2015年4月16日木曜日

札幌 孫養子による相続税の節税対策



当事務所(司法書士・行政書士・社会保険労務士)では,孫養子の手続きの相談に応じています。
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相続税の節税対策として,孫を養子にする方法があります。


*孫養子は何人でも可能ですが,実子がいる場合は,養子が何人いても,1名分しか節税になりません。




<孫養子のデメリット>


(1)相続人の数が増えることにより,相続時の遺産分割協議がもめる可能性が高くなります。


単に相続税を節税するためと考えているかもしれませんが,


民法上は,孫養子も実子同様の相続人として扱われますので,


たとえば,①被相続人に長男と次男がおり,長男の子(孫)を養子にした場合を考えます。
相続人は3名となり,法定相続分は,長男家が3分の2,次男家が3分の1の割合による相続になりますので,遺産分割協議が成立せず,裁判所で決着をつけることになるかもしれません。


たとえば,②長男夫婦の未成年子を孫養子にした後,孫養子が未成年時に祖父(養父)が死亡した場合を考えます。
孫の親権は,養子縁組により父母から養父母に移転するため,養父が死亡しても,養母の単独親権となります。孫養子が未成年時に,養父が死亡した場合は,養母(妻)と実子と養子が相続人となりますので,養母と養子は遺産分割協議について利益相反となります。遺産分割協議をするには,家庭裁判所で養子のために特別代理人を選任する必要があります。家庭裁判所の特別代理人は,原則として,養子について法定相続分の取得を確保できないような遺産分割協議には応じません。したがって,家庭裁判所の特別代理人を選任されないようにするには,遺言書を作成しておく必要があります。


(2)長男の嫁に無断で,孫養子としたため,嫁と舅姑の関係が悪化することがあります。


感情的な問題だけでなく,とくに,孫養子が未成年子の場合は親権が養父母に移転するため,祖父母が親権者として学校の手続きなど各種の公的私的手続きをすることになり,実際上は監護している嫁(母)が,いちいち養父母(舅姑)と連絡を取り合わなければならないことになります。その結果,長男夫婦と養父母の関係が悪化することがありますし,長男夫婦の離婚につながることもあります。


(3)養子縁組みの解消(離縁)で争いになる可能性があります。


養子縁組の離縁が,円満に合意できないような場合は,いわゆる手切れ金として養子側から金銭給付を求められることがあります。離婚と異なり,養子縁組の解消には財産分与という概念がありませんが,養子縁組を解消しないと,将来の相続において,養子も相続人となりますし,遺言書を作成したとしても,養子には遺留分が認められています。


養子縁組の離縁は,養親と養子との話し合いが成立しない場合は,家庭裁判所に訴訟を提起し,裁判所が認めてくれなければ離縁することはできません(離婚の訴訟と同様です。)。
たとえば,長男夫婦の未成年子を孫養子にした後,長男夫婦が離婚した場合で,嫁が孫養子を引き取るときには,養子縁組の離縁が行われることもあるようです。婿養子の場合は,婿が娘と離婚すれば,血縁がなく他人となりますので,離婚ともにする離縁は認められやすいですが,孫養子の場合は,養父母とはそもそも祖父母と孫という血縁関係がありますし,養父母と孫の離縁と父母の離婚は,当事者が異なりますので,一般論としては離縁は認められにくいことになります。




<孫養子のメリット>


(1)相続人1名ごとに,相続税の課税計算に際して,


基礎控除額600万円
生命保険非課税枠500万円
死亡退職金非課税枠500万円


の課税相続財産からの控除が認められており,課税相続財産を少なくすることができますので相続税の節税対策になります。


(2)また,課税相続財産が少なくなることにより,相続税は累進課税ですので,適用される相続税率が下がることがあります。


(3)父(母)をとばして,祖父(祖母)から孫に相続を原因として財産を承継できますので,父(母)の死亡時の相続財産を少なくすることができますので,父(母)の死亡時の相続税の節税対策にもなります。


*孫養子でない場合は,遺言書で孫に不動産を与えると記載していても,遺贈ということになり,
相続に比べて,不利益な登録免許税及び不動産取得税が課税されます(特定遺贈の場合で,受遺者が相続人でない場合は不動産取得税が課税されます)。