2016年3月15日火曜日

売買契約の手付け解除と不動産業者の媒介報酬



不動産売買契約を手付け解除する場合において,


売買契約の手付け解除条項に,


①買主は,手付け金を放棄して解除することができる。


②売主は,手付け金の倍額を支払って解除することができる。


などの記載がされている場合があります。


しかし,この手付け解除条項は,売主と買主との間の規定です。


別途,不動産業者に対する手付け解除の媒介報酬への影響を考えなければなりません。


国土交通省の媒介契約約款においては,売買契約の手付け解除があった場合の不動産業者の媒介報酬(仲介報酬)についての規定がありません。


媒介契約に手付け解除の場合の規定がなくても,


不動産業者は,当該売買が,


①他人間の商行為の場合は商法550条により,


②商行為ではない非商人間の場合は商法512条により,


媒介契約の相手方である売主及び買主に対して媒介報酬を請求することができます。


売買契約の成立後であれば,決済前であっても,不動産業者は売主と買主の媒介を成立させておあり,報酬請求権が発生しているからです。


つまり,売主と買主は,手付け金の放棄又は倍額の支払いにとどまらず,(媒介契約の内容にもよりますが),媒介報酬を支払わなければならないことにも注意をしなければなりません。

行政庁(国土交通省)は,不動産業者に対して売買契約時に報酬の50%,決済時に報酬の50%を受領するように指導していますので,


この指導に従うとすると,手付け解除の場合は,不動産業者の報酬は50%ということになります。


しかし,あくまで行政庁の指導にすぎませんので,裁判所に持ち込まれた場合は,不動産業者の媒介業務の内容をふまえた上で,裁判官が相当な報酬を決定することになります。


なお,住宅ローン特約を定めた場合,住宅ローンの融資が受けられないときは不動産業者に対する報酬は発生しないと定めるのが原則です。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


国土交通省の専任媒介契約約款


(報酬の請求)
第7条 乙の媒介によって目的物件の売買又は交換の契約が成立したときは、乙は、 甲に対して、報酬を請求することができます。ただし、売買又は交換の契約が停止 条件付契約として成立したときは、乙は、その条件が成就した場合にのみ報酬を請 求することができます。


2 前項の報酬の額は、国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、甲乙協議の上、 定めます。


(報酬の受領の時期)
第8条 乙は、宅地建物取引業法第 37条に定める書面を作成し、これを成立した契約 の当事者に交付した後でなければ、前条第 項の報酬(以下「約定報酬」といいます )を受領することができません。


2 目的物件の売買又は交換の契約が、代金又は交換差金についての融資の不成立を 解除条件として締結された後、融資の不成立が確定した場合、又は融資が不成立の ときは甲が契約を解除できるものとして締結された後、融資の不成立が確定し、こ れを理由として甲が契約を解除した場合は、乙は、甲に、受領した約定報酬の全額 を遅滞なく返還しなければなりません。ただし、これに対しては、利息は付さない こととします。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
当事務所のHP 
http://ishihara-shihou-gyosei.com/