2015年8月17日月曜日

遺産分割協議後の相続分の譲渡



質疑応答(登記研究570号173頁)


「被相続人甲名義の土地について,A・B・Cの共有とする遺産分割の調停調書及びA・BがCに相続分を譲渡した旨の証明書を添付して,Cが単独でするC名義の相続登記の申請は認められない。」


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


登記研究平成27年7月号(809号)の実務の視点(131頁)が上記の質疑応答について,


「・・・先に共同相続人間で遺産分割の協議(又は調停)がされ,相続財産が共同相続人全員の共有とされた後に相続分の譲渡がされた場合には,中間省略の登記は認められず,まず,相続による共同相続人全員の共有名義とする所有権移転の登記を経由した上で,相続分の譲渡による持分全部の移転登記を申請しなければならない。」,


と解説しています。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^
しかしながら,遺産分割協議後の共有の性質は,いわゆる物権共有となりますので,もはや相続分の譲渡はできません。遺産分割協議後の共有状態の解消は共有物分割協議となりますし,権利の譲渡の方法は共有持分の譲渡(または共有持分の放棄)となります。


したがって,この解説は誤りです。


正しくは,「(相続分の譲渡ではなく)共有物分割協議をして,まず,相続による共同相続人全員の共有名義とする所有権移転の登記を経由した上で,共有持分の譲渡による持分全部の移転登記を申請しなければならない。」となります。


なお,どの専門書においても,相続分の譲渡は,遺産分割「前」に限ると記載されています。


追記(平成28年4月5日)
登記研究817号(平成28年3月号)の実務の視点(131頁)には,


「相続分の譲渡ができるのは,遺産分割の前に限られると解される。」,と記載されています。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
当事務所 札幌市中央区
(司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所)のHP
 
http://ishihara-shihou-gyosei.com/