2015年9月2日水曜日

姦通罪と住居侵入罪



<西田典之 刑法各論第4版 弘文堂 平成19年>の93頁には,


「・・・夫が戦地に赴いている間に姦通のために妻が男を住居に引き入れた事案に関し,大審院は,本罪の法益を居住権であるとしつつ,家長たる夫の住居権を侵害するという理由で犯罪を認めたのである(大判昭和14年12月22日(刑集18巻565頁)。」


と記載されています。


<川島武宜 結婚 岩波書店 昭和29年>の208頁には,


「また,戦争中には,出征軍人の妻の姦通が少くなく,「軍の士気に関する」という理由で憲兵がこれを弾圧しようとしたこと,そうして法律上の困難(姦通罪の成立には夫の告訴が必要であった)にもかかわらず検事がこれを住居侵入罪で起訴したことは,多くの人々の記憶に新たなところであるが,私個人も埼玉県のある小都市の状態について町役場の人から実情を聞いたことがある。」


と記載されています。


上記の大審院判例は知っていましたが,姦通罪が適用できなかったので検事が住居侵入罪で起訴したという点は知りませんでした。


やはり,判例を理解するには,時代背景というものも理解しないといけないですね。


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