2015年4月9日木曜日

民法714条1項の監督義務者の責任を否定した判例

(1)常識的な結論に落ち着いたようです。


1審判決も原審判決も,予見可能性に関して常識的にも法律的にも反する判断であったように思います。


民法714条は,責任能力のない未成年者のすべての行為の結果について,親権者の監督責任を肯定するものではありません。


責任能力のない未成年者が蹴ったサッカーボールにより,原告が転倒し死亡したとの因果関係が認められても,親権者に未成年者の本件行為に関して注意義務違反(過失)がなければ,不法行為責任は否定されます。

(2)「当時,11歳11ヵ月の男子児童には,責任能力がないこと。」


「責任能力のない未成年者の親権者は,直接的な監視下にない子の行動について,人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があること。」


「直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,特段の事情がない限り,監督義務を尽くしていなかったとはいえないこと。」


をそれぞれ,判断した上で,結論として,


「親権者は子に対して日頃から通常のしつけをしていたし,子の本件行為について親権者には具体的に予見可能であったなどの特段の事情もなかったから,親権者は民法714条1項の監督義務を怠っていなかった。」として,


原告の損害賠償請求を棄却しました(民法709条の損害賠償請求も棄却しました)。


(3)未成年者が運転する自転車が,人身事故を起こした場合にあてはめてみますと,


「通常は人身に危険が及ぶものとみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合」とはいえません(自転車の交通事故は,通常として死亡・重傷などの人身に危険が及ぶ行為ですし,自転車の交通事故の増加は,10年ぐらい前から報道されていますので,たまたまともいえまん。)


よって,本件最高裁判決とは異なり,自転車事故を起こした責任能力のない未成年者の親権者の監督責任は原則として免責されないでしょう。


神戸地方裁判所平成26年7月4日判決は,自転車交通事故の加害者である未成年者(当時11歳)の親権者に約9500万円の損害賠償を命じた事案ですが,
やはり,本件最高裁判決の解釈によると,親権者は免責されないでしょう。


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平成24(受)1948 損害賠償請求事件


平成27年4月9日最高裁判所第一小法廷判決


破棄自判


裁判要旨


責任を弁識する能力のない未成年者が他人に損害を加えた場合において,その親権者が民法714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかったとされた事例


最高裁HP
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85032




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