2016年5月17日火曜日

遺贈の登記申請者




登記研究平成28年4月号(818号)の実務の視点の136頁によりますと,


「したがって,遺言執行者が指定されている場合は,同人を登記義務者として,受遺者との共同申請によるべきであり,遺言執行者の指定のある遺言書を登記原因証明情報の一部として提供する遺贈による所有権の移転の登記の登記義務者を,相続人とすることはできない。」


よって,当該遺言執行者が何らかの理由で登記申請人(登記義務者)になることができず,別人が登記申請人になる場合は,その理由を証する書面を添付する必要があるでしょう。




なお,実務の視点の121頁22行目から122頁1行目までの下記部分ですが,引用判例を間違っているようです。


「一方,特定遺贈とは,特定の具体的な財産を目的としてする遺贈であり,遺贈の目的物の種類により,特定物の遺贈,不特定物の遺贈及び限定種類物の遺贈に分かれ,その目的物が金銭その他の不特定物の場合には,受遺者は,遺贈された権利の移転を遺贈義務者に請求することができる権利を取得するに過ぎない(債権的効力)と解され,特定物又は特定債権を目的とする場合には,遺言の効力発生と同時に遺贈された権利が,当然に受遺者に移転する(物権的効力)と解されている(昭和30年5月10日最高裁判所第三小法廷判決・民集第9巻6号657頁)」




引用の昭和30年5月10日最高裁判所第三小法廷判決・民集第9巻6号657頁は,最高裁判所のHPによりますと,下記のとおり,特定遺贈の物権的効力について,特に言及をしているわけではありません。

判示事項
一 民法第八九五条と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
二 民法第一〇一二条と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
三 民法第九七六条による遺言と医師の立会等の要否


裁判要旨
一 民法第八九五条の規定は、受遺者が、相続人廃除の手続進行中、相続人から遺贈の目的物を譲り受けた第三者に対し、右目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
二 民法第一〇一二条の規定は、受遺者が自ら遺贈の目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
三 禁治産者でない通常人が民法第九七六条による遺言をなす場合には、医師二人以上の立会その他同法第九七三条所定の方式を必要とするものではない。



最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57468




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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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