2010年6月15日火曜日

賃料収入の独占と所得税・住民税

相続人二人(相続人A,相続人B)のうち,

相続人Aが相続財産である賃料収入を独占した場合,

賃料収入の2分の1は,相続人Bの相続分なので,

相続人Aは相続人Bに対し,不当利得として返還することになります。


ところで,相続人Aが,相続人Bの賃料収入分も自己の所得として,

所得税と住民税を納付をしていた場合,

相続人Aは,相続人Bに対して,相続人Bの賃料収入分の所得税と住民税を返還請求できるか?

最高裁判所は,返還請求を否定しました。

①所得税(住民税)は個人の所得に対して課せられる税であり,相続人Aが他人の収入も含めて計算したため税額を過大に申告したとしても,それにより他人である相続人Bに納税義務が生じるものではないこと,

②相続人Aが所得税(住民税)を過大に納付しても,相続人Bの納税義務は消滅しないこと,

が理由です。


*なお,相続人Aが支払った,

賃貸不動産の固定資産税および修繕費における相続人Bの負担分については

相続人Bに対し,返還を請求できます。




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事件番号 平成21(受)96 事件名 不当利得返還請求事件
裁判年月日 平成22年01月19日
法廷名 最高裁判所第三小法廷 裁判種別 判決

裁判要旨
共有者の1人が共有不動産から生ずる賃料を全額自己の収入として不動産所得の金額を計算し,納付すべき所得税の額を過大に申告してこれを納付したとしても,他人のために事務を管理したということはできず,事務管理は成立しない


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=38341&hanreiKbn=01

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