2014年10月12日日曜日

札幌 借金の消滅時効の援用(内容証明)の失敗

◇昔の借金について,借主がまちがった対応をすると,消滅時効が中断して,消滅時効の主張ができなくなってしまうので注意が必要です。消滅時効の援用は専門家に依頼した方が安全です。

依頼者が遠方の場合は,

債権者からの借金の督促状や裁判所からの裁判書類(訴状・支払督促)を

当事務所に郵送いただき,

電話で司法書士に相談するという方法により,

当事務所が消滅時効の援用の内容証明郵便や裁判所の答弁書を作成するという方法も可能です。

◇当事務所では,弁護士事務所(法律事務所),債権回収会社,消費者金融(サラ金),クレジットカード会社からの督促に対する借金の消滅時効の内容証明郵便の作成を承っています

債権譲渡により,譲渡人・譲受人の権利関係が複雑な場合,現在の債権者(貸主)がよく分からない場合は,ご相談ください。



◇簡易裁判所から書類(支払督促,訴状,口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状,特別送達)が届いたら ,ご相談ください。

◇札幌,岩見沢,滝川,室蘭,苫小牧,浦河,小樽,岩内,夕張,伊達,静内の各簡易裁判所,それ以外の東京簡易裁判所などの全国の簡易裁判所にも対応しております。

*簡易裁判所で140万円以内の金額の場合は,司法書士が訴訟代理人となることができます。
*司法書士を訴訟代理人として選任すると,依頼者は簡易裁判所に出頭する必要がありません。

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当事務所 札幌市中央区
(司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所)のHP
 
http://ishihara-shihou-gyosei.com/


電話番号:011-532-5970
簡裁訴訟代理関係業務認定番号 第314102号
簡裁訴訟代理関係業務認定試験の合格は平成16年です。
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◇行政書士が,借金の法律相談に応じることは,弁護士法により禁止されています。
◇司法書士は,司法書士法により,140万円以内の金額(簡易裁判所の管轄)の法律相談に応じることができます。

◇当事務所は,司法書士と行政書士の両方の国家資格を有しています。

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◇過払事件の対応が一段落したので,消費者金融はおろそかになっていた債権回収(借金の取り立て)を強化しているようです。
支払請求書・訴訟提起の通知書を送付したり,自宅まで取り立てに行ったり,裁判所へ訴訟の提起・支払督促の申立てをしたり,債権回収会社へ債権回収の委託・債権譲渡をしたりして,借金の取り立てを強化しているようです。
◇借金について,消滅時効の期間を経過していても,借主が消滅時効を主張(援用)しなければ,借金は消滅しません。よって,借主から消滅時効の主張をされない限り,消費者金融や債権回収会社は,借金を取り立てることができます。
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消滅時効の援用(内容証明郵便)の失敗事例を以下に記載します。


(1)消滅時効の期間が経過したに,時効を援用すれば,債務者(お金の借主)は,債務を免れること(貸主からの返済請求を拒絶すること)ができます。
しかし,注意しなければならないことは,消滅時効の期間が経過するに,時効を援用した場合のことです。
消滅時効の期間が経過するに,時効援用の通知を債権者(お金の貸主)に送付したときは,
「承認(=債務の承認)」となり,消滅時効が中断してしまうこと(消滅時効の進行期間がゼロに戻ること)です。


(2)時効援用の通知書には,①と②を記載します。
①債権者の氏名,債務者の氏名,債務者が債権者からお金を借りたこと,借りた日付,借りた金額などを記載します。
(この記載により,いつ,だれのだれに対する,どういう内容の借金かが特定されることになります。そして,この記載により,債務者は債権者からお金を借りたことを認めたことになります。)
②債務者が債権者に対して,本件債務について消滅時効を援用するとの記載をします。
(この記載により,債務が時効消滅し,債務者は債権者からの返済請求を拒絶することができるようになります。)


3)このように,消滅時効を援用するには,債務者が債権者からお金を借りたことを認めたことが前提となります。
したがって,②の時効援用の記載部分が,真実は,消滅時効の期間が経過しておらず,債務者の勘違いであったとして,時効援用が無効になったとしても,
①のお金を借りたことを認めた記載部分は有効ですから,債務者は,時効中断事由にあたる「承認」をしたことになります。


(4)下記の著名な学者の基本書によりますと,「承認」とは
「その権利の存在を認識して,その認識を表示したと認めることのできる行為はすべて承認となる。権利の内容や時効の進行状態などについての認識は,もとより必要ではない。」
「中断事由を知って承認したかどうかは問わない。」
とのことですので,消滅時効の期間の計算を勘違いして時効援用の効力が無効の通知書を送った場合に,
債務者が,たとえ時効の進行状態について勘違いをしていたとしても,たとえ時効援用の通知が「承認」にあたることを知らなかったとしても,「承認」に該当することになります。
債務者は,時効の進行状態の勘違いの主張はできませんし,承認に該当することを知らなかったとの主張をすることもできないのです。
そもそも,借りたお金は返すのが原則ですから,時効の援用を失敗した債務者を法律上保護する必要性はないのです。


(5)かりに,消滅時効期間が5年の場合で,4年11ヶ月経過したときに時効援用の通知を出すと,それは時効援用としては無効となり,「承認」にあたるので,時効進行期間はゼロに戻ってしまい,再び5年経過するまで待つ必要があるということです。*消滅時効の期間は,権利の性質に応じて,1年,2年,3年,5年,10年,20年,なし,となっています。


(6)さらに,注意が必要なのは,債権者からの督促状により,時効期間が6ヵ月延長される場合があることです。
したがって,消滅時効の期間が5年の場合は,最大5年6ヵ月が経過するまで消滅時効が完成しないことがあります(消滅時効が10年の場合は,最大10年6ヵ月)。
また,債権者が訴訟や支払督促などの裁判手続きを取っていたり,裁判上の和解をしていたりする場合は,通常は消費者金融の消滅時効の期間は5年ですが,裁判所が関与していた場合は消滅時効の期間が10年になります。
なお,債務者が住民票上の住所に住んでいない場合などにおいては,債務者の知らないうちに,債権者が公示送達により裁判手続きをして判決を取っている場合があります。
かりに,債権者が裁判手続きを取っていた場合は,裁判確定日から9年11ヵ月経過した時点で,時効援用の通知を出しても無効となり,承認したことになるので,時効進行期間がゼロになるのです。
また,債権譲渡によって,現在の債権者が株式会社となっていても,最初の貸主(最初の債権者)が個人の場合で,かつ,借主が商人ではない(会社員,アルバイト,無職など)場合,消滅時効の期間は10年となるので注意が必要です。
このように,一見単純に見えるような時効援用ですが,時効期間の計算を勘違いした場合は,致命傷になってしまいます。


(7)我妻榮の民法講義Ⅰ,四宮和夫の民法総則,川井健の民法概論1などの基本書には,消滅時効時効の期間が経過するに,消滅時効の援用があった場合についての記述がありません。
時効中断事由の「承認」の定義ですが,
我妻榮の民法講義(470頁)によりますと,「承認とは,時効の利益を受ける当事者が,時効によって権利を失う者に対して,その権利の存在することを知っている旨を表示することである。
かような表示があるときは,権利者が直ちに権利を行使しなくても,あえて権利の行使を怠るものといいえないだけでなく,権利関係の存在も明らかとなるから,これを中断事由としたのである。承認の法律上の性質は,いわゆる観念の通知である。従って,中断しようとする効果意思は必要でない。承認には特別の方式は必要でない。
その権利の存在を認識して,その認識を表示したと認めることのできる行為はすべて承認となる。権利の内容や時効の進行状態などについての認識は,もとより必要ではない。」
川井健の民法概論1第3版(341頁)によりますと,「承認とは,時効の利益を受けるべきものが権利者に対して権利の存在を認識していることを表示することを承認することをいう。承認とは,法律行為ではなく,観念の通知という準法律行為である。すなわち,中断効は効果意思に基づくものではなく権利の確認の効果から生ずる。
そこで中断事由を知って承認したかどうかは問わない。」


(8)「承認」は,準法律行為たる観念の通知だと解されており,法律行為ないし意思表示の規定が性質上許される限り準用されます。
したがって,消滅時効期間の経過前の時効援用の通知について,承認に対する錯誤無効の適用可能性が考えられます(時効援用は消滅時効の期間の経過が前提となっていますので,動機が表示されているといえます。)。
しかし,時効援用の通知は自己に有利な時効に関する行為ですので,時効期間が経過していない場合は錯誤無効により,自己に不利な時効に関する行為(承認)には該当しないというのは,自己矛盾行為として許されないはずです。
よって,錯誤無効の適用は難しいと考えます。


(9)なお,「承認」は,準法律行為たる観念の通知だと解されていますので,これに条件や期限をつけることができません。
よって,「承認に該当するのであれば,時効援用は撤回する。」との条件をつけることはできません。