2016年7月17日日曜日

簡易裁判所の民事訴訟手続(札幌)

当事務所では,札幌簡易裁判所のほか,岩見沢,夕張,滝川,室蘭,伊達,苫小牧,浦河,静内,小樽,岩内の各簡易裁判所における,①簡易裁判所の民事訴訟の相談
②簡易裁判所の訴状及び答弁書の作成
③簡易裁判所の訴訟代理(訴額が140万円以内に限る)

を承っております。
札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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18条:簡易裁判所に訴えを提起した場合であっても,裁判所の裁量によって,地方裁判所に移送されることがあります。複雑難解な事件については慎重な審理判断が要されるところ,簡易裁判所の簡易な手続での審理判断には適さないからです。


19条2項:不動産に関する訴訟については,被告が地方裁判所への移送を申立てた場合は,自動的に簡易裁判所から地方裁判所へ移送されます。
なお,退去及び明渡しの請求は不動産に関する訴訟に該当しますが,滞納賃料の請求,敷金返還の請求及び原状回復費用の請求は不動産に関する訴訟には該当しません。


270条:簡易裁判所は地方裁判所と比較して,簡易な手続によるとの原則を示した規定です。


271条:実務としては,書面(訴状)の提出によって,訴えを提起するのが原則です。

272条:紛争の要点を明らかにすれば必要最小限の要件を満たすことになります。しかし,できるだけ原告に有利な判決をもらうためには,請求の原因を記載した方がよいでしょう。

273条:実務上は,この規定が適用されることはほとんどありません。いきなり簡易裁判所に出頭されても裁判所が執務上対応できないからです。

274条:被告の反訴が地方裁判所の管轄に属する場合において,原告の同意があれば,本訴(原告が簡易裁判所に提起した訴え)も反訴と同一の地方裁判所に移送されます。

275条:簡易裁判所では,訴訟だけでなく,和解(裁判所における話し合い)についても取り扱っています。債務名義を得るために,訴えの提起前の和解が利用されることがあるようです。例えば,建物の賃貸借契約において,賃料滞納による解除条項及び解除された場合における明渡しの合意条項を内容とする和解をすることで,解除された場合は判決を得ることなく,直ちに強制執行の申し立てをすることができるようになります。

275条の2:金銭の支払請求について,被告が原告の主張を争わない場合は,裁判所は裁量で,①5年以内の範囲で期限を猶予し,分割払いの定めをすること,②分割払いの場合は期限の利益喪失の定めをすること,③期限の猶予の定めにしたがって支払った場合,又は,分割払いの定めにしたがって支払った場合には,訴え提起後の遅延損害金を免除する旨の定めをすることを内容とする,和解に代わる決定をすることができます。
ただし,原告及び被告は,決定の告知を受けた日の翌日から2週間以内に,その決定した裁判所に対して異議を申し立てることで,和解に代わる決定の効力を喪失させることができます。その場合は,従前の裁判手続を続行することになります。
和解に代わる決定は異議の申し立てがない場合,裁判上の和解と同一の効力を有することになります。


276条:簡易裁判所では,口頭弁論についても,書面で準備する必要がないとされています。したがって,裁判期日において口頭で陳述すれば足りることになります。
しかし,相手方が裁判期日に欠席した場合は,口頭での陳述ができませんので,やはり書面を作成して裁判所及び相手方に送達しておくべきでしょう。


277条:簡易裁判所では,書面をあらかじめ裁判所に提出しておけば,続行の裁判期日を欠席した場合であっても,裁判所は書面の記載内容を陳述したとみなすことができます。
なお,原告及被告の両方が欠席した場合は,裁判期日を開くことができませんので,陳述したとみなされることはありません。


278条:簡易裁判所では,当事者本人についても書面による尋問が認められています。

279条:簡易裁判所の訴訟では,司法委員が和解を補助すること又は審理に立ち会うことが認められています。司法委員は,不動産鑑定士・公認会計士・医師・建築士などの専門家が就任していることがあります。

280条:簡易裁判所の判決書は,簡略化することが認められています。
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民事訴訟法
(平成八年六月二十六日法律第百九号)


第十八条  簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。
第十九条  第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者の申立て及び相手方の同意があるときは、訴訟の全部又は一部を申立てに係る地方裁判所又は簡易裁判所に移送しなければならない。ただし、移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき、又はその申立てが、簡易裁判所からその所在地を管轄する地方裁判所への移送の申立て以外のものであって、被告が本案について弁論をし、若しくは弁論準備手続において申述をした後にされたものであるときは、この限りでない。
 簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。ただし、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は、この限りでない。


第八章 簡易裁判所の訴訟手続に関する特則
第二百七十条  簡易裁判所においては、簡易な手続により迅速に紛争を解決するものとする。
第二百七十一条  訴えは、口頭で提起することができる。
第二百七十二条  訴えの提起においては、請求の原因に代えて、紛争の要点を明らかにすれば足りる。
第二百七十三条  当事者双方は、任意に裁判所に出頭し、訴訟について口頭弁論をすることができる。この場合においては、訴えの提起は、口頭の陳述によってする。
第二百七十四条  被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。この場合においては、第二十二条の規定を準用する。
 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第二百七十五条  民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。
 前項の和解が調わない場合において、和解の期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは、裁判所は、直ちに訴訟の弁論を命ずる。この場合においては、和解の申立てをした者は、その申立てをした時に、訴えを提起したものとみなし、和解の費用は、訴訟費用の一部とする。
 申立人又は相手方が第一項の和解の期日に出頭しないときは、裁判所は、和解が調わないものとみなすことができる。
 第一項の和解については、第二百六十四条及び第二百六十五条の規定は、適用しない。
第二百七十五条の二  金銭の支払の請求を目的とする訴えについては、裁判所は、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合において、被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときは、原告の意見を聴いて、第三項の期間の経過時から五年を超えない範囲内において、当該請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをして、当該請求に係る金銭の支払を命ずる決定をすることができる。
 前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
 第一項の決定に対しては、当事者は、その決定の告知を受けた日から二週間の不変期間内に、その決定をした裁判所に異議を申し立てることができる。
 前項の期間内に異議の申立てがあったときは、第一項の決定は、その効力を失う。
 第三項の期間内に異議の申立てがないときは、第一項の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
第二百七十六条  口頭弁論は、書面で準備することを要しない。
 相手方が準備をしなければ陳述をすることができないと認めるべき事項は、前項の規定にかかわらず、書面で準備し、又は口頭弁論前直接に相手方に通知しなければならない。
 前項に規定する事項は、相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載し、又は同項の規定による通知をしたものでなければ、主張することができない。
第二百七十七条  第百五十八条の規定は、原告又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合について準用する。
第二百七十八条  裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができる。
第二百七十九条  裁判所は、必要があると認めるときは、和解を試みるについて司法委員に補助をさせ、又は司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができる。
 司法委員の員数は、各事件について一人以上とする。
 司法委員は、毎年あらかじめ地方裁判所の選任した者の中から、事件ごとに裁判所が指定する。
 前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
 司法委員には、最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。
第二百八十条  判決書に事実及び理由を記載するには、請求の趣旨及び原因の要旨、その原因の有無並びに請求を排斥する理由である抗弁の要旨を表示すれば足りる。

民事訴訟規則(平成八年十二月十七日最高裁判所規則第五号)

第七章 簡易裁判所の訴訟手続に関する特則
(反訴の提起に基づく移送による記録の送付・法第二百七十四条)
第百六十八条 第九移送による記録の送付)の規定は、第二百七十四反訴提起に基づく移送)第一規定による移送の裁判が確定した場合について準用する
(訴え提起前の和解の調書・法第二百七十五条)
第百六十九条 訴え提起前の和解が調ったときは、裁判所書記官は、これを調書に記載しなければならない
(証人等の陳述の調書記載の省略等)
第百七十条 簡易裁判所における口頭弁論調書については、裁判官許可を得て、証人等の陳述又は検証の結果の記載を省略することができる。この場合において、当事者は、裁判官許可をする際に、意見を述べることができる。
2 前項の規定により調書の記載を省略する場合において、裁判官命令又は当事者申出があるときは、裁判所書記官は、当事者裁判上の利用供するため、録音テープ等に証人等の陳述又は検証の結果を記録しなければならない。この場合において、当事者申出があるときは、裁判所書記官は、当該録音テープ等の複製を許さなければならない。
(書面尋問・法第二百七十八条)
第百七十一条 第百二十四書面尋問)の規定は、第二百七十八尋問に代わる書面の提出)の規定により証人若しくは当事者尋問又は鑑定人意見陳述に代えて書面の提出をさせる場合について準用する
(司法委員の発問)
第百七十二条 裁判官は、必要があると認めるときは司法委員証人等に対し直接に問いを発することを許すことができる。