2010年11月1日月曜日

遺留分減殺請求8

遺留分減殺請求は,


複数の相続人に対する遺贈の場合,


遺贈された財産の価額のうち,受遺者(もらった人)の遺留分額を超過した部分のみが,


対象になります。


つまり,受遺者(もらった人)の遺留分額を超過した部分というのは,


受遺者も相続人として遺留分を有するので,



他の相続人の遺留分減殺殺請求により,


自己の遺留分が侵害されたら,


受遺者も遺留分を侵害されたとして,遺留分減殺請求権を行使することになり,


循環に陥るからです。


(例)遺産が400万円,相続人は子ABCD,


遺言で,Aは250万円,Bは100万円,Cは50万円取得し,Dは0円の場合。


Dの遺留分額は,4分の1×2分の1=8分の1=50万円


(ABCDの各遺留分額は,50万円)


Dが,ABC全員に案分して50万円の遺留分減殺請求すると,


A:B:C=5:2:1なので,


Aに31万2500円,Bに12万5000円,Cに6万2500円請求することになります。


しかし,そうなると,


Cは遺留分額と同額の50万円しか遺贈されていないので,


Dに6万2500円払うと,Cの遺留分は6万2500円侵害されることになります。


Cは,遺留分を侵害されたとして,遺留分減殺請求をすることになりますが,


CがDも含めて遺留分減殺請求すると,またDの遺留分が侵害されてしまいます。



そこで,最初のDの遺留分減殺請求の時点で,


Dは,遺留分額を超過して遺贈されていないCについては,


遺留分減殺請求を行使できないとすれば,問題が解決します。


そうすると,遺留分額を超過した部分が基準になるので,


Aは250万円-50万円(遺留分額)=200万円


Bは100万円-50万円(遺留分額)=50万円


A:B=4:1なので,

Dは,遺留分額50万円のうち,


Aに50万円×5分の4=40万円,


Bに50万円×5分の1=10万円


それぞれに請求できます。


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平成10年02月26日最高裁判所第一小法廷判決民集 第52巻1号274頁

判示事項
相続人に対する遺贈と民法一〇三四条にいう目的の価額



裁判要旨
相続人に対する遺贈が遺留分減殺の対象となる場合においては、右遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分額を超える部分のみが、民法一〇三四条にいう目的の価額に当たる。





最高裁HPhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=52814&hanreiKbn=01



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