2015年4月21日火曜日

和解の無効に関する裁判例



 下記の裁判例によると,なかなか和解契約(裁判上の和解)の錯誤無効は認められないようです。


ただし,和解契約書の内容如何によっては,錯誤無効の主張をされる可能性がありますので,


和解契約の際には,和解契約書の記載内容には留意しましょう。


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平成22(ネ)397不当利得返還請求事件
 平成22年6月17日大阪高等裁判所  第5民事部


貸金業者と消費貸借取引をした債務者が,弁護士を代理人として,この貸金業者との間で,残債務の存在を確認して分割弁済を約し,清算条項を付して裁判外の和解契約をし,その際この弁護士が過払金が発生している可能性を認識していた事案において,この和解契約が強行法規違反若しくは公序良俗違反又は錯誤により無効であるとする債務者の主張を排斥した事例


 貸金業者と消費貸借取引をした債務者が,平成12年に,弁護士を代理人として,上記貸金業者との間で,残債務の存在を確認して分割弁済を約し,清算条項を付して裁判外の和解契約をし,その際この弁護士が過払金が発生している可能性を認識していたなどの事実関係の下においては,上記和解契約自体が強行法規たる利息制限法違反ないし公序良俗違反により無効となることはなく,?残債務や過払金の有無に関する錯誤は,民法696条にいう和解によってやめることを約した争いの目的たる権利についての錯誤にすぎず,その後最高裁平成18年1月13日第二小法廷判決(民集60巻1号1頁)によって,従前行われていた貸金業者の貸付取引の多くに貸金業法43条1項の適用が認められないことが事実上明らかになったとしても,和解の基礎ないし前提事実に関する錯誤となるものではなく,民法95条の適用はないから,真実は過払金が発生しているのに残債務が存在すると誤信したという錯誤によって,上記和解契約が無効となることはない。


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平成18(ネ)4976和解無効確認請求事件
 平成18年12月13日 東京高等裁判所  第17民事部


権利の帰属を定める内容の遺言書の真否及び権利の帰属に関する争いをやめるためにした和解について遺言書の真正に関する錯誤を理由に上記和解の無効を主張することができないとした事例


当事者間に権利の帰属を定める内容の遺言書の真否及び当該権利の帰属について争いがあり,当事者が,互いに譲歩して争いをやめるために権利の帰属について定め,証書真否確認請求訴訟を取り下げること等を内容とする和解をしたとの判示の事実関係の下では,遺言書の真否が当該権利の帰属の前提となる事実の存否の性質を有するものであっても,当事者の一方は,遺言書の真正に関する錯誤を理由に上記和解の無効を主張することはできない。