることはできません。



(4)結果として,賃借人が独居で,保証人がおらず,相続人が相続放棄をした場合は,賃貸人は賃借人の関係者から滞納賃料を回収することは困難ということになります。


賃借人の相続財産の範囲内で回収することは可能です。


(5)なお,賃借人の相続人の中には,法定単純承認事由に該当する行為(預金の払い戻しなど)があるにもかかわらず,それを隠して相続放棄の申し立てをする者がいます。そのような不正があった場合は,賃貸人は民事訴訟の提起によって相続放棄の無効を主張することができます。


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